FFPJオンライン連続講座第41回「養鶏と鳥インフルエンザを考える—代替策としての平飼い養鶏—」が3月19日(木)19:30〜21:00に開催されました。講座では、FFPJ常務理事の池上甲一さん(近畿大学名誉教授)が養鶏産業の状況について解説、静岡県で小規模平飼い養鶏を実践する鷲野浩之さんが、自身の取り組みについて紹介しました。以下は、講座の概要です。
◆「鶏卵産業の構造と特質」
池上甲一さん(近畿大学名誉教授 FFPJ常務理事)
池上でございます。FFPJの常務理事を担当しております。今日は鷲野さんの前座ということで、鶏卵産業の構造と特質ということについて、簡単な概要を申し上げたいと思っています。今、村上真平さんがご紹介くださったように、卵というのは「物価の優等生」だったと言われているわけですけれども、それがなぜかということを考えるためには、実際に鶏を飼っている場面だけではなくて、全体のつながりを見てみないとその理由は分からないということを、今日、申し上げたいと思っています。
*食べ物の来し方は分かっている?
食べ物には、色んな食べ物それぞれにフードシステムがある。食べ物が生産されるところから小売のところまでつながっているわけですけれども、それぞれ違った特質、違った流れ方をするわけですね。共通しているのは、ここに書いてあるように、お米は若干違いますけれども、化学肥料とかを入れれば他と共通しますが、いずれも世界から色んなものを調達して来ている。資材しかり、それから今日の話だと、鶏の雛とかですね、鶏の餌とか、そういうものもすべてを世界から調達している。だから世界で何かが起こると、すぐその影響を受けるんだということを確認しておきたいと思います。
2020年のコロナ禍のときもそうでしたし、22年のロシアのウクライナ侵攻もそうでした。今回のアメリカとイスラエルのイラン攻撃で、その結果生じたホルムズ海峡の封鎖によって原油高が生じてきている。当然これは今後の食料にも生産資材にも影響を及ぼして来ると言えます。
*「物価の優等生」と言われてきた鶏卵
物価で言うと、もう一度、確認しておきたいと思いますが、村上さんが冒頭のあいさつで50年前と言われましたが、そうすると1954年ごろですね、このグラフではこのあたりですが、1950年代から70年代、高度経済成長が終わるころまでは、1キロあたりMサイズで、中ぐらいのサイズで、190円から230円ぐらいのあいだで推移していた。オイルショックがあって、いったんは上がりますけれども、そのあとまた下がったということになります。
もうちょっと時代が下ってきてですね、2010年代、2020年代の直近の値段を示しました。物価が跳ね上がった期間を除くと、だいたい150円から250円ぐらいです。確かに、50年前とあんまり変わらない水準でした。
*鶏卵価格の上昇
それが2022年から23年にかけて、いったん跳ね上がり、戻ったんだけどまた、跳ね上がって来ています。直近のところではこんな動きになっています。今申し上げましたように、2022年にロシアのウクライナ侵攻をきっかけとして、餌代が跳ね上がったということで、卵の値段が急上昇します。それから2025年もこのあたりから、だいたい高止まりしていたんですが、さらにですね、26年には300円代ということで、「物価の優等生」も終わりそうだというような感じになっています。
これは北海道新聞の記事から拝借した写真です。北海道新聞は農業関係の記事が多いので、読者登録をしています。結構、鳥インフル関係の記事が出て参ります。それに関連する卵とかですね、それから殺処分のために係員がケージに向かっていく様子とか、そういうところでございます。
*鳥インフルエンザの発生状況
今年、鳥インフルエンザ、ちょっと言い難いんで、鳥インフルと省略させていただきますけれども、鳥インフルは今年はですね、21件で件数としては割合少なかった。2022年には80件近くまでいきましたので、それに比べるとかなり少ないのですが、それでもですね、結構それが卵価に影響するということになってきた。鳥インフルの発生は、特にケージ飼育の採卵鶏に集中し、それから平飼いでも出ているんですが、その飼っている羽数は5万羽以上というような結構大きい肉用の平買い養鶏です。ですから、規模と鳥インフルの発生状況というのは、結構、連動していそうだということを想像させます。そういう状況がちょっと続いているので、鳥インフル・ワクチンを導入しようというような声が出てきています。これは日本養鶏協会の基本方針なんです。これまでは鳥インフルのワクチンが導入されていないので、ワクチン接種ができるようになるとただでさえ進んでいるワクチン依存に、さらに拍車がかかるということになりそうです。そうすると、人間のインフルワクチンにも影響しないかと懸念しています。
それから、鳥インフルの場合には大量に殺処分するわけですけれども、そういう殺処分によってですね、養鶏農家はもちろん、その殺処分に従事する職員が、肉体的な負担に加えて、生き物を殺す、無理やり殺すということで、精神的なストレスを非常に感じているということ、そういう問題も生じています。
それからもちろん、殺処分にお金がかかります。これは補正予算から毎年、出されるわけですけれど、飼育数によって違いますが、数億から数十億円、毎年、つぎ込んでいるんだということで、なかなか大きな額になっています。これ全部税金ですね。
それから、この鳥インフルに罹った養鶏農家の経営再建の問題もあります。現在は農場補償金、つまり税金から払われる補償金手当とそれから農業共済、あるいは収入保険などから補われているといます。当然、もとに戻るというわけにはいきませんが、再建するための補償はそれなりにあるといえるかと思います。
*産業的な食農システム
今のフードシステム、食料システムは産業主義的だと言っていいと思うんですけれども、この図は一般的な食農システムとして書いてみました。最近では特にですね、以前はこの巨大な購買力を持っている卸・小売部門がフードシステムを、言わば支配しているというふうにみられていましたが、最近ではこの上流のバイオメジャーの支配力が非常に強まっている、そういう特徴が見られるようになってきました。それにともなって、このバイオメジャーが資金力を使って信用部門や保険部門にも進出するという動きがございます。
*工場型畜産としての大規模養鶏
産業主義的食農システムを養鶏産業に当てはめてみたのがこの図でございまして、詳しく説明すると、これだけでもう15分使っちゃいますので、あまり申し上げませんけれど、種鶏場から孵卵場、育雛業者、雛を育てるところから、肉鶏の養鶏用の鶏と、それから卵を採るための鶏というふうに分けられていくということになっています。この餌を供給する業者による統合が進んでいる、このことをインテグレーションと言います。
それからこの鶏のもとになる、種鶏場の鶏は、種鶏にする前の原原種鶏とか原種鶏を輸入している。それから輸入飼料に依存しているんです。もちろん雛そのものを輸入するということも今では当たり前になってきております。そういう、だいたいの流れを頭に置いてください。この図を見ると、普段接していない流れ、関係者以外はあんまり分からない、そういうつながりが見えてくるかと思います。
*超大規模化に向かう日本の養鶏
日本の養鶏はもう超大規模化に向かっているということが常識化していると言っていいと思いますけれども、養鶏農家数は激減する一方で、飼っている鶏の数、全体は維持されている。つまり一戸あたりの飼っている羽数がどんどんどんどん大きくなってきたということで、今では10万羽以上というのも珍しくありません。ただ統計上ですね、小規模養鶏、今は千羽でしたかね、それ以下は対象外になっていて、ということで全体像が分からないという問題があります。肉でも50万羽以上が増加してきていて、雛の飼育農家も減っですね、統計対象から消えてしまいました。
もう一つ、雛については、雛を孵した後にオス、メスを鑑定する、鑑別するということをしないといけないわけです。オスを大きくしても卵は産みません。昔は小さい雛の雄雌を判断する技能が日本は非常に高いというふうに言われていましたけれども、その鑑定士の技術が継承できなくなってきている。それだけにますます輸入の雛に依存するという傾向が強まっていると言っていいと思います。
*採卵鶏の飼養戸数と使用羽数
数字を幾つか挙げております。あとでまた、ご覧いただければといいと思います。ここに書いていますよね、1千羽未満は採卵鶏の場合、統計の対象外になっています。鷲野さんはどれくらいか存じ上げませんけれども、たぶんこの対象外の養鶏農家ではないでしょうか。
*食用鶏の飼育羽数と飼育戸数
それからこちらは食用鶏の方です。今日は直接の話題ではないんだけれども、採卵鶏と同じような傾向が見られるということですね。ここでさっき言いましたように、雛農家、どんどんどんどん減ってきて、もう統計から消えちゃったということになっています。もう一度、鶏肉と鶏卵にかぎって(畜産物が食卓に届くまでを)再掲いたしました。ここで申し上げたいのは、GPセンターというあまり聞きなれないものが採卵鶏の場合には入ってくるんだよ、ということです。
*GPセンターの機能
GPセンターとうのはどんなことをやるのかと言うと、卵の等級づけをしてパッケージする。卵を洗ったり、選別したりですね、殺菌したりする。特に化粧価値を維持するためにですね、卵殻の外側についているクチクラ層、卵の殻をきれいにし過ぎちゃうと鮮度が低下するので、そこを上手く維持できるように紫外線殺菌をするというようなことになっています。
それから規格外の鶏卵は加工原料、液卵とか粉卵とかになって、鶏卵の加工品になっていくわけですね。卵は非常に色んなところに使われていて、食料品以外にも化粧品とか、医薬品とか洗濯、洗剤の界面活性剤とかにも使われているということ注意が必要かと思います。
最近では鶏卵も、液卵の形で輸入することが増えてきています。卵は殻を割ることが結構、手間なんで、今後、液卵の需要が増えていくと考えられます。それで大規模な養鶏場はGPセンターを併設するところが増えています。
*自給飼料と輸入飼料
餌はあとで鷲野さんもたぶんお話いただけると思いますけれど、基本的には大規模養鶏の餌は穀物中心の輸入濃厚飼料です。えさ米は結構、重要なんだけれど、えさ米だけでは採算性が悪いので、畜産と抱き合わせるということになってきてですね、さくら米とかいうような形で販売されています。
輸入先については、トウモロコシはアメリカ、大豆はアメリカと南米が増加中で、いずれも遺伝子組み換えの作物が大半の地域ということになっています。
*養鶏に典型的な工場型畜産
日本の畜産は全般的に工場型畜産と言っていい状況になっておりますけれども、養鶏はそれは特に典型的です。管理の容易なウインドウレス鶏舎が中心になっていて、大量に飼って動けないようにする。病気になりやすいんで、ワクチンを定期的に接種するとか、医薬品が避けることができない。それから抗生物質を日常的に投与するというようなことになっています。その結果、耐性菌が発生してですね、食中毒が起こるというような問題も起こっています。
で、ケージ飼育なので、ベルトコンベアで餌を運んできてですね、卵もベルトコンベアで外に出す。だいたい長くて2年ですかね、5か月ぐらいから卵を産み始めて、1年半ぐらいで、全部いっせいに出しちゃう。まだ卵を産んでいても、もう効率が悪いということで出しちゃうわけですね。生き物として扱っていない。個体差は認められないんだというのが、工場型養鶏の特質だと思います。
極力、人為を省いているんだということで、無菌の実験室状態だと言っていいと思います。要するに工業製品と同じように扱われているんだということですね。
*養鶏のワクチネーション
これ、ワクチネーションですが、これだけやっているんですけども、鳥インフルのワクチン接種が始まる可能性もあります。
*日本の畜産の特質
今、申し上げたことを整理していくと、多頭飼育、昔は有畜複合経営の柱でしたけれども、有機農家の場合には結構、養鶏を一緒に複合している経営が多いんですけれども、養鶏だけで食っていこうとすると、多頭飼育にならざるを得ない。それから加工型の畜産で、濃厚飼料と医薬品に依存している。この飼料は輸入、鶏の雛も輸入だというようなことになっている。アメリカの輸出業者は日本人の好みに合わせた卵を産むように品種改良をしています。ひょっとすると、遺伝子編集に踏み込むかもしれません。
*畜産インテグレーション
それから、畜産インテグレーション。先ほどちょっと申し上げましたが、この配合飼料メーカーは上流から統合していく、ということになっています。特に餌のですね、多国籍のアグリメジャーの市場集中度は非常に高くて、餌という畜産の入口をおさえているわけですね。一方で出口の方は、食肉のパッカー、食品加工が、大手量販店系列はパッカーがおさえている。これも市場集中度が高くなっていて、要するに寡占状態になってきている。入口のところは配合飼料メーカーがおさえている。出口のところは食品加工業界がおさえている、ということで、非常に自由度が少ない。しかも、そのために利幅が小さい。利幅が小さいから大規模化しなければいけない。こういう悪循環に陥っているというのが、現在の養鶏の現状かと思います。
*大規模化に伴なう諸問題 1
今、申し上げたような、大規模化せざるを得ない構造的な問題。それから大規模化することにともなうリスクの増大。かと言って、やめられるかと言うと、なかなかやめにくい分業関係があって、ほかの関係者に悪影響を及ぼす。相互依存なので、抜けるに抜けられないという参入・退出の障壁が出てきている。こういう色んな問題が重なり合って、世界でも最悪な飼育環境に変わってしまったのが、日本の工場型養鶏だと言っていいと思います。
*大規模化にともなう諸問題 2
それから、鶏舎を大型化しているので、多額の資本投下が必要になります。補助金に依存すると、不必要なほどの高品質を求められ、投資がかさんでいきます。で、借金経営になっていく。まあ債務超過にならなくてもギリギリということで、自転車操業をしているというのが現状かと思います。
大量の鶏糞処理をしなければいけないので、本来は地域資源のはずのものなのが、環境問題に転化してしまって、鶏糞を上手く使うという物質循環が断絶されてしまったということも言えると思います。
*飼料輸入の問題
輸入飼料なので、餌代が最大のコストになってきています。濃厚飼料は言うまでもなく、9割弱が輸入なので、海外市況に左右されて、経営が非常に不安定になっている。これはこの間の色んな動きのことでハッキリしてきたことでございます。かつて輸入は安定するための手段だった。それが今は逆に不安定要因になってしまっている。こういう問題を生んでいますし、また地域資源の未利用というような問題も出てきています。
*産業的食農システム起源の温暖化ガス~損害
最後のところは、今のフードシステムがどんな問題を持っているかということを一つの図として見ていただくための資料でございます。また後で、見ておいていただければいいと思います。
ということで終わりにしたいと思います。が、この最後の写真は、私が京都の南丹市というところで、農業振興計画作成の委員をやっていたときに、この美山の方から、鶏を飼いたいんだけれど、どうしたらいいかね、というようなことを相談されました。そのときに、平飼い養鶏がいいんじゃない、ということを何気なく言ったんですけれども、それを真に受けて、今もずっと続けておられる方のところです。はい、以上でございます。ありがとうございました。
◆「小規模平飼い養鶏の実践-持続可能な養鶏を目指して」
鷲野浩之さん(静岡県藤枝市で小規模平飼い養鶏を実践)
皆さん、こんばんは。静岡県の藤枝市で、ポラーノ農園という屋号で農業をやってます鷲野と申します。講師ということで呼んでいただいているんですけれども、そんな講師っていうほど大それた話はできないんですが、僕が実践している小規模平飼い養鶏ですね、持続可能な養鶏を目指してということで、今日はお話させていただきたいと思います。
今の養鶏の現状は池上先生の方からすごく詳しくお話いただいたんで、今日は、僕は自分のやっていることを中心にお話させてもらいます。
*自己紹介
まず自己紹介ですけれども、大阪府吹田市の出身です。大学時代は京都で過ごしまして、電機メーカーに就職したんですけれども、ここで3.11を経験して、生き方を考え直したという契機になりました。その後、JICAの青年海外協力隊員としてアフリカのザンビアに赴任して、帰国後、農業法人で新規就農。で、2018年に完全に独立して、自分で農業を始めたという経緯です。
ここで重要かなと思うことは、僕は農家出身ではなく親も農家出身ではなくて、非農家出身です。それまで農業もやってなかったんですけれども、それでもですね、ゼロから就農して、初めは機械も農地もほとんどない状況から、今、農業一本で子供たち3人を育てています。
*小農有畜複合農業
どんな農業をやっているのかっていうのが、次のスライドなんですけれども、さっき池上先生からもお話いただいたように、有畜複合農業です。今日は平飼い養鶏の話なんですけれども、平飼い養鶏家もほかの作物と一緒に養鶏をやっている方と、平飼い養鶏一本で、ほかの作物をやらずに平飼い養鶏一本でやられている方と分かれるんですけれども、僕の場合は、ほかの作物、ミカンですとか稲ですね、稲がまあ経営の中心なんですけども、あとは小麦、大豆、それから養鶏ですね。パートナーと一緒に農業をやっているんですけれども、パートナーの方がこのお米から麹を起こして、大豆と一緒に味噌を作るというような加工品もやっています。
冬場は沢庵漬けを作って販売したりとか、梅干しをやったりとかっていう農業ですね。小農を少しずつ小規模なんですけれども、色んな作物を作るっていう複合農業ですね、を実践しています。田畑は全部で3町歩、3ヘクタールぐらいです。平飼い養鶏は、鶏350羽ですね。さっきの千羽以下で統計には入らないという小規模です。
*循環する農業
この小農、有畜複合農業というのは、昔ながらの農業で、昔は農家はそれぞれ鶏を飼ってっていう農業をやってきたと思うんですけれども、これは循環する農業ということで、田畑から出るクズ米ですね、僕はトウモロコシを使わずにクズ玄米を主体に鶏を育てています。あと米ぬかですとか、あと何よりこの青草ですね、田んぼをやってますと、どうしても畔草が出ますし、畔草刈りをしなくてはいけないし、あと無農薬で稲を育てているもんですから、田んぼの中の草もたくさん、入ったときに取ってきて、鶏に与えるということをやっています。あと籾がらですね、籾すりをすると大量の籾がらが出ますので、それを鶏舎に敷き込んで、鶏糞と混ぜて堆肥化してから、今度、田畑にそれを戻すと、いうような循環を作っています。
もちろん農園の中だけで循環して成立するのが理想的なんですけれども、やっぱり足りないもの、例えば肥料ですね、無農薬の無化学肥料栽培で稲も作っていますので、肥料は蓮華草の種を買ってきて入れています。蓮華一本で今はやっています。
それから近くに焼津市がありますので、焼津から出る魚粕ですね、あとは胡麻粕、これは植物性タンパク質として重要なんですけど、先ほど池上先生がお話されたように、ほとんど大豆なんですけれども、やっぱり大豆は遺伝子組み換えの危険性が高いということで、群馬の胡麻粕を植物性タンパク質として与えています。それから牡蠣殻ですね。これは卵の殻を作るために大事なカルシウム源として、これは買ってきて与えています。
養鶏自身は4千年から6千年の歴史があるって言われているんですけれども、どうして養鶏だったのかと言うと、やっぱり鶏って何でも食べるというところと、あと草も食べるし、穀物も食べるし、普段の生ゴミなんかも全部食べるっていうんで、やっぱり田畑で農業をするのとすごく相性が良かったと思うんですね。なので、これだけ長いあいだ、養鶏というのが続けられてきたんじゃないかなと思っています。
*大規模化・効率化・集約化の先に
ところがですね、今の農業って、すごく大規模化して効率化して集約化してっていうことが進んだ結果、稲作は稲作、稲だけ作るっていう農家。あるいは養鶏は養鶏で、こんな大規模な工場型養鶏ですね、こういう構図になってきているんじゃないかなと思っています。
田んぼではですね、肥料も輸入肥料。ほとんどがもう、化学合成肥料なんですけれども、化学肥料を与えて、雑草には除草剤、害虫には殺虫剤、病気には殺菌剤と。で、農薬を使って大規模に稲を作るっていうのが今の稲作だと思います。で、同じように養鶏もですね、トウモロコシを主体とする輸入飼料ですね、濃厚飼料を与えて、こんなケージの中で鶏を飼うわけですから、病気になりやすいということで、ワクチン、抗生物質、あるいは早く鶏を性成熟させるための成長ホルモンっていうのが使われるようになってきているということで、ここの稲作と養鶏のあいだの循環というのは、もうほとんどなくなってしまって、稲作は稲作、養鶏は養鶏になっているっていうのが現状かなと思います。
*肉用種:ブロイラー・チキン
大きく分けて、肉用の養鶏と卵用の養鶏があるわけですけれども、先ほど、平飼いの肉用種で鳥インフルエンザが発生しているっていう話があったんですけれども、本当は平飼い養鶏というのは、1坪10羽以下、1坪あたり10羽以下に抑えて飼育をしないといけないっていうふうな決まりがあるんですけれども、ブロイラー、肉用種の場合は違ってすね、平飼いと言ってもこれだけ密の状況で飼われています。見ていただいたとおり、ウインドウレス鶏舎、窓がない鶏舎で、ちょっと薄暗くしてあるんですね。で、鶏はずっとウツロウツロしている感じです。運動もさせないことで、早く太りやすいというのがブロイラーチキンと言われるものです。
*卵用種:レイヤー・チキン
卵用の品種はレイヤーチキンと言われるんですけれども、こんなふうに籠の中に、ケージの中に鶏を閉じ込めて、ひたすら卵を産ませるというものです。これ、皆さん、そのケージ飼いの鶏の工場って、あんまり行ったことがないと思うんですけれども、僕も日本では行ったことがなくって、一度、まだ会社員だったころに、養鶏場に電話をして、養鶏の様子を見せてもらいたいってことを言ったんですけど、もうぜんぜん門前払いで、病気が移るとかっていうので、見せてはもらえませんでした。
ただ、アフリカにいたときに、養鶏家の人がいて、見せて欲しいって言うと、見せてくれたんですね。ケージなんかも、もうガタがきているんですけれども、ここで言いたいことっていうのは、ケージ飼いっていうのが、日本だけの問題ではなくなっていて、世界中なんですけど、アフリカでもこういうケージ飼いっていうのが始まっています。主導しているのがバイオメジャーですね。先ほどの話に出てきたバイオメジャーと、あと政府を挙げて、こういうケージ飼いを推奨しているという、世界的にそういう状況になっていると思います。
*鶏って何を食べる?
鶏って何を食べるっていうことなんですけれども、主食、ほとんどの鶏は主食、トウモロコシですね。これは僕がアフリカで飼っていた鶏なんですけれども、このさっきのスライドですね、こういう状況を目の当たりにしまして、とてもこういう卵は食べたくないと思って、自分で飼い始めた鶏です。で、これがアフリカで伝統的に伝わっているトウモロコシとオクラ。オクラというのはアフリカ原産なんですけれども、オクラの種採りをしているところに、鶏が遊びに来てですね、食べ物を探して遊びに来たっていうところです。
*飼料用トウモロコシ
今、養鶏における主食、鶏の主食はほとんど飼料用トウモロコシです。昔は収穫後輸送用農薬、ポストハーベストと言われるものですね、ポストハーベスト農薬が問題で、このポストハーベストを使っていないトウモロコシを探せば、まだ安全だったわけですけれども、今やもう遺伝子組み換えも当たり前に使われています。
大きな問題は、日本の食品表示法では、肉や卵に飼料の表示義務がないということなんですね。例えば、遺伝子組み換えトウモロコシを与えて育てた鶏だったとしても、それを記載する義務はないと。当然、義務がないので、皆、書かないわけです。
*スーパーの卵を見てみると・・・
ところが、スーパーの卵を見てみると、ときどき皆さんもご存じかもしれないですけれども、遺伝子組み換え飼料をまったく使わない卵というのが売ってたりですね、これは字がちっちゃくて見にくいんですけれども、遺伝子組み換え飼料を与えずにPHFって、ポスト・ハーベストフリーって書いてあるんですね。収穫後の農薬も使用していないトウモロコシを餌にしているというものです。今、やっぱり消費者にとって、売りになるような言葉っていうのは、皆さんパッケージに記載するわけですけれども、記載されてないことというのもあってですね、例えば、この左の自然の味っていうブランドで出ている卵なんですけど、日本の伝統種ごとうさくらの卵で、遺伝子組み換え飼料をまったく使用していないと書いてあるんですけれども。この養鶏場、僕、知っているんですけれども、ケージ飼いです。
こちらのコロンブスの茶卵っていうのも、この養鶏場は僕、知らないんですけれども、ウェブサイトで調べてみると、平飼いとは書いてないので、おそらくケージ飼いです。なので、今、消費者として、僕も消費者の一人ですんで、消費者の一人として大事なことと言うのは、やっぱり、このケージ飼いの問題、平飼いの問題というのがあるということを知るということと、あと、パッケージに書いていないことっていうのは、おそらくあまりいいことじゃないから、書いていないわけで、パッケージの裏を読むということも、消費者としては大事なことなんじゃないかな、というふうに感じています。
*産卵の果てに
アフリカの市場には鶏が丸ごと、丸鶏で売られています。生きたままですね。というのは、まだ冷蔵庫を持ってない家庭というのも、まだたくさんありますので、肉をたべるときには、鶏ごと買ってきて、絞めて食べるんですけれども、もう卵を産み終わった2年間、3年間、卵を産み終わった鶏というのは、もうストレスで羽が抜け落ちて、こんな状態で市場で販売されています。
*卵の工業生産
卵の工業生産ですね。ここの工業生産で主な目的というのは、いかにたくさん卵を産ませるかということだと思います。先ほど見ていただいたように、身動き出来ないようなケージ飼い。EUではもう、ケージ飼いが禁止されています。ここで大事だなって僕が思っているのは、ケージ飼いの鶏の卵というのが、安全・安心じゃないから、だからEUではケージ飼いが禁止されているのではない、ということですね。EUでは、アニマルウェルフェアの観点から、家畜であったとしても、家畜は家畜らしく、鶏は鶏らしく生きる権利があるという考え方のもとで、ケージ飼いが禁止されていて、結果的に人間も安全・安心なもの、卵が食べられたらいいんじゃないか、という考えなので、すごく進んでいるなあと思うんですね。
というのは、近年の鳥インフルエンザで、ニュースで何万羽、殺処分されましたというニュースになっても、その次に来るのは、いつも卵の値段がこれから上がりそうですとか、そんな話ばっかりで、結局、消費者目線、人間目線の考えしか、ニュースに出てこないというのは、すごく寂しいなと思うところです。こんな工業生産では、トウモロコシを主とする濃厚飼料ですね、とにかく高カロリーの穀物、タンパク質を与えて、早く鶏を育てて、たくさん卵を産ませる、早く卵を産ませるというふうな養鶏になっています。で、寒さで産卵率を落としたり、あとはウイルスが入って来ないような閉鎖型鶏舎です。窓もないような鶏舎で鶏が飼われています。当然、病気になりやすいので、ワクチンや抗生物質を使って病気を予防するということが、普通に行なわれています。
先ほど見ていただいたアフリカのザンビアという国で見た養鶏場なんですけれども、ここに餌の袋があってですね、餌の袋の中身は何が入っているのかなと思って、見せてもらったんですけれども、トウモロコシがもちろん主体で、あと大豆粕とか入っているんですけれども、そこにドクロマークが付いていてですね、人間は絶対食べてはいけないっていうマークが付いていました。それもちょっと衝撃的だったんですけれども、やっぱり抗生物質が餌に混ぜられているということが大きいだろうなと思います。
それから雄を飼わない無精卵ですね、温めても雛が孵らない雌だけで産んだ無精卵がほとんどすべてそうなっています。
*より安く、より大量に
卵をより安く大量に作るという、この工場型の養鶏は、もしかしたら昔はすごく高級品だったという卵を物価の優等生に変えて、戦後の食糧難を救ったという部分がもしかしたらあるのかもしれないんですけれども、やっぱりその陰では、見た目はいいんですが、味わいのない鶏肉とか鶏卵、それからブロイラーというのはほとんど足で立ってないですね。ずっとお腹を地面に着けているような状況になっています。というのは、急激な体重増加に筋肉も骨も付いていけなくって、自分の体重を支えられないという、そんな鶏です。
先ほど見ていただいたように、卵を産み終えた鶏は、羽が抜け落ちたような鶏になってしまっています。きっとこういう工場型の養鶏の果てに、卵アレルギーの子供というのが増加したんじゃないかなというふうに僕は思っていて、というのは、4千年から6千年の歴史がある養鶏、つまり、それだけの長きにわたり、人類は卵を食べ続けてきたわけですけれども、ここに来て、急に卵アレルギーというのが増加しているというのは、なんかやっぱり相関があるんじゃないかなと思っています。
もう一つは先ほどもお話がありましたけれども、耐性菌というのが増加して来て、いざ病気になったときに、普段から抗生物質に接していると、いざと言うときに抗生物質が効かない子供が増えているという報告もあります。
*採卵鶏の飼養戸数と羽数の推移
ところが、それでも養鶏は大規模化の一途をたどっています。これは農民連の食品分析センターのグラフをお借りしたんですけれども、横軸が平成3年から平成29年の時間の流れです。で、黄色い棒グラフが成鶏の雌の羽数ですね、要するに鶏の数です。で、このオレンジの折れ線グラフがですね、これが飼養戸数、養鶏家の数ですね。養鶏家の数が右肩下がりで下がっているのに、減っているのに、鶏の数は変わらないと。つまり、一戸あたりの養鶏は大規模化の一途をたどっているというグラフになっています。
*鶏からの警鐘、鳥インフルエンザ
鳥インフルエンザの話は先ほど、詳しくご説明いただいたんで、ちょっと省略しますけれども、今の鳥インフルエンザって鶏たちからの警鐘じゃないのかなというふうに、普段、鶏と接していて感じています。というのは、新型コロナウイルスがまん延したときに、僕たち人間はあれだけ三密は避けよう、密集を避けなさい、密閉を避けなさい、密接を避けなさいというふうに言われてきたわけですけれども、鶏たちは鳥インフルエンザに罹っても、ぜんぜん羽数が殺処分されたあと、今度はまた、同じように三密の状態に置かれて、また卵を産み始めて、それをずっと繰り返しているわけです。
養鶏をやっていると、家畜保健所の検査、養鶏場に来てもらって、家畜保健所の係員の方がちゃんとウイルス対策をしているかとかいうのをチェックしに来るんですけれども、そのチェックするときに、とにかくウイルスが入ってこないようにっていうふうに指導を受けます。平飼いの場合はもう、網しか張ってないもんですからね、ウイルスなんていくらでも入って来るんですけれども、ケージ飼いの養鶏場に比べて、平飼い養鶏場、鶏卵用の平飼い養鶏場で鳥インフルエンザが発生する件数というのは、すごく少ないんです。
それは家畜保険所の方も指摘をしていて、きっと平飼い養鶏をしていると、四面全部、網を張ってあるだけですから、ウイルスは当然、入ってくるんですけども出ていくと。ウインドウレス鶏舎が密閉型鶏舎の場合、何かで1回、ウイルスが入って来ると、もう出ていかないんですね。で、ウイルスっていうのは宿主がいないと生きられないですから、お隣に、すぐ隣に同じような遺伝子を持つ生物がいると、次々に移っていくのは当たり前のことで、だから今、本来、鳥インフルエンザのまん延を受けてですね、人間がやらないといけないことは、密接を避けて鶏を飼うということが当然だと思うんですけれども、残念ながらそういう方向には向かっていないです。
*小規模平飼い養鶏-いかに健康な鶏を育てるか
ごめんなさい。前置きが長くなったんですけども、ここから僕の小規模平飼い養鶏のお話です。卵をいかにたくさん産ませるかではなくて、いかに健康な鶏を育てるかということを考えながら、平飼い養鶏をしています。
特徴ですね、特徴は動き回れる。とにかく運動ができる少羽数の平飼いです。最初に350羽の鶏を飼育していますよっていう話をしたんですけれども、その規模は何で決めているかというと、すべての鶏に緑餌、青草ですね、田んぼの畔で草を刈って鶏に与えるんですけれども、自分一人で草刈りをして、すべての鶏に青草を与えられる、その規模でやっています。ですので、もうこれ以上、増やす気もないし、増やせないという感じですね。
餌は自家配合粗飼料です。自分で混ぜています。実は今日も、鶏の餌を360キロほど、混ぜてきたんですけれども、まずトウモロコシをやりません。考えてみると、日本でずっと養鶏が続いてきたわけですけれども、昔はきっと輸入トウモロコシなんて与えていたはずもなく、何で鶏を育てていたかと言ったら、きっとクズ米だろうと。これ玄米はトウモロコシの栄養素を補完できるっていう論文も出ています。あとは米ぬか主体ですね。で、何より新鮮な緑餌を与えると。新鮮な空気と太陽光を取り入れるための四面開放鶏舎。要するに四面全部が網です。ワクチンも抗生物質も不使用、使用していません。
あと無洗卵ですね。卵は産まれたときには、クチクラ層という層に包まれていて、その層が何をしているかと言うと、空気を通して菌を通さない。卵は自分が自分で身を守るスベを持って産まれてきてるわけです。ところが、これを水で洗ってしまうとですね、簡単にクチクラ層って落ちてしまうので、鮮度が保てない卵になってしまうので、できるかぎり洗わない卵、無洗卵として出荷しています。もう一つは雄も飼う有精卵ですね。有精卵の話はまたあとで話します。
*自作の鶏舎-鶏に必要なもの
これが僕が建てた鶏舎の中なんですけれども、鶏に必要なものを考えて、自分で建てました。まず平飼い養鶏の要件ですね、1坪10羽以下というふうに一般的に決まっているんですけれども、やっぱり1坪10羽入れてしまうと、やっぱり狭いですね。自由に動き回れる空間というのが、やっぱりもっと欲しいと思って、僕は1坪7羽以下にしています。だいたい1部屋10坪で、70羽以下っていうふうにしています。
もう一つ、次に大事なのは日当たりですね。ウインドウレス鶏舎と正反対なんですけれども、日当たりってすごく大事だと思っていまして、太陽光を浴びて、体の中でビタミンDを合成すると。ビタミンDっていうのは、カルシウムの吸収を助ける役割があります。鶏にとってカルシウムってすごく大事で、卵の殻ってほとんどカルシウムですので、ビタミンDというのは養鶏にとって、すごく大事な栄養素です。ウインドウレス鶏舎の場合は太陽光を浴びれないですから、どうやってビタミンDを摂っているかっていうと、餌にビタミンDを混ぜて与えているわけです。ただ太陽光で生成されるビタミンDとビタミンD剤っていうのは、僕はぜんぜん違うって思っていまして、やっぱり鶏が病気にならないように、免疫力を上げるためにも日当たりっていうのはすごく大事な要素かなというふうに思っています。
次は土であるっていうことですね。床が土であるということです。鶏糞を堆肥として使うためには発酵させないといけないんですけれども、土に棲んでいる土壌菌、あるいは微生物がですね、鶏糞を発酵して分解してサラサラの土にしてくれます。なので、僕の鶏舎っていうのは、ほとんど臭いがしないです。発酵しているので、糞の臭いがほとんどしないです。梅雨時に湿度が高いときに、ちょっと臭いがすることもあるんですけれども、ほとんどしないですね。
もう一つ大事なのは止まり木です。こんなふうに高さが違う止まり木を作っています。鶏も個体差、好みがあって、下に寝たがる鶏と、一番高いところで寝たがる鶏と、さらにジャンプして梁の上で寝たがる鶏というのがいて、そのためにこの段々の止まり木を作っています。
あと最後、大事なのはですね、卵を汚さないような産卵箱です。産卵箱はこっちの右側の真ん中の写真にあるんですけれども、鶏が止まり木に止まって、そこから産卵箱に入って、産卵するわけですけれども、こっちにここちょっと角度が付いてまして、卵が産まれるとコロコロコロと外に出ていくようになっているんですね。外から見たのがこれです。ここを転がってきて、鶏から卵が離されるので汚れが付かないと。なので、無洗卵として出しやすいと。もちろん、ときどき汚れたのもありますので、そういうのは出荷直前に洗って出しています。
*鶏の入浴-砂浴び
もう一つ大事な鶏の習性は、砂浴びですね。これは鶏の入浴です。鶏というのは、水を極端に嫌うんですけれども、だから雨が降ってきたりすると、必ず鶏舎に入って来るんですけれども、どうやって汚れを落としたり、寄生虫ですね、体に付いた寄生虫を落としたりするかと言うと、地面に這いつくばって、羽をバタバタバタとして、それで砂を体にまぶせてその寄生虫を落としたりとか、汚れを落としたりすると。これもすごく大事な習性で、砂浴びをしていない鶏というのは、すごいストレスが溜まるというふうに言われています。
*卵黄の色は餌の色
それで、よく養鶏をやっていると、卵の黄身が白かったりオレンジだったりするっていうふうに言われるんですけれども、お米を主体に餌を配合していると、卵黄って白っぽくなるんですね。トウモロコシだともうちょっと黄色くなります。さらに日本人はオレンジっぽい黄身の方が、栄養価が高そうに見えるんですかね、なので色付け飼料というのを使って、例えば唐辛子とかパプリカを餌に混ぜることで、オレンジの黄身を作ろうという養鶏家が多いんですけど、僕は色付け飼料はあんまり意味がないと思っているんで、ぜんぜんやりません。
ただですね、この右側の卵、これも僕が飼っている鶏の卵です。まったく同じ飼料を与えているんですけれども、この黄身の色が違う。これはなぜかと言いますと、こっちの方は鶏舎で飼っている鶏の卵です。こっちの方は趣味の養鶏で、家の目の前で放し飼いにしている鶏の卵なんですね。冬場っていうのはやっぱり、どうしても青草がなかなか与えられないので、僕の卵は冬場になると白っぽくなります。で、ただこっちの放し飼いの方の卵がなぜオレンジかって言うと、草を食べてるからなんですね。冬場と言っても、多少は草がありますから、自由に動き回れる鶏って言うのは、草をたくさん食べるんです。草をたくさん食べてるだけで、黄身の色っていうのはオレンジっぽくなります。
なので、黄身の色っていうのは、あまり気にする必要がないんじゃないかなと思うんですけど、よくレモンイエローの卵がいいとか、オレンジの卵がいいとか、色々質問されたりするんですけども、餌の配合で黄身の色っていうのはいくらでも変えれるので、あまり気にする必要はないんじゃないかなと。それよりは、鶏の飼育環境とか、餌の種類を気にされる方がいいと思います。
*雛半作
もう一つ、養鶏で大事にしていることは、雛から育てるっていうことです。産まれた1日目の雛を仕入れて、そこから6か月間育てて、卵を産んでもらうんですけれども、農業界には苗半作っていう言葉がありまして、それは苗がやっぱり何よりも大事で、丈夫な苗を作れたら、ほとんどその作物は半分出来たようなものだという意味なんですけれども、養鶏界ではこれまさに雛半作、まったく同じなんですね。丈夫な雛が出来さえすれば、あとはあんまり気にしなくても、鶏が勝手に成長して卵を産んでくれるようになるので、やっぱり雛から飼って、雛のころから、青草を中心に粗飼料に慣らして、免疫力を上げることが大事かなと思っています。
なので、高カロリーの濃厚飼料をたくさん与えて、早く大きくするということが目的ではまったくなくって、粗飼料ですね、草を中心にビタミン、ミネラル、食物繊維の栄養素をしっかり与えて、免疫力を強くすると。で、雛がやっぱり大事だということで、毎回、雛から飼っています。こちらの黒い雛は、岡崎おうはんの雛ですね。こっちはごとうさくらの雛です。
*有精卵と無精卵
もう一つ、有精卵と無精卵のことをちょっと話したいんですけど、鶏は雌鶏だけ飼っていても卵を産みます。それは鶏の排卵だからです。鶏の排卵周期っていうのは24時間から25時間です。なので、今日朝9時に卵を産むと、明日は朝10時ぐらい。明後日は11時ぐらいというふうに、だんだんちょっとずつ遅くなって行くんですけど。で、また元に戻ってくるというような排卵周期で、卵を排卵しますので、雄を飼っていなくても卵は手に入ると。
そして雄を飼っている場合は有精卵ですね。温めれば雛が孵る有精卵です。一般的には有精卵と無精卵というのは、栄養価は変わらないというふうに言われているんですけれども、僕はそうは思っていません。というのは、有精卵というのは、21日間温めれば雛が孵る卵です。つまり生命の誕生に向かう卵ですね。無精卵というのは21日間温めても腐るだけです。産まれた瞬間から腐敗に向かっていく卵。その両者の栄養価が等価だとは僕には思えないという理由で雄も一緒に飼って有精卵を作っています。
お米もそうなんですけども、やっぱり栄養価が一番あるのは、玄米の胚芽の部分だと言われていて、白米にすると栄養価がすごく抜け落ちてしまうと。なぜ胚芽の部分が栄養があるかと言うと、やっぱり生命が発生する場所だからなんじゃなかな、というふうに思っています。そう考えて有精卵を作っているんですけれども、たぶん栄養価が違うというのも、栄養価の分析とか、そういうものが生命の神秘に追いついていないだけなんじゃないかな、というふうに僕は考えています。
*鶏の多様性
もう一つ、大事にしていることが、多様な鶏を飼うっていうことです。ほとんどの養鶏場というのはたぶん、1種類や2種類の鶏を飼って、順繰りにサイクルで回していくと思うんですけれども、僕は今、6系種の鶏を飼っています。これを見ていただければ分かるように、名古屋コーチン、ごとうさくら、岡崎おうはん、ボリスブラウン、岡崎アローカナです。で、自分で交配したアローカナっていうのもいるんですけれども、産卵率は悪いです。
なぜ色んな鶏を飼っているかって言うと、僕は多様性というのは、鶏だったら鶏が長く生き延びていくために、多様なのじゃないかな、というふうに考えているからです。例えば人間も色んな人種がいて、大根だってニンジンだって色んな品種があるわけですけど、多様だからこそ、何か気候変動があったりとか、何か問題が起きたときにでも、どれかの系種はダメでもどれかの系種はいいということが起こり得ます。実際、今、夏場がものすごく暑くってですね、産卵率が急激に皆、落ちるんですけれども、このアローカナだけはですね、産卵率がそんなに落ちなかったりとかします。そういう多様性を見るのも面白くって、色んな系種の鶏を飼っています。
*卵の多様性
なので卵も多様です。この青白いのはアローカナですね。これが岡崎おうはん、赤玉です。このピンクっぽいのが、どっちかちょっと分からないんですけど、名古屋コーチンか、ごとうさくらか、という感じですね。卵の配達をするときも、できるだけ色んな卵が混ざるように仕分けて配達するようにしています。
*卵の会-生産から販売まで
最後なんですけど、ここもすごく大事にしていることで、販売まで自分でやり切るということです。やっぱり卵っていうのは、米とか小麦とか大豆とか味噌とかですね、ほかの僕らが生産している、ほかの農作物と違って、やっぱり足が早いですから、産まれてから3日以内には出荷しないといけないということで、注文を待っていても、なかなかそんなに卵が販売しきれないということで、もう農園を始めて、一番最初の鶏が卵を産み始める前からですね、こんなパンフレットを作って、卵の会というのを作りました。何かと言うと、定期購入の会なんですけど、会員になってもらって、定期的に卵を届けると。
*卵には旬がある
ここですごく大事にしているっていうことは、卵には旬があるということを会員の皆さんに知ってもらうっていうことです。スーパーへ行けばですね、1年中、卵のパックが山積みになっているんですけれども、卵にももちろん旬があってですね、旬は春です。春に卵をたくさん産んで、秋には減産に入ると。それが本来の鶏の習性です。
考えてみると当たり前のことで、鳥類というのは鳩以外、鳩以外の鳥類というのは、ほとんどすべてが春に産卵期を迎えます。なぜかと言うと、春の日が長くなって来るっていう、日照に影響を受けるっていうことが大きいんですけれども、あとは草も虫も動いて来る、要は雛を育てるための餌が豊富になって来るのが春だということで、たくさん卵を春に産むんじゃないのかなと思います。
販売する養鶏家としてはですね、その卵がすごくたくさんあったりとか、ちょっとしかなかったりすると、結構、大変なんですね。在庫を抱えるわけにもいかないということで、その卵の会の会員さんには、今はもう卵がすごいたくさんあるからたくさん卵食べてとか、今ぜんぜん卵がないから今週はお休みでお願いしますとかって言って、現状の農園、あるいは鶏の様子を伝えながら、卵を買って食べていただくというふうな会にしています。
*食品流通のあり方を考える
最後は簡単な食品流通のあり方なんですけども、一般的には農家がたくさんいて、JAが卸で買い取って、JAがこういうふうに作りなさいっていうふうに指導をして、JAからスーパーに行って、消費者に届くと。だから卵をこんな流通でやっていると、農家に入るお金というのは、ほとんどなくなってしまう、小売価格の半分以下になってしまうので、それではやっていけないから、どんどん大規模化していくというふうな悪循環になっていくわけですけれども、養鶏を始めたころから、この流通をとにかく、ぜんぜん違う流通にしないといけないということで、先ほどのパンフレットを作って、消費者の会を作ってですね、毎週、定期的に販売するようにしています。
これがやっぱり、直接販売がいいなというところは、農園から毎週、発信して、今、農園ってこういう状況ですよ、鶏ってこういう状況ですよと説明して、身近に感じてもらいながら卵を食べていただけるというところです。こんな感じで生産から販売までやっています。
*もっと養鶏を知るために
これで最後なんですけど、もっと養鶏を知っていただきたいなと思って、いつも紹介するんですけど、『ニワトリと暮らす』っていう、これは家でちょっと養鶏をやってみたいなという人が、こんな暮らしがありますよっていう、入門書みたいな本ですね。
こっち側がですね、もう本当に本気で、こういう平飼い養鶏をやってみたいっていう方向けの本で、これはもう何十年も前から、平飼い養鶏のバイブル的な本です。中島正さんの『自然卵養鶏法』、ほとんどの平飼い養鶏農家は、この自然卵養鶏法を読んで、勉強して、感動して養鶏をやっていると思います。皆さんも農文協さんから出ていますので、皆さんもよかったら、手に取って見てください。ありがとうございました。