• 趣意書

    Prospectus

  •  21世紀に入って20年近くが経過しましたが、人類はいまだに持続可能な社会を構築することができていません。それどころか、私たちの目の前に広がる世界は、経済、社会、環境のいずれの点においても深刻な問題をはらんでいます。こうした現状から脱却するために、国際社会は2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成することを目指しています。
     

     持続可能な農と食のあり方を実現するために、国際連合(以下国連)総会は2017年1 月に、国連の「家族農業の10年」(2019〜2028年)を設置することを全会一致で決定しました。このとき、日本政府は議案の共同提案国になっています。これにより、国連加盟国は、家族農業を中心とした農業関連政策の策定・強化・実施を通じて、家族農業がSDGsに貢献できる環境を整える義務を負うことになりました。
     

     国連は、SDGsに掲げられた目標「飢餓をゼロに」を達成し、食料安全保障および栄養改善、気候変動に強い持続可能な農業を実現するためには、国連の「家族農業の10年」を通した行動が欠かせないとしています。多くの食料を海外からの輸入に頼り、食料・農業・農村政策に課題を抱える日本においても、既存の政策の再検討と再構築が求められます。


     家族農業は、決して農業だけの問題ではありません。国連では、家族農業を「家族が経営する農業、林業、漁業・養殖、牧畜であり、男女の家族労働力を主として用いて実施されるもの」と定義しています。家族農業は、世界の農場数の90%以上を占め、世界の食料の80%以上を供給しており、食料保障および食料主権の実現において中心的役割を果たしています。また、世界の家族漁業は漁業経営全体の 90%を占めており、私たちが消費する魚介類の 60%以上を供給しています。林業においても、小規模な自伐型林業の価値が見直されています。
     

     家族労働力を主体とする農業経営では、経営目標が家計の維持、農業経営とコミュニティの存続に置かれることが多く、その点で短期的利潤を第一義的に追及する企業型農業とは異なります。また、現代では家族関係のあり方も大きく変化しており、新しい時代に合わせて柔軟に変化するのが家族農業です。
     

     さらに、国連総会は2018年12月に「農民(小農)と農村で働く人びとに関する権利 国連宣言」(通称:農民(小農)の権利宣言)を賛成多数で可決しました。農民と農村で働く人びとの食料主権、種子への権利、土地への権利、団結権等を保障するこの宣言は、農民自身が謳いあげた権利宣言として世界中で歓迎されています。同宣言における農民(小農)の定義は、「家族および世帯内の労働力、ならびに貨幣を介さないその他の労働力に大幅に依拠し、土地に対して特別な依存状態や結びつきを持った人を指す」としており、家族農業とも重なる概念として理解することができます。国連の「家族農業の10年」でも、同宣言に謳われている諸権利の実現が求められます。
     

     現在の日本の農林水産業は、大幅な輸入依存と自給率の低下、担い手の高齢化、耕作放棄地の拡大、鳥獣害、漁業資源の減少、山地における大規模な土砂崩れや深層崩壊等に直面し、持続可能な姿とはほど遠い状況です。こうした中で、国連の「家族農業の10年」は、国際社会がめざす新たな潮流に学び、日本でも家族農林漁業を中心とした関連諸政策への転換をめざす契機となると考えられます。
     

     家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンは、国連の呼びかけに呼応した日本の関係者が、2019年6月に設立しました。本プラットフォームは、国連の「家族農業の10年」の国際運営委員会と連携して、国内における家族農林漁業を中心とした食料・農業・農村関連政策の実現を通じて、健康長寿を伴った持続可能な社会の実現に寄与することを目的として、以下の活動を実施します。

    1. 国際連合の「家族農業の10年」に関する啓発活動(シンポジウム、講演会、学習会の開催、出版、広報活動等)
    2. 日本の食料・農業・農村関連政策に関する政策提言および政府との対話
    3. 日本における行動計画(ナショナル・アクションプラン)の策定
    4. 日本における行動計画の達成度のモニタリングと結果の国際連合への報告
    5. 国際連合および国際社会の動向に関する情報の共有
    6. 日本における本会の活動の世界への発信および国際組織との連携強化
    7. 地域プラットフォームづくりを含む会員拡大・組織強化
    8. その他、本会の目的達成に必要な事業

     本プラットフォームでは、私たちの活動の趣旨に賛同し、ともに活動する団体会員および個人会員を募集しております。ぜひ、私たちのプラットフォームにご参加ください。持続可能な社会にむけて、次世代に残す未来にむけて、今日から一緒に希望の種子(たね)をまきましょう!
     

    2019年6月

    家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン

    代表 村上真平(公社全国愛農会・会長)

    副代表 二平章(JCFU 全国沿岸漁民連絡協議会・事務局長)

    副代表 上垣喜寛(NPO 法人自伐型林業推進協会・事務局長)
     

    ※さらに知りたい方は、以下の参考文献をご覧ください。

    1. 小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン編『よくわかる国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」』農文協、2019 年。
    2. 国連世界食料保障委員会専門家ハイレベル・パネル『家族農業が世界の未来を拓く』農文協、2014年。
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