FFPJオンライン連続講座第44回は「気候危機とエネルギー転換」シリーズの第1弾として「農業を支えるソーラーシェアリング―自然エネルギーと農業の両立に向けて」と題して2026年10月15日に開催されました。講師は、公益財団法人・自然エネルギー財団の塚本悠平さんです。自然エネルギーを生み出すだけでなく、農業経営の安定や地域の活性化にもつながるソーラーシェアリングの仕組み、制度、先進事例について解説していただきました。以下は、講演部分の概要になります。
皆様、ただいまご紹介いただきました、公益財団法人自然エネルギー財団で研究員をしております、塚本悠平と申します。まず初めに、こういった貴重な機会にお呼びいただきまして、FFPJの皆様に感謝申し上げます。
本日、村上様からご紹介いただいたんですけれども、ソーラーシェアリングですね。聞いたことのある方とない方もいらっしゃるかと思いますので、初めに少しソーラーシェアリングとは何なのかということを、ご説明させていただいた後に本格的な説明に入っていきたいと思います。タイトルとしては「農業を支えるソーラーシェアリング-自然エネルギーと農業の両立に向けて」ということで、お話をしていきたいと思います。
ソーラーシェアリングは、あくまで農業
本日皆様に最もお伝えしたいことといたしましてはソーラーシェアリングですね、農業と太陽光発電を両立する、そういった新しい農業の形なんですけれども、これはあくまで農業であるということですね。
太陽光発電の新たな適地、設置場所として語られがちなソーラーシェアリング。政府は営農型太陽光発電と呼んでますけれども、そうではないと。あくまで太陽光発電が農業を助ける形というのが望ましいというふうに私も考えておりますし、実際にそういったプロジェクトが全国各地で成功しているということをですね、私も様々見てきておりますので、ソーラーシェアリングとは何なのかということをまず皆さんにお伝えした後に、どうすれば成功するのか、またどういった課題を抱えていて、どういうような道筋になったら良いのかということをですね、皆様にご共有する機会となればと思っております。
ソーラーシェアリングの仕組み
まずソーラーシェアリングとは、ということからご説明いたします。ソーラーシェアリングというのは、農地の上で太陽光発電を実施するということで、新しい農業の形態のことです。農地の一時転用許可というですね、農地法に基づいた許可を得れば農地に太陽光パネルを設置することができると。そういった法的な枠組みが2013年にできました。
そこから現在に至るまで年々導入量が増えているということでございます。写真の左を見ていただきますと、こちら石川県の事例なんですけれども、水田の上に太陽光パネルを垂直に設置することで、冬季の雪にも対応しつつしっかりと日照量を確保しながら太陽光発電と稲の生育を両立するというような、こういった事例があります。
また右の写真ですけれども、こちら千葉県の事例ですね。パネルの下での耕運作業の様子ですが、どうしても農地の上にパネルを設置すると聞くと日陰が大きくなりすぎるんじゃないか。あるいは農機具をそもそも運転しづらいんじゃないかというような懸念がまず初めにあります。一方で、きちんと農機具のサイズに合わせて太陽光発電のパネルを支える架台ですね、この架台をデザインすれば、農業への支障をできるだけ少ない形で実施できる。そういったことも可能であるということでございます。
パネル下で栽培される作物
実際パネルの下でどのような作物が栽培されているのか、ということなんですけれども、非常に多様な作物を栽培することができることが分かっています。全体のですね、半分以上が食べられる作物が栽培されています。お米や大豆、小麦などの土地利用型作物が代表的ですけれども、割合としては野菜ですね、小松菜、白菜、ねぎ、カボチャ、いも類ですね、などなど様々な野菜が栽培されています。
その他では果樹ですね、ブドウであったりとかブルーベリーとか、といった果樹も栽培されています。割合としてですね、その他で言いますと、観賞用植物も30%以上栽培されているということで、特にさかきやしきみといった、神社や仏壇に供えるようなものも多く栽培されているという現状もございます。
その背景としては、パネルの遮光にですね、適用しやすいということだったりとか、あるいは農作業の手間が比較的少ない、そういった理由から選ばれています。
光飽和点と遮光率
どういった作物がパネルの下での栽培に向いているのかということなんですけれども、それを規定する要因の一つとしてですね、作物の特性、光飽和点という考え方があります。
光飽和点というのは、作物の光合成に必要な日射量のことを示します。例えばイネであれば、40~50キロルクス程度が必要だということですので、この日射量を確保できるようにパネルとパネルの間の間隔を空けるといった設計にまで工夫をするということが求められます。
今ですね、パネルとパネルの間の広さの話をしましたけれども、ここで出てくる考え方として遮光率という考えがあります。ここで遮光率の定義を書いてますが、これはちょっとややこしいのでスキップしていただいて結構なんですけれども、簡単に申し上げると農地のうち、全体の面積のうち太陽光パネルが覆っている割合のことを遮光率と考えていただければと思います。
先ほどのイネに関しては、大体これまでの実証実験や学術研究から遮光率が約33%程度であればうまく育つということが分かってきています。33%なので、農地全体の3分の1程度をパネルが覆うというようなイメージをしていただければと思います。一方、ぶどうであったりとかお茶などは、だいたい遮光率が40%から50%程度が適していることも分かってきています。ですので、パネルとパネルの間の間隔が1対1になるという割合がよくとられています。
遮光率を調節する事例
実際見ていただければと思うんですけれども、遮光率が低い例ですね。つまりたくさん日射が入る例を見ていただきます。こちらは山形県の米沢市というところで、お米農家さんのプロジェクトなんですけれども、こちらは遮光率が18%程度で、しっかりとお米の生育に合わせてこの遮光率を変えられるように可動式のパネルを採用されているというのが特徴です。
可動式というのは、パネルの角度を自由自在に変更できるということなんですね。18%の時もあれば生育期間が終わって栽培を終えて収穫したあとに関しては、パネルをできるだけ水平に持ってきてですね、34%に戻すということで、稲の生育段階に応じて光が必要なときはできるだけ遮光率を低くする。それ以外の期間は高くして年間の発電電力量をできるだけ確保するというような取り組みをされています。
作物ごとに適した遮光率
一方で遮光率が高い例を見ていただきますと、左側が椎茸ですね、原木椎茸を栽培されている。右側もそうなんですが、こちらの遮光率も50%以上で栽培されています。遮光率が低ければ低いほどいいんじゃないかと思われる方もいるんですけれども、実際は作物の特性に応じて遮光率を決めるべきだという考え方が主流となってきています。
原木椎茸は強い雨や風に弱いですね。形が変形してしまうリスクが高まりますので、そういった意味でもパネルで覆うことで品質の高い原木椎茸が育ちやすい。また、もともと半陰性植物というのもありますので、日陰をやや好む特性を持っているということから高い遮光率にそもそも向いているというようなことがございます。
作物ごとに適した遮光率というのがやはりあります。当然遮光率以外にも土壌の状況であったりとか、地域の気候によって条件が変わるので一概には言えないんですけれども、少なくとも各地で様々な作物が栽培されている中で、この作物にはこれらの遮光率が適しているんじゃないかという目安をソーラーシェアリング総合研究所という機関が出しています。こちらのウェブサイト上でオープンになっているので、もしご自身の栽培されている作物でソーラーシェアリングを始められたりとかいう方がいらっしゃいましたら、こちらが一つの目安になるといいかなと思います。
国内での導入状況と普及の背景
このソーラーシェアリングですね、どれくらい日本で導入されているのかということなんですけども、冒頭に少し述べました通り、ソーラーシェアリングの法的な枠組みというのが、2013年に導入されました。そこから徐々にソーラーシェアリングの導入件数が全国的に増えてきておりまして、最新の数字で言いますと2023年度末の累積の件数が6000件超えたということですね。
こちらはもう世界でトップの導入件数でございます。なぜ増えてきたのかという背景を少しご説明したいと思います。こちらはもう皆様には釈迦に説法かと思いますので、簡単に触れますけれども、そもそも今、日本全国で農地面積がすごい勢いで減少してきているということがございます。農地がそもそも営農されていないといった、荒廃農地や遊休農地というものがどんどん増えてきている。その大きな原因の一つとして農業がどんどん儲からなくなってきている。当然、作物や地域にもよるんですけれども、そういった傾向がある。また、農家の高齢化、少子高齢化に伴い、後継ぎがいないということで、そもそも農地を継いでくれる人間が減っている。そういった構造的な問題が影響しているかと思います。
農地への導入可能性と発電コスト
一方でソーラーシェアリングをですね、太陽光発電全体の導入ポテンシャルを見ますと、住宅、非住宅などの建物系と、農地、水上、ゴルフ場などの土地系、それぞれ全体としてどれくらい導入、これからまた導入できるのかというのをですね、太陽光発電協会という日本で一番大きい、日本の太陽光発電業界の団体が試算したものによりますと、2050年までに農業関連、農地への導入量が圧倒的に大きなポテンシャルを持っているということが試算が出ております。
こちらの国の推計としても全く同じような傾向があります。それに加えて、そもそも導入可能性があるとて導入をしたいと思う人がいなければ、また国がそれを後押ししなければ進んでいかないと思います。実際に気候変動対策で再生可能エネルギーの導入が望まれているだけではなくて、発電コストですね、1kWhあたりの発電するのにかかるコストというものが、これまではやはり火力であったりとか原子力の方が安かったゆえに再生可能エネルギーの導入がなかなか進んでこなかったという状況がありました。
しかし一方、今ではですね、自然エネルギー、太陽光発電をはじめとする自然エネルギーの発電コストが導入量の増加に、世界的な導入量の増加に伴って急激に下落しています。
中でも太陽光発電は今世界で、そして日本においても一番発電コストが安い電源になったというのが昨今の現状でございます。そういった背景もありまして、ただただ導入できる場所が多いだけでなくて、安くてそして開発にかかる時間も短い、太陽光発電が非常に注目されているというのが日本そして世界のトレンドです。
中でも農地は非常に大きな導入ポテンシャルがあるということで注目されているということですね。つまり農業の衰退を食い止めつつ気候変動対策を進め、また安い電気を国民に届ける、そういった役割を担えるのがソーラーシェアリングなんじゃないかということが今、期待されているということでございます。
農地の一時転用許可
ソーラーシェアリングを導入するにあたってどういった手続きが必要なのかということを簡単にご説明します。冒頭少し申し上げましたが、農地を一時転用、一時的に転用する許可が必要なんですね。転用するというのは、土地の種目、種別の話になります。もともと農地というですね、土地の種目があるということなんですけれども、農地を守るために農地以外の目的の種目には、原則、変えられないというのが、農地法で定められています。
例えば農地から宅地あるいは雑種地に簡単に変えられるようになってしまうと、使われていない農地あるいはまた使えているのに高値で売買されてしまうことによって農地が減ってしまう、すなわち日本の食料安全保障に大きな影響を及ぼしてしまう可能性がある。そのため、農地を守るために一時転用許可というシステムがあります。
基本的には農業以外の用途では使えないというのが農地のあり方なんですけれども、2013年に国は農地を一時的にソーラーシェアリングのためであれば、一時転用してあげますよという法的な枠組みを作ったということなんですね。これが、どんなソーラーシェアリングでもできるかと言われますと、そういうわけではなくてですね、いくつかの要件をクリアすれば、3年間あるいは10年間、一時転用を許可してあげる、そういった仕組みになっています。その要件としては、まず適切に営農を継続していること。これが一番重要な要件として定められています。
それ以外には、作物の生育に適した日射量を保つための設計であるかであったりとか、農業機械の利用が可能な高さ設定してあるのかとか、様々な要件をクリアした場合、ソーラーシェアリングができるということでございます。今申し上げたとおり、一時転用許可が必要なのは農地を守るためということですね。
営農の適切な継続と収量要件
営農の適切な継続というのが要件として定められているんですけれども、その中身としては営農が行われていること、当たり前なんですけど生産された農作物の品質に著しい劣化が生じていないこと、というのがあります。そして最も重要な要件としては、地域の平均的な単位収量と比較して2割以上減収しないこと、というのが定められています。
これを守らない場合ですね、あるいはうまくいかない場合、改善の命令を受けても改善をしない場合ですね、一時転用許可が剥奪されます。そうなるとソーラーパネルも農地から速やかに撤去しないといけない。そういったルールが設けられているということですね。
許可期間と下部農地の範囲
一時転用許可の期間で、先ほど3年か10年というふうにお話いたしましたが、基本的には3年なんですね。つまり3年ごとに一時転用許可の再許可を得ないといけないということなんですけれども、ある一定の条件を満たせば10年以内、10年になるということがあります。3つの条件があるんですけども、いずれかに該当すれば10年以内になります。
1つが、認定農業者等の担い手が農地で営農を行う場合。2つ目が、荒廃農地、もう農業が実質行われていない農地を活用する場合。3つ目が第2種あるいは第3種農地を活用する場合ということでございます。後半の二つは、条件の悪い農地を使うこと、ということですね。場合によってはいい条件もあるんですけども、基本的には難しい条件の中で栽培をしろというようなことが言われています。
太陽光発電を農地に設置する場合ですね、下部農地の活用条件として、おおむね2割以上減収しないことというのがあるんですけれども、下部農地の範囲はどこなのかということも規定されております。この法的な枠組みができた当初はですね、パネルの下だけだったんですね。ただ後にですね、ルールが変更されまして、発電設備を設置した農地の一区画全体というのが、下部農地の範囲となりました。ですので、農地は当然基本的に周りの農地に囲まれているので畦畔や法面で区分けされた一区画全体を指す、ということが下部農地の範囲でございます。
農地の一時転用許可なんですけれども、どれくらいの範囲なのかということなんですが、実際には太陽光パネルが覆っている全ての面積ではなくてですね、太陽光パネルを支える架台の支柱ですね、柱が刺さっている部分のみ一時転用許可の対象になるというようなことが分かります。
成功のための四つの工夫
こういったソーラーシェアリングを進めていく上でどうすれば成功するのか、ということが非常に重要かと思います。ソーラーシェアリングではきちんと農作物の収量を確保する、また農業しやすいような設計にする、というのが国から求められているんですけれども、ただそれだけやっていれば農業として、また発電事業として持続的に続けていけるのかと言われると、必ずしもそうではないというような状況がございます。私も今、ソーラーシェアリングのリサーチを始めて4年になるんですけれども、全国各地、また諸外国のソーラーシェアリングの現場を様々見てまいりまして、その中から実際にこれは効果的なやり方だなという条件をこれまで研究レポートでまとめてまいりました。その中から効果的な対策を4つ、こちらでご紹介したいと思います。
① 農作物の価値を高める――山形県米沢市の米作り
1つ目が栽培する農作物の価値を高めるということですね。つまり収量だけではなくて品質また農作物の商品的な価値を高める、これがソーラーシェアリングにおいて非常に重要だということを申し上げます。今、写真で見ていただいているのが、先ほど冒頭でお示しした、山形県米沢市のお米のプロジェクトです。こちらのプロジェクトの特徴としては、可動式のパネルを使っているということによって、作物の生育に必要な光を確保しつつ年間の発電電力量をきちんと確保する。それによって農業も太陽光発電も両方きちんと収益を得られるそういったモデルになっているということですね。
ここで農作物の価値を高めるというのはやはり品質をいかに確保するのか、また供給先、供給ルートをしっかりと確保する、ここに尽きるというふうに感じております。このお米ですね、基本的に低農薬で栽培されているんですけれども、毎年ですね、この遮光環境下にもかかわらず農作物の米の収量はですね、地域平均の90%以上を毎年確保しています。
また品質に関しては一等級ですね、一等米を毎年継続して供給できているということがございます。近隣の営農組合とですね、しっかりと連携しながら、ふるさと納税だったりとか、また直販等できちんと栽培したものはですね、平均価格よりも高く品質の高いものを供給できている、というようなことが非常にポイントなのかなというふうに思っております。
② 持続可能な経営モデル――相模原市のブルーベリー農園
効果的な対策の2つ目なんですけれども、持続可能な農業経営モデルを作り上げることです。こちらは神奈川県相模原市のブルーベリー農園の事例です。こちらはただのブルーベリー農園ではなくてですね、会員制の観光農園を運営されているところですね。通常であれば作物を栽培した後に収穫の作業があると思います。そこでは場合によっては多くの人手やお金が必要になるというところなんですけど、こちらでは会員制をとっておりまして、個人やまた法人会員を募集して、その会員の方々が毎年6月から9月頃まで収穫時期に訪問されて、年間の会費を払いながらここでブルーベリーを収穫するというような催しが毎年なされています。
私も何回か訪問させていただいたんですけれども、ここでポイントなのが、やはり会費を取ることで、きちんとですね、農業と発電にのみに依存しない長期的な収益モデルを作り上げているということがやはり大きいと思います。また、会員に収穫を手伝ってもらうことで、収穫にかかるコストをかなり減らすことができている。収穫のロスも減らせることができるというのも一つ大きなポイントかなと思います。
また、6月から9月にかけてなので、非常に暑いです。ただ、この太陽光パネルの下を収穫をする会員が歩くわけなんですけれども、やはり体感温度が数度下がるんですね。ですので、収穫の際に通常であれば非常に暑い環境下で、あるいは危険な環境下で農作業に従事しないといけないかと思いますけれども、パネルがあることによってブルーベリーが強い日射を防ぎながら、また農業を行う人間にとっても非常に健康な農作業の環境を作り出すことができるというのもあります。
2019年からこちらがやられているんですけれども、2025年までですね、初めの方は農業よりも発電の収益の方が圧倒的に多かったんですけれども、今はですね、農業の収入の方が発電よりも多い、上回っている、そういった状態でございます。ソーラーシェアリングでよく言われるのが、農業よりも発電がしたいからやりたいんじゃないのかとよく言われます。ただこういったですね、発電の収益に依存せずに農業できちんと食べていける、農業で稼いでいける、そういったモデルがやはりソーラーシェアリングを広げていく上で周囲の理解も得やすいですし、事業としても持続的になるというふうなモデルもございます。
③ 農地に適した発電方法――岡山県の温室栽培
3つ目の効果的な対策、これは農地、あるいは作物に適した発電方法を工夫することです。こちらの写真は岡山県玉野市のプロジェクトです。こちらではグリーンハウス、農業用の温室栽培のモデルです。こういったモデルは日本ではまだ数える程度しかないんですけれども、この中ではイチジクやレモン、また原木椎茸など様々な作物が栽培されています。
この温室栽培ですね、ハウスが建っている土地はもともとかなり荒廃した農地だったんですね。私もこちら何度か訪問させていただいたんですけども、この周囲はもうとんでもなく荒れているそんなエリアです。地域の方々からも、こちらの社長さんがかなり強い要望があったみたいでして、「荒廃農地を何とかしてくれ」「周りでどうにかできる人間がいないんだ」と、いうような要望もありつつですね、やはりこういった新しい農業の形であれば若い農業者を取り込みつつ農地も再生できる、そして地域に一定の金銭的な経済的なメリットを享受させることができるんじゃないかと、そういったことから導入されました。
もともと荒廃していたので、なかなか露地の栽培だと農地の土壌の力を回復させるのに時間がかかる、そういった事情がありました。そこも解決したいということで、激甚化する気候への対応もそうですし、土壌の状態に関係ない形で導入できないかということで、知恵を絞られた結果、温室栽培で、ポット栽培というのを選ばれたそうです。
ここでポイントとなってくるのが、複数の作物を栽培する上では、適した遮光率、栽培環境が変わってくるという問題があります。そこを解決するために、作物に応じて遮光率を変えられるデザイン、設計を施されています。例えば原木椎茸ですと、一定の遮光を好むということで遮光率50%。他の、遮光率がもう少し低い方がいい、光がもう少し必要な作物、イチジクやレモン等においては遮光率30%にする、ということで作物ごとに遮光率を変えられるというのがこちらの特徴でもあります。
④ 農地の保全・回復――栃木県の有機栽培
4つ目最後ですね、効果的な対策として農地を保全するということですね。こちらは栃木県の事例なんですけれども、完全なる有機栽培で米、麦、大豆を中心に大規模に栽培されている事例です。ソーラーシェアリングの導入件数としてもかなり多いんですけれども、彼らは有機栽培をしながら地域の平均の100%以上の収量を得ています。
これは有機同士での収量を比較した場合ではなく、慣行栽培も含めて平均の収量以上を得ているということですね。特に大豆に関しては昨年度の実績でいうと180%の収量を得ているという驚異的な数字をたたき出しているんですけれども、その理由としては緻密な土壌の管理ですね、というのがやはり大きいというふうに社長はおっしゃっております。
ここの効果的な対策の中で保全回復というワードを入れているんですけれども、このプロジェクトの大きな特徴としては、収量をしっかり上げられているというのももちろんなんですが、もう一つ大事なのが農地を保全してあげる、また生態系を回復してあげるというのが大きなところです。写真の左と右に見えているかと思うんですが、農地の端の方に水路があります。水路と農地の間に小さな柵を設けて水を流せるようにしているんですね。水を貯められるようにしている、これはつまりビオトープです。
ビオトープというのは、生物が一次的に避難できる環境のことを指すんですけれども、この農地が水を張っている期間に関しては、カエルやタガメ、ドジョウなどが生息することができるということなんですが、栽培が終わった後に水を抜くと思います。その場合、その生物たちが場合によっては逃げることができない、移動することができない場合死んでしまう。そういった農業の全体の話だと思うんですけれども、生態系を何とかできないかという、こちらのプロジェクトの代表の方の思いとして、農地の周りにビオトープを設けることで、一年を通じて生物がきちんと生きられる環境を作るというようなことをされています。
それはひいては農地の土壌の健全性にもつながっているということも外部のコンサルタントなんかも入れて調査されているということでございます。保全に関しては、こちらも長年耕作放棄地だった場所なんですけれども、大豆もそうですし、一部はじめの方は緑肥なんかも入れてですね、きちんと農地の土壌の健全性をしっかりと強めるというのもされた上で有機栽培されて成功されている、そういったことです。
普及に向けた三つの課題
これまでソーラーシェアリングを成功させるための工夫というのをご紹介さしあげましたが、これから導入量をさらに拡大させていく、また良いプロジェクトを増やしていくためにはいくつか課題があります。主に制度的な課題が大きいですね。ここでは主に3つ課題をお伝えしたいと思います。
課題1 一時転用許可の地域差
1つ目が、一時転用許可の地域差というものです。一時転用許可については冒頭お話しいたしましたが、運用プロセスというのは国によって大まかに決められているがために、各地域ごとに差があります。この一時転用許可のプロセスですね、この図の下の方を見ていただければと思います。まず左からプロジェクトの申請者、つまり農家ですね。申請者がソーラーシェアリングをやりたいですと、各地域の農業委員会に申請書を提出します。農業委員会を通じて都道府県知事に意見書を送付して、最終的に必要な場合は農業会議に知事が意見を聞いて結論が出るということなんですね。
こちら原則として標準的な処理期間2ヶ月間というのが定められています。申請書の提出から許可の通知まで2ヶ月以内にしないといけないということがルールで定められているんですけれども、地域によってはそれを大幅に超えるということが往々にしてあります。
うまくいけば1ヶ月半程度で下りるんですけれども、非常に時間のかかる例としては、半年、長すぎる例では2年以上かかっているというようなこともあるんですね。そうなると当然ソーラーシェアリングの設備を導入する上での融資、資金調達であったりとか、様々な計画、そして資金繰りの計画が大きく狂ってしまうというようなことになりかねません。
ですのでこの地域差を何とかしないといけないというのが今課題としてあります。
課題2 実証データ・ノウハウの共有
2つ目が実証データやノウハウの共有というのが非常に難しい状況です。今、静岡県の実証実験の例をここでは載せているんですけれども、静岡県は非常にソーラーシェアリングの導入に熱心な、数少ない都道府県の一つなんですけれども、こちらではお茶をはじめとした県の代表的な作物をパネルの下で県が農業試験場に導入して調べてみるというようなことを複数でされているということなんですよね。
秋田県でも同様な事例があるんですが、一方、他の自治体ではほとんどこういった事例はないです。他の国や地域に目を向けてみると、日本よりもソーラーシェアリング導入件数は圧倒的に少ない一方で、州政府であったりとか、国が自らお金を出して人員を動員してデータをためていく。それをその地域あるいは他の地域に波及させていく。そういった試みがなされている一方で、日本ではまだまだそこがなされていない。すなわちこの地域ではこういった作物でこういった設備のもとであればうまくいくんだよというデータ、ノウハウというのが分かっていない、また共有されていないというのが大きな課題としてあります。
これがもし分かれば各地域でうまくいくプロジェクトも増えると思いますし、参画したいと思う方も当然増えると思うんですね。そこが今、全体の課題だというふうに感じています。もう6000件以上の実証データがあるわけですから、それを使わない手はないんじゃないかなというふうに思うんですが、まだ進んでいないというのが現状です。
課題3 国の推進策とFIT・FIP
そして最後3つ目の課題ですね。国の推進策が不足しているということです。こちらはFIT・FIP、固定価格買取制度というですね、国が再生可能エネルギーの導入を支援するという取り組みが2012年から進められているんですけれども。こちらはですね、太陽光発電だけでなく風力発電、バイオマスなど様々な自然エネルギーに対する促進策なんですけれども、国が原則、20年間、一定の固定価格で自然エネルギー由来の電力を調達してあげますよという制度なんですけれども、太陽光発電で申し上げますと、今ですね、1kWh当たり10円を切るという状態なんですね。
制度が始まった時は40円程度だったんですけれども、システムコストや導入コストの低下に伴って、どんどん支援額が減ってきているということなんですけれども、一部、屋根置き太陽光発電、家の上であったりとか。まだ10kW以上なので、工場とかオフィスとか、基本的な業務用の屋根に関しては、1kWh当たりですね、地上設置よりも大幅に高い価格で
支援してあげるというような特別措置がなされています。これは本当に最近の話なんですが、こういった設置種別、設置する種類に応じて設置コストは違うという状況がありますので、少し設置にお金がかかる屋根置き太陽光については、しっかりと導入支援をしようというのが国の考えですね。
ここでソーラーシェアリングに目を向けてみると屋根置き太陽光よりも設置にコストがかかるというのが現状です。一方で、今は通常の地上設置型太陽光と同じ価格での、固定価格の買取になってしまっているんですね。ここはソーラーシェアリングを本当に国がしっかり導入したいのであれば屋根置きと同じ、あるいはそれ以上の価格できちんとですね、実情を調べた上でより支援を強化していくべきじゃないかというのが私が今、考えているところでありますし、国の中でも主力電源化小委員会というのが、資源エネルギー庁の中で走っているんですけれども、その中でもようやくソーラーシェアリングを始めとしてですね、各太陽光発電の種別でどの程度、またどういった条件であればきちんと強化しようかという話がようやくなされ始めているところです。ここが今ですね、ソーラーシェアリンググを経済的に支援していく、いけるかどうかという瀬戸際にかかっているということでございます。
農林水産省が検討している新たな規制案
これまでソーラーシェアリングがですね、いかに良いのかということだけでなく、成功させるためにはどういった工夫が必要なのか、また課題があるのかということを申し上げてきました。課題とも大きくつながるところなんですが、国はですね、特に農林水産省はソーラーシェアリングの導入に関して新しい制度を今、作ろうとしています。先週の金曜日に、新しい制度、パブリックコメントの結果が公示されたところです。結果としてですね、これまでの制度案から大きく変わっていないというところですので、これまでの制度案を少しご紹介させていただきますと、赤線を引いているところが特に重要なところかなと思っています。
まず栽培する品目に関して50万円以上の生産販売実績等を有している必要があると。また栽培作物に関して、地域でしっかり栽培されていて、また販売ルートが確立している品目であること。特に米、麦、大豆というのが例として書かれているんですけれども、そういったことがあると。また発電設備に関しては、遮光率がどんな作物においても30%未満であることというのが、ルールとして課せられようとしています。先ほど私がお見せした事例で言いますと、30%以上でもきちんと収量を上げつつ農業として成功している事例はたくさんあるというのが今、実情です。
まだまだご紹介しきれなかったんですけれども、お米もそうですし、ブルーベリーまたお茶コーヒーなどですね、様々な作物ですね、それぞれ作物の特性がありますので一律の数値を当てはめるというのは極めて科学的ではないというのが、私の考えでもありますし、各地の先行している事例が、それをまさに示しているというふうに考えているんですけれども、国はこの一律の遮光率を規制をかけるというようなことが今、出ています。
新制度の手続きと現場への影響
実際にパブリックコメントを見ていると、一番多く寄せられたコメントは、60件以上寄せられたコメントの中に、遮光率30%というのは実情に適っていないというのが、たくさん出てきた意見の中でも、最も取り上げられたところでございました。
また、設備に関してだけでなく、農山漁村再生可能エネルギー法という、これまで農地法の下で運用されていた、このソーラーシェアリングなんですが、農山漁村再生可能エネルギー法という別の法律も絡めることになりました。どういうことかといいますと各自治体においてですね、事業者がまず起案、手を上げて有識者、各地域の有識者や重要なステークホルダーを集めて、約半年間ですね、場合によるんですけども約半年間、協議会というのを開くことになります。その地域においてどういったソーラーシェアリングが望ましいのかだったりとか、どのように安全に、かつきちんと農業できる形で導入していくべきかということを話し合う協議会を開く必要があるんですね。協議会で話された内容をもとに各市町村における基本方針というのを策定します。この基本方針を策定した後に、設備計画というのを新たに事業者が策定して、ようやく先ほどまでご説明した一時転用許可の申請ができるというかなり複層的なプロセスが必要になるということになりました。
これはつまり、ソーラーシェアリングを小規模なプロジェクトであっても、やるだけでこれまで以上に半年か1年以上の時間がかかるようになってしまった。また協議会をきちんと運用しないといけないというようなことが、おそらくこれから決まりになります。そういった少し時間とお金がさらにかかってしまうというのが、今の国の新しい規制案の検討方向でございます。
規制強化の背景と望ましい制度設計
なぜそういった規制案が設けられようとしているのかというその背景なんですけれども、農林水産省は農作物の収量や品質に問題がある事例が増えているということを懸念しています。農水省のデータを見ますと、ソーラーシェアリング全体の20%以上で営農に支障を来しているというふうに報告しています。中でも単収の減少や生育不良というのが、70%以上を占めているということを言っています。なぜ減少しているのか生育不良なのかという原因までは分析は出ていないんですけれども、少なくとも24%の事例で支障が出ているということが報告されています。国としてもやはりこういったですね、うまくいっていない事例をしっかりと規制していきたいというのが、大きいということなんですね。
ただ多くの事例ではうまくいっているというふうにも取れると思っています。ここでうまくいっている事例を伸ばしつつ不適切な事例は規律を正していく、規制していくというのは非常に望ましい方向だと思うんですが、今、国の規制案の方向を見ると良いものも悪いものもどんどん厳しくしていく、そういった方向性だと私は今、捉えていますし、各種の事業者の方々、業界団体の方々とディスカッションをしていても、同様の考えを持ちの方が非常に多いなというふうに感じています。
やはり重要なのは、うまくいっているプロジェクト、なぜうまくいっているのかというのをきちんと国や研究機関が分析して、それを元に制度を作っていくというのが非常に重要だと考えています。こちら栃木県のプロジェクトでもあったように、地道な土壌管理できちんとパネルの下であっても平均の収量を上回ることができるということもあります。また岡山県の事例を見ても、品目ごとに適した遮光率があるんだということもありますので、これも各地のデータをもとに国がデータベースを作って、各事業者や自治体にしっかりと情報をシェアしていくということが非常に望ましいのではないかなというふうに考えています。
拡大に必要な政策
今、述べたことも含めて、ソーラーシェアリングの拡大に必要な主要政策というのを並べてみました。まず農地の一時転用許可の簡素化なんですけれども、これは非常に時間がかかるようなんですよね。ペーパーワークにかなり時間がかかってしまうので、もう少し簡素化できないのかというのはやっていらっしゃる皆さん一様におっしゃっています。
また、不適切な事例の要件を限定するというのも、先ほど述べた通りでございます。栽培実績に関するデータベースの構築というのも申し上げたことなんですけれども、やはり何がうまくいっている事例なのか、どういった要因が成功の秘訣なのかですね、あるいは失敗している事例に関しては何がダメだったのかというのが分かれば、今後、失敗を繰り返すことはないと思いますので、国としてきちんとデータを集めて公表するという、ある意味基本的なことではあるんですが、それが今ほとんどできていないのでしっかりとやっていただきたいなと思っております。
またFIT・FIPですね、固定価格買取制度でソーラーシェアリングを今後まだまだ支えていくというのが必要です。最後に金融機関と連携した資金援助というところですね。ソーラーシェアリングは通常の太陽光発電と比べて少し費用がかかりますので、今はきちんとできる人は金融機関から融資を受ける、あるいは投資家から資金提供を受けるということができている方もいますけれども、やはりですね、多くの方々が資金調達しやすい環境を作るというのも国、自治体そして金融機関と連携して実現していくということが必要かなと思います。
大学・海外での実証事例
残り2~3分弱となりましたので、少し急いでいきますけれども、このデータベースに関して非常にいい例がたくさんあるんですね。自治体や国レベルではほとんど進んでいないんですが、大学ベースでいくと酪農学園大学という北海道の大学や広島大学等が、キャンパスの中にソーラーシェアリングを設置してデータを貯めているという事例があるんですよね。こういったものであったりとか、あるいは各都道府県にある農林研究所、農業試験所のところに小規模でもいいので設置して、その地域にあったモデルを探していくというのが重要かと思います。
またドイツが非常にいい例なんですけれども、電力の買取価格を通常の地上設置よりも高く買い取ってあげるということを彼らはしています。ここにも日本はまさに見習えるところなんじゃないかと思います。昨年、私も南ドイツを訪問して現地を見てきたんですけれども、州政府がかなり大規模な実証実験をやっているんですよね。非常に様々な形の形式の設備の下で10種類以上の作物を栽培しているというところを見てきたんですけれども、ここもですね、きちんと州政府と大学等が組んでデータを取りながら、その地域に応じた作物、またできるだけ経済性の高いような設備の設計というのを試されていました。
自治体が担う役割と結び
最後なんですけれども、今後ですね、ソーラーシェアリングを導入していく、導入を拡大していく、いいものを増やしていく上で、これまで事業者が各地域で自分たちの力だけでやらなければいけなかったところが、新しい制度の下では自治体の力というのは非常に重要になってきます。自治体がですね、積極的にならなければ、なかなか事業者も一緒にできないです。ですので、各自治体において、政策の中にソーラーシェアリングの推進を明記していくというのが非常に重要かと思います。また、ソーラーシェアリングを特に促進していく区域というのも指定してあげると、一時転用許可も非常にスムーズになるんじゃないかなと思います。
また、各地でデータを貯めていくというのも非常に重要かなというふうに考えています。小田原市では既にそういったことがですね、進んでまして、ぜひ皆さん見ていただければと思うんですが、政策の中に促進しますと、具体的にこういうふうに促進しますというのを書いてまして、今後またますます具体的になっていくので非常に楽しみにしているところでございます。
私からの発表は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。