有機農業研究会「生みの親」一楽照雄の実像と思想を掘り下げた大著『一楽照雄の世直し有機農業運動』が2026年6月17日、創森社から刊行されました。
同書に関する創森社の紹介はこちら:
以下は、同書についてのFFPJ常務理事の池上甲一さんの紹介です。
有機農業研究会の「生みの親」とも評される一楽照雄。1906年7月21日に、現在の徳島県阿南市で自小作農の3男として生まれた。それからほぼ120年後の2026年7月10日に明治学院大学で、日仏比較較研究セミナー「有機農業の発展を支える新たな産消提携」が開催された。このセミナーは、雨宮裕子(レンヌ日仏文化センター所長)著の『一楽照雄の世直し有機農業運動』(創森社)の刊行を機に、著者と有機農業関係者が一堂に会し、「提携」の再評価を行うというものだった。常務理事の池上はこのセミナーでコメンテーターとして登壇した。その縁で、本書の要諦を紹介することとしたい。
この本は、農業協同組合(戦前は産業協同組合)の指導者であり、また有機農業運動の指導者でもある一楽照雄の思想と交際のあった人たちとの多彩な関わりを解き明かす。主な登場人物は、佐久病院の若月俊一、「大和の赤ひげ」・慈光会の梁瀬義亮、埼玉県小川町の金子美登、山形県置賜地方の星寛治などである。もちろんその他にも「提携」をになった千葉県三芳村の「安全な食べ物をつくって食べる会」、藤本敏夫と藤田和芳の「大地を守る会」、槌田劭の「使い捨て時代を考える会」、自給農場の「たまごの会」などの実践が検討されている。
これらの作業を踏まえて、一楽思想の根幹に何が置かれていたのかを振り返り、「提携」の真髄を描き出す。その後に、一楽思想を現代に引きつけるテーマとしての「提携」復活の鍵を探っている。ここでは新渡戸稲造、柳田國男、賀川豊彦など錚々たる先人に学ぶ姿勢と、提携グループの反省および海外の取り組みを参照軸としてしており、好感が持てる。最後に「世直し有機農業」の意義と未来を展望している。
612頁に及ぶ大著であるが、語り口は平易で分かりやすく、大部であることを忘れさせてくれる。行き詰まっている日本の食と農をどう立て直すか、公正な食と農をどう実現するかといった問題意識を持つ人たちには格好の素材となる。じっくりと読むに値する好著だ。
