• 世界行動計画と国内行動計画

    Global Action Plan and National Action Plan

  •  国連「家族農業の10年」では、具体的にどのようなことが目指されているのでしょうか。2019年5月29日にローマで開催された開幕式では、「世界行動計画」(Global Action Plan: GAP)が発表されました。このアクションプランは7つの柱からなります。世界行動計画は、国連「家族農業の10年」の国際運営委員会(在ローマ)が2018~19年に実施した世界各国・地域の農業団体等に対する大規模なアンケート調査、ヒアリング調査、および第6回世界家族農業会議(2019年3月、スペイン開催)における議論をへて、当事者参加型・ボトムアップ型の方法で策定されたという意味においても、新しい政策の方向性を示しています。今後、国連加盟国は国連「家族農業の10年」に関わる取り組みを毎年国連に報告します。また、国際情勢に応じて、世界行動計画は2年毎に見直しが行われる予定です。

    世界行動計画の7つの柱

    1. 政策:家族農業の強化を実現できる政策環境を構築する
    2. 若者:若者を支援し、家族農業の世代間の持続可能性を確保する(横断的柱)
    3. 女性:家族農業における男女平等と農村の女性のリーダーシップを促進する(横断的柱)
    4. 農林漁業組織:家族農業組織とその知識を生み出す能力、加盟農民の代表性、農村と都市で包括的なサービスを提供する能力を強化する
    5. レジリエンス(回復力):家族農家、農村世帯および農村コミュニティの社会経済的統合、レジリエンスおよび福祉を改善する
    6. 気候変動:気候変動に強い食料システムのために家族農業の持続可能性を促進する
    7. 多面的機能/多就業:地域の発展と生物多様性、環境、文化を保護する食料システムに貢献する社会的イノベーションを促進するために、家族農家の多面性を強化する
     世界行動計画は、加盟各国が国内行動計画(National Action Plan: NAP)を策定することを求めています。それは、世界の農業のあり方や社会状況が多様であり、それぞれの直面している課題に応じたアクションプランや目標、ステークホルダー(利害関係者)の行動指針を定めるべきだという考えに基づいています。アジアでは、すでにインドネシアで国内行動計画が策定され、フィリピンでも策定にむけた動きが加速しています。日本においても、行政と当事者組織が対話をしながら、ともに国内行動計画を策定していくことが求められています。また、全国レベルだけでなく、各地域レベルの行動計画を策定することは、地域の10年後の農林漁業の姿、地域コミュニティの姿、ひいては社会の姿を展望するためのツールになるでしょう。日本でどのような農林漁業と食の未来を描くのか、どのような未来の社会を展望するのか、それを問う国連の「家族農業の10年」にしましょう。