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【報告】FFPJ第38回講座 小さな林業「自伐型林業」と欧州視察レポート(上垣喜寛さん)2025.8.5

· イベント

FFPJ第38回オンライン連続講座「小さな林業『自伐型林業』と欧州視察レポート」が、8月5日(火)19:30〜21:00に開かれました。講師は、FFPJ副代表・自伐型林業推進協会事務局長の上垣喜寛さんです。講座では、小さな林業を標榜する講師が2024年と25年にオーストリア、ドイツを訪問した際の体験をもとに、両国の森林・林業の現場の実態を伝えました。以下は講座の概要になります(資料末尾に動画あり)。

それでは、私、上垣喜寛から欧州レポートをお伝えしたいと思います。自伐型林業のことを少し知っている人と知らない人と、あと今回、自伐型林業のメールマガジンを2日前に配信したところ、それだけで10人ぐらい来てくれたので、自伐型林業を良く知っているよ、という人もいそうなんですけれども、皆にも分かるようなことを話したいと思います。

あとですね、これまでのFFPJのイベントと言うか、オンラインの勉強会と少し違うだろうなと思うのは、発表するメンバーの方々は、今まで研究者の方々が多くてですね、ひじょうに証拠というか、原著とかですね、引用するものとかというのが、論文とかですね、そういったところが多いんですけれども、私は、自分を守るようなことを言ってしまいますが、ジャーナリストといいますか、論文を書くタイプではない仕事をしております。

ヨーロッパのドイツ、オーストリアという、一次産業も活発ではありますけれども、林業もすごく活発で、本とか論文もたくさんありますけれども、そのたくさんある論文や本を見ても、さっぱり分からないことがありまして、それを見に行ったり、確認したりした旅を2年間、10日間ほど合計20日ぐらい掛けて行ったという、その1人の私と、今回はもう1人、共同で本を執筆をしたんですが(https://zibatsu.jp/info/news/zibatsu-book-2025その第5章のところを書いた者とですね、どういったことが分かったのか、あとは全然、本に書かれてなかった意外性のあることを発見したとかですね、そういったことを皆さんに共有して、自分たちのフィールド、農業の方、農家の方、海の方の沿岸漁業の方とかですね、私たちは大きな林業と小さな林業という言い方をしているんですけれども、大きく生産性のある効率性のある、と言われている一次産業に対して、小さな一次産業をしている側の視点からヨーロッパのことを伝えていきたいなと思っております。

*欧州森林林業調査報告2025

ということで、その20日間のことを伝えて、さっそくいきたいと思います。それでは、この欧州森林林業調査報告ということで、始めていきたいと思いますが、何よりですね、この自伐型林業というもの、僕の視点ですね、を皆さんにまず、共有したいと思います。

このヨーロッパ、ドイツ、オーストリアの林業というのは日本、特に2000、どうでしょう、2000年代の後半ぐらいからものすごい、日本の中でドイツではこうだ、オーストリアの林業はこういう先進的なところだっていうことで取り上げられることが多くありました。それを基に10数年前になるんですけれども、2010年、2011年あたりから、このヨーロッパの林業が進んでいるんだ、その進んでいる林業をしていない日本は遅れているんだという論調で書かれていた物が多く見られました。アマゾンとか、色々ネットで検索をして、ドイツ、オーストリアというものを検索すると、結構、その時代の出版された本があります。そちらも見ていただいてもいいと思うんですが、割と同じようなことが書かれていて、そのことなんかも視察のきっかけになります。

私たちの団体、自伐型林業推進協会という団体ができたのが2014年です。同じ頃に自伐型林業という言葉が生まれました。林業推進協会で良かったんですけれども、自伐型というわざわざ漢字3文字を付けた理由というのも、まず紹介していきます。これが日本で失われた小さな林業でありますし、ヨーロッパでは実際、どうなんだろうという僕の一番の疑問点になりますので、まずそこを紹介していきます。

*これまでの林業と自伐型林業の違い

自伐型林業のことを端的に説明する資料をまず紹介しますが、ピラミッドを見せます。左側にあるのは、これまでの林業と書いてあります。で、右側が自立・自営の林業というふうに書いています。実はこれは2014年からずーっと使い続けている資料になります。これまでの2014年の前ですけれども、今までの林業はどういうものなのかというのを示したものがこの図なんですけれども、その当時からの50年前、戦後のときに林業の従事者、林業で働いている人というのは50万人いました。50万人からその当時でも5万人ぐらいに減っていった。90%の林業者がいなくなったというところになっていったのが日本全体、3,900万ヘクタールある中の2,500万ヘクタールという、67%が山なんですけれども、そこが5万人でしか、やりとりできなくなってしまったというところです。

左側で何を示したかというと、専業の部分の三角形は少し残ったわけですね。これが5万人なわけなんですけれども。一番下のところに土地所有者というのはもう何百万人というものがいます。この山を持っている人と山をやる人というのがものすごく乖離があって、数もぜんぜん違うという状態の中で、2010年、11年のときに、この専業の林家、副業とかアルバイトとかボランティアとか山主さんも少しいたんですけれども、その山主さんよりも、この専業の5万人に全部、集中して補助基金とかを入れましょうっていうことをしたのがその当時になります。

山を持っている人も、その当時ですけれども、100ヘクタールという大きな山を持っている人よりも下の人たちはもう、補助を受けられないような制度を作りました。林野制度の3千億円という予算の中で、すべてここの専業の方に特化したと言っても過言ではないという感じです。ただ新規の人たちが必要なので、新規の人たちもこの専業で林業をやる人たちを増やしていったという、これ全部、勤め人になります。で、自伐型林業の方は切り捨てられた人たちの復権運動の意味合いもありました。

それから右側なんですけども、この専業にいくまでに、山を持っている人もそうですし、地域の人たちも、まずボランティアでやろうね、という人たちもいますし、そこからステップを踏んで研修をして、兼業型とか、個人事業主で起業するとか、そういったことをやっていくと、きれいな50万人のピラミッドになるんじゃないか、ということで、僕たちは勤めていく、これは戦後の林業制度で所有と経営の分離というのが、持っている人とやる人というのは分けましょう。山を持っている人は林業をやる人に全部委託して任せましょうよ、ということを制度として、方針として国は執ったんですけれども、そこを極力近づけて、持っている人もやるし、やりたい人も地域で移住した人もそうですけれども、山を持っている人といっしょにやりましょうという、右のピラミッドを目指したということが、まずは自伐型林業の形です。

*欧州調査のきっかけ

なんでこれを言うかといいますと、ドイツ、オーストリアに行った主な理由はですね、その当時、ドイツ、オーストリアは進んでいたと先ほど言いましたけれども、何が進んでいるかというと、チマチマした林業者はいないよと。もう大きな機械、大規模な機械を投入して、生産性を高める林業をしているんだと。オーストリアでは日本よりもぜんぜん国土も少ないのに、林業者が50万人いるとかですね、それはもう80万人か。そういう数字を色々なものを取り入れながら大規模な林業が進んでいるんだという先進事例で日本に輸入してきた、考え方を輸入してきたというところがあって、それで本当かなと思ったのが、ある意味、ジャーナリストというか記者の考えだったんですね。というのも日本で現場を見ていくと、結構、小規模な林業者もいたので。

行ってインタビューをしていくと、やあ僕らは補助を受けられなくなったんだという声をたくさん聞いたんです。劇的な変化、2010年、2011年ぐらいに制度の変化があったので、その制度から漏れた人たちがたくさんいたんです。私も現場に行ってみたら、僕が行ったのは高知県でしたけれども、まず日本の話です。小さな林業家がたくさんいたんですね。こういう小規模な機械で運び出してくる。これ70代のお爺さんでしたけど。とか、こうトラックで載せていって、すべて出荷するということをしていました。

あれって、思ったんですよね。あれって思ったのは、本当にドイツとオーストリアってそうなのかな、という疑問点でした。この視察のきっかけは今、申し上げたとおりなんですけども、2011年にこの『日本林業はよみがえる』という本を書かれた方がおります。この人のことを言うわけではないですけども、すごくこう、流行った考え方なんですね。日本の林業は遅れていると。オーストリア林業は強い競争力を持っている。で高性能林業機械というのが要ります。

僕、実は林業家になりたかったんですけれども、林業家になれなかったんですね。それは15ヘクタールしか山がなかったこと。あとは林業をやるためには、林業会社に勤めること。個人事業主はできないという形にされていて、林業をやるんだったら、1億円の機械が必要だということで、高性能林業機械、こういったことにこの本ではすごく称賛するような内容でした。日本で林業を成立させるために必要なことは、個別施業への補助、小規模な補助を廃止して、施業、集約ですね、これ農業でもよく言いますね、集約化とあと路網整備という、オーストリアでもドイツでもすごく路網、道ですね、道がすごくあるので、道をつけていくことが大事だと、道も結構バカでかいんですけども、高性能林業機械を入れるので。ということで2011年に出てきたのが、森林林業再生プランというものでした。

*調査する目的

ここがざぁーとまだ10年いくんですが、海外でもこれが問題だと、これ海外でのグローバリズムな流行りなんですよ、実は。ちょうど去年出た本で、ジャーナリスト4人がこれはおかしいと言ったのが、『フィンランド虚像の森』という本がありまして、2022年、もうちょっと前でしたね、そうか視察をしようとしたのが、企画したのが2023年なので、その前の年に発行されたものです。で、ここではフィンランドというのは、森林率というのが一番、世界でも多いところなんですけれども、皆伐と言って丸裸になる山が目立つとかですね、あと泥がすごい出てしまうとか、高性能林業機械と林業政策が悲惨な森を生んだということをものすごい事実と、真実はどうか分からないですけども、この4人が調べた事実とあと写真とですね、をすごく大々的に取り上げたものだったんですね。

これを見た瞬間にあれっ、2014年から自伐型林業推進協会で見てきた悲惨な森が日本ではたくさんあるんですけども、それとすごく重なったので、ああこれは、世界で行われているものだ。フィンランドはある政権が誕生して、グリーンビジネスということをすごく取り上げたときに、この緑、森林の資源をGDPに代えるというか、売上に代えることによって、自分たちは林業の国だと言ったんですけども、その現場がもう、資源がなくなっているという、まさしくSDGsとか、カーボンニュートラルとか、そういったことを、いいよと言って、日本でもすごい伐採を勧めているんですけども。伐採をしたあと、植えればいいじゃんという発想なんですけども、その土壌がどんどん崩れている、ということだったので、あっ、これは行こうと。フィンランドもすごく行きたかったんですけども、日本がすごく採用してきたドイツ、オーストリアに行こうということで決めました。

もう15分経ってしまいましたが、その目的が僕たちには大事なので、皆さんにもできることだともっと共有するんですが、切り捨てられた自伐の動きを知りたい。あとは生産性と合理性の論理っていうのは何なんだろう、だとかですね、ヨーロッパ林業はどうなっているのかということで行ってきました。

*インタビューした自伐林家

行ってきたのはですね、これは今、真ん中のあたりに白くシワクチャに見えているのがアルプス山脈ですね。そこの西側にあるのがオーストリアで、ドイツがあり、スイス。イタリアが南の方にあるので、この5、6か国が囲んでいるという地域がアルプスになります。オーストリアで行ったところなんかは北海道ぐらいなので、全部合わせてもどうでしょ。日本列島ぐらいありますかね、それぐらいの規模感と思っていただければと思います。

で、初年度行ったのは、オーストリアとあとはドイツのシュヴァルツヴァルトといって、黒い森というので、すごく有名なところがあるんで、そこも見てきました。あとはスロベニアという、今、洪水が大変なんですけども、そこの林業も見てきたというところです。このときはですね、1年目に行ったときは、僕は自伐林家と出会いたかった、小規模な林業者で家族でやっている程度の林業者と会いたいと言ったら、たくさん会わせてくれたんですね。

まず1人目は何代目なんですかっていうのは、僕はよく日本の農家農村に行くと聞くんですけれども、ちょっと分からないなとか言うんですね。家もそのまま、石造りなので、木造ではなくて石のままというところで、農家としては15世紀から続いているけれども、その前は分からないな、と言っていました。16ヘクタールと言ったので、僕の最初あった山ぐらいです。あとは兼業ですね、畜産と兼業しているという、あっ、酪農、ミルクだったから酪農をやっているということです。これはオーストリアですけれども、それは平均の林業家の持っている面積が40から50ヘクタールなので、少し少ないぐらいです。で、夫婦と息子3人で農業と林業を営むという兼業林業で、僕らは農家林家というふうにも言っているんですけれども、そういう形でやっておりました。

小さな機械というんですけど、日本よりも結構、大きめなトラクターでしたけど、自分で全部、伐採もしますけれども、出してくるのも全部、自分たちでやっていました。で、この本の中にも書いています。今回、本当にたくさん注文してくれてとっても嬉しかったです。書いていますが、収入は年によって違います。だいたい3分の2が農業で、残りが林業です。木材は価格変動、日本と同じです。変動しますので、どれくらいのお金が欲しいかによって、自分たちがたくさん出すときもあれば、ぜんぜん出さないときもありますよということで、あとは貨幣価値も変わってきます。そういったところで調整しているのが山の役割。

酪農も変化します。兼業によって成り立つ形を作っています。これはですね、日本ではもうなくなってしまった林業の兼業型だなぁと思っていたく感動した覚えがあります。向こうの自伐林業の基本スタイルですね。案内してくれた森林組合に行ったらですね、僕は山を持っていてと言ったら、チェーンソーとウインチとトラクターがあれば、林業はできるね、ということで、これはもう、完全に自分たちでやるという前提でやっている林業がここにはあったと。参加者の中で、自伐林家がいるのかどうか、分かりませんが、おそらく林業に関わっているとしても、林業に勤めている人が多いんじゃないかなと思いますけれども、そういう形で、自伐型林業をやるときにはチェーンソーは使います。ウインチは、割とウインチ付きの動力を使うこともあります。ウインチを引くときに人間よりも引く力の強いウインチも使うし、トラクターというのは、引き出してきて、運び出すものなので、それもやっぱり使うなと。トラックだったら林内作業車というものを使いますので、すごいシンプルでやっぱり共通性があるなというものがありました。

発見としてはですね、ここは結構、日本でももしかすると農家でも最近は失われている力かもしれませんが、皆、工業高校とかに学びに行っていて、全部、だいたい機械のメンテナンスができました。最近はコンバインでも、コンバインは結構、高性能になっていると難しいと思いますけれども、収穫のときだけに使うときというのは、機械メーカーが農家を回り切れないぐらいのところですけども、やっぱり自分で全部、メンテナンスできるということが、自伐のポイントでした。

もう1軒行ったところは、ここもですね、だいたいここの地域は農家林家というライフスタイルが多くありまして、ヨハンさんという人に行くと、この人も林業と農家、農業をしている人で、45ヘクタールをしていると。あとは酪農、畜産で使う牧草ですね、牧草地も結構ありました。そういうところでやっていて、木の樹齢、木の樹齢はどれぐらいでしょうか、ということで本当だったら当てたいところなんですけども、だいたい日本ではスギの寿命は50、60年というふうに言われて、今が伐りどきだよ、というふうに言っていますけれども、ここもトウヒとかモミとかあるんですけれども、だいたい80年から100年ぐらい平均樹齢がありまして、日本のスギも生態系的には80年から90年が一番ベストだとうふうに言われていますので、やっぱりその土地の環境によって大きくなるものは残すし、小さくて伐った方がいいものは伐るという、50年で全部伐りましょうということではなくて、樹齢はさまざまだよね、という感じでやっているのがすごく印象的でした。

ここでヨハンさんとの発見はエネルギーですね、エネルギーが家庭消費の中でとても高くなっている。当時、ウクライナ・ロシア戦争が始まったときだったので、それだけでも1年で2倍、電気代もガス代もなったというところでした。で、林業家のヨハンさんは、自分で燃料を確保していたので、エネルギーも食料も自給自足になっていくという形を目指していたという形です。で、近隣でオーストリアはガスとか、燃料としてはチップが多いんですけれども、4軒でボイラーを共有したりとか。1人の人がお金を徴収して、機械の償却に充てたりとかですね、そういう割と小さい形で村の財も、僕らの行ったところは最大でも40軒の燃料を共有しているところがありますけれども、林業で得た財を皆でエネルギーや食料として供給したり、自給自足しているという活動がオーストリアの田舎町ではありました。これが40軒のところですね。シュタイヤーマルク州というところに行きました。一番、傾斜がきついというふうに言われていましたけれども、日本だとどうでしょうね、紀伊半島まで急ではないぐらいな感じです。日本列島の中で一番、急傾斜なのが紀伊半島です。

*森林組合の役割

そして、森林組合に案内をしてもらいました。森林組合というのは、日本の森林組合とちょっと違ってですね、日本の森林組合は林業をやる作業班というものがあるんですけれども、オーストリア、ドイツでは作業班というのがありますが、作業班というのは何かと言うと、農家で言うと、農協は農業はしてないと思うんですけれども、農家のためのライスセンターを設けたり、出荷したりしている役割ですね。農業をせずに、農業を後支えする農業のアクトをしている。日本の森林組合というのは、森林組合なんですけれども、林業をやっているんですね。林業の作業班というのもいるし、作業員もいるし、そこで勤めて伐採する人たちもいるんですけれども、ここのオーストリア、ドイツで分かったのは、森林組合は林業をしていなかった。林業家から高いお金で買って、高く売るみたいな形のものをしていました。

驚いたのは、組合員485人の内、99%が自伐林家、自分で山を持っている人が自分で全部やっているという林業をしていました。日本でも問題になっている、フィンランドでも問題になっている皆伐、丸裸にする林業というのは、2ヘクタール以上は禁止しているとかですね、結構、規律規範が強かったというのが1年目です。6千人のところで150の自伐林家がいるというのもありました。皆伐しないとか、いいものをたくさん見ていったんですが、ここで気になったことがあったので、2年目に行くことになるんですが、キクイムシというものが蔓延しているとか、あと風倒木、バタバタ倒れる木が多いという話もあって、結構、高性能林業機械もあったので、これは大規模林業というのも見てみないと分からないな、ということがありました。

*2年目に見えてきたこと

2年目に行ったのがですね、ドイツのバイエルン州という、アルプスの中央の上ぐらいですね。ドイツでいうとだいぶ南になります。一番南のイタリアとオーストリアに接するところになります。あとはオーストリアでシュタイヤーマルク州、同じところに行きます。自伐林家が多いというところが実際、どうなっているかと言うと、だいぶまた違っていたんですね。最初に案内されたところがこんなところでした。

すごい大型機械が入って、もう20トンクラスとかなんですね。20トンって言うと、僕たちが使う林業というのは、3トンぐらいなんです。今、主流になっているのが12トンとかなんで、日本も最近、流行ってきたんですけども、そういう機械がものすごく入っていたんです。何をしているかというと、こんなふうに地平線上、全部、木がないんです。もともと森です。こういうのが高性能林業機械で全部、運び出されていることがあって、何が起こっているのかなと言ったら、こういうので運び出しているんですけど、結局、キクイムシ被害とあとは風倒木の被害なんです。風倒木被害でたくさん倒れてしまったものを、どうやって出すかですね、運び出さなきゃいけない。そこで高性能林業機械が大活躍している状態でした。

たくさんいた自伐林家も、自分のところが山が倒れるとかですね、キクイムシが広がってくると、だんだんこう、もうできないんじゃないかという形で、もう伐採は全部、もう業者さんに任せたいということで、半年待ちとか、下手したら1年待ち。その自分たちの風倒木処理をするのを手伝っている機械がそこらじゅうであるという状態でした。だいぶ1年で変わってきたというところが2年で見えてきたところです。やっている林業のやり方もだいたい道を通して伐採するという日本と同じになるんですけれども、たくさんの木材がありました。どのくらいかというのを皆さんに伝えるのに何かいいかと思ったら、駅で待っていたら、こんな映像がありました。

-映像-

これは実は慌てて撮ったんで、半分ぐらいです。これがもう、至るところで走るというか、市場もすごい量があるし、結局は、たくさん材が出てしまうので、材価も下がってしまうんですね。今、日本のお米は少ないから上がる。材が出てくるから下がるという状態で、ここに全部、高性能林業機械があたるという状況になっておりました。

*ドイツ、オーストリアの特徴

ドイツ、オーストリアの特徴として、まとめました。で、まとめて僕の頭を1回、今回、聞いている人たち、FFPJとか一次産業の方に少し翻訳して当てはまるものを作っていこうと思いますけど、ひとまず、私たちが見てきたドイツ、オーストリアの特徴としてです。

自伐林家の多くは兼業型だったということです。林業専業でやっている人は、大きな会社が機械を持ってやるという形はありましたけれども、自分たちは兼業でやって農業と林業を兼業をしているという形が多く、僕たちの見たところではありました。

最初は小型機械が多いのかなと思いましたが、トラックもよくよく考えると、北海道で出ているような、北海道だと十畳刈りとか、どれぐらいあるんですか。ものすごいトラクターとコンバインとかも出ていると思うんですけども、それぐらい結構大きめのトラクターとかで、道もだいぶ広いものになっていて、結構、大型だなぁという印象がありました。最初、僕は批判するような形で、日本林業は遅れていると言いましたけれども、やっぱりハーベスターという、自分で勝手に伐って、立っているのを掴んで、ここに自動でチェーンソーが倒し、そこから4メートルという数字を入れると、自動的に伐ってくるという機械があるんですけども、それがとっても大好きという感じでした。

キクイムシと風倒木被害でさらにそれが進んでいて、自伐というものから委託へという変化があるなという、それがこの潮流という感じでした。だからフィンランドの動きと重なるんですけれども、大規模化して、木を伐ってっていうような形になっている。

あとは、作業をする人は本当に危険と隣り合わせという感じで、集落で年間、20人が死亡しているという話でした。これも自伐型林業って結構、危ないは危ないんですけど、人間よりも大きいものを取り扱うんで危ないんですけれど、水平の道を作ってやるんですけど、トラクターが斜面をそのまま上がっていくんです。だから、木をそれで作るとコケるというのがあるわけなんですけど、自伐ではそんなにそのまま斜面を上がっていくということはないんで、それを何て言うかな、古風な形でやっているというか、農業でも使うトラクターをそのまま使ってこかすみたいなことがあって、結構危ないことをしているという状況があったという、それだけ、何を言いたいかと言うと、結構それで辞めるっていう人とも出会ったという感じです。

フォレスターという、森林官という国家公務員みたいなのがあるんですけれども、すごい教育が熱心で、日本もそれに倣ってやろうとしているんですけども、実際に4年間も学ぶ、研修とか実習とかを経て、初めてなるんですね。僕が見てきた本では、フォレスターっていうものがあって、その人が現場を仕切り、すごいちゃんとした森林経営をしてくれていると。山主さんといっしょにやっているのを書かれていたんですけども、面白かったのは、ハーベスターという大きな機械があるので、その機械が踏み固めると、地面が固まるんじゃないかとか、いうふうに言うと、皆でそれはないと、木の枝が見えるだろうと。これがマットになるんだと。いや、20トンだと絶対、そんなことはないんだけど思うんですけども、回答が皆、同じなんです。木は敷いたら大丈夫だと。オーストリアでもドイツでもいっしょで、学んだら、こっちは応用するような話をいっぱい出すんですけども、言っていることが全部いっしょで、これ、ドイツ人をバカにしたり、オーストリア人をバカにしたいために用いる話ではないんですけど、この話をしたときに、ある人がブラックジョークだよと言うのは、アメリカ人は、英雄になるぞと言ったら、皆、行く。日本人は、皆行くぞって言ったら、行く。ドイツは上官が行くぞって言ったら行く、みたいなブラックジョークがあるらしいんですが、本当に絶対違うよって言ったら、あとでチャットでも指摘してください。

そういう考え方があるぐらい、フォレスターというのはすごく立派な職としているんだけれども、同じことを言うというのが発見だったということですね。

天然更新と言って、この辺はいいかな。ちょっとこれはあとででもいいかなと思いますが、天然更新という、広葉樹化するために、かなりの強度な伐採をしているという感じでした。日本でやっている、自伐型林業でやっているような壊れない道というのと、ドイツにも氷河が削られて固い、岩盤が固いドイツ、オーストリアとはまたぜんぜん違うなということがあって、単純にドイツ、オーストリアが先進的だから日本でも通じるということではないな、という感じがありました。

*自分で考える林業

もう一つ話題として挙げたいのが、兼業という形とは色々あるんだなということがありまして、ドイツのところで、1回目に行ったときに、ワインが多いんですね、向こうは飲むものが。ブドウの生産地。きっとワインと林業を兼業している人がいるんじゃないかと言って、そういうところがあったら行きたいというふうに2年目に言ったところ、城に連れていかれまして、800年の歴史を持つ、カステルと言うのはキャッスルなので城なんですけれども。それも70ヘクタールというブドウ畑から40万本のブドウを生産して、持っている山が1千ヘクタールというところがありました。ワインと林業とさらに銀行という3本柱でやっているという、とてつもないものではあったんですけれども、すごくユニークで面白い林業をされている人たちでした。

これは自伐型林業としてすごく参考になるなと思ったものなんですけれども、山を持っている人はこの男爵さんですね。左手の男爵さんは林業をやっているという格好をしていないですね。右にいる人が山を守っている人で、マネージャーみたいな形で現場に入っている人なんですね。だから山を持っている人がその人に、いっしょに経営をしているんだけれども、一定の管理を任せるという形をしていました。

説明をしますと、ここは160年前に生長が早いトウヒを植林したと。で、ここはやっぱり風害があって、たくさんの倒木があったと。そこで、まったく新しい森を作ることに決めましたということで、気候変動に耐える森を作ろうということで、この気候変動というのが、ブナが多いんですけれども、暑さに弱いということで、ブナから別の樹種に転換するとかですね、高温と乾燥に強い木を育てなければならないということで、この1千ヘクタールを作り変えるような動きをしていました。

何より面白かったのが、この右にいる人はさっき、同じことを皆言っているという、フォレスターなんです。フォレスターで、全部、そういう教育を受けてやってきたんだけれども、そこに違和感があったそうなんですね。それでこの1千ヘクタールの中で、どうやったら環境にいいようにできるかという、教科書とか政策とかじゃなくて、この山に向き合って、自分の応用力を使って林業をしているという、そういう山守さんだったんですね。

このやり方がすごく、僕としては今、僕たちが自治体とともに育成しようとしている自伐型林業とそっくりで、自分で考える林業。これは林野庁が言っているので、こういう林業をやっているんだとかですね。今日、僕が見てきたのは、神奈川県のある市の現場でしたけど、これは神奈川県の事業でやっているので、こういう間伐なんですっていう林業をやっていて、ものすごい伐採をしているんですけれども、本当にこの林業をやりたいのっていう林業なんですね。彼らは自分たちの山を将来に行くために、今、これが大事なのか、このブナがいいのか、本当にブナがいいのかなっていうのを、悩みながらやっている林業をしているという、極めてこの自伐型林業に近い形のやり方をしていたという形です。

*自伐型林業の原点

これは日本になります。ここから日本に変えたというのは、自伐型林業の説明にもどっていくんですが、山主さんが山をやる人といっしょになって林業をするという形が、世界で今、委託が進んでいる大規模林業に高性能林業機械、人ではなく機械に林業を任せるっていう形から1回取りもどすやり方として、この山主と山守というコンビですかね、のやり方を取りもどしていきたいっていうのが、実は自伐型林業と同じ考え方なんです。

自伐型林業というのは、山主さん、もともとはですね、大きな山を持っている人が何人かの山守さんに山を任せるという林業のやり方が江戸時代から奈良県ではありまして、その仕組みを今、現代版にしているのが自伐型林業になっています。だから、農業でも漁業でも大きな機械にしていって、効率的にやるという方向にますます進んでいる世の中でありますけれども、何に取りもどしていくかと言うと、小さいところに行くんですが、小さいなら小さいなりに、自分の任されたテリトリーですね、エリアの中で、その地域と山と向き合って、管理の仕方を考える。

なおかつ、資源を取りつくさない形のやり方をしようという、これが奈良県の吉野。200年のスギ、ヒノキがある現場なんですけれども、ここも吉野の方では、僕たちの講師をやっている岡橋さんというのが、ポツンと真ん中にいるのが分かりますかね。200年の木々なんですけれども、日本では今、50年、60年で伐採しましょうということが推奨されていますけれども、200年にもなるよと。でこの吉野の仕組みは、ここの所有者が持っているのは、1,900ヘクタールという山を67人の山守さんという、2千を67人で分散して分けた、分けて江戸時代から400年間、山守という人たちが小規模分散型で管理してきたという、そしてなおかつ、今も木が残っているという形をとったという、そういう林業の形が僕たちの自伐型林業の仕組みの原点で作ってきたという形になります。

*生物多様性を維持する

あともう一つ、最後ですけれども、結構このFFPJでも取り上げるのが生物多様性とか、あとはSDGsであったり、あとは家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンの世界の動きの中でも伝統的な一次産業のやり方とか、あと資源をどうやるかということになってくるんですけれども、自伐型林業の考える林業の特徴というのは、人に任せてないだけに、自分たちの庭のように山を管理することになるんですね。これが橋本さんという徳島の林業の現場なんですが、ここも人工林が主体でやっている100ヘクタールの山なんですけれども、そのスギ、ヒノキのほかに、人工林、経済林と言われる樹種のほかに、広葉樹ですね、カエデとかシイとか、ブナはないですけれども、モミジ系とかですね、そういったものが何と250種類以上あるという現場なんですね。

この豊かな、サワガニがいるのはですね、あと珍しい動物とかいるんですけれども、ここがこういう森っていうのは、いっぱい樹種がある山というのはたくさんあるんですけれども、ここは人工林で、スギやヒノキをずぅーと継続して収穫して経済として成り立っているにもかかわらず、そこで広葉樹とかが生えているという、そのミックスされた山として、すごく価値があるという現場なんです。ここが2011年の林業の制度が変わったときに、この人も制度の対象から外された山なんですね。こういう自分で考える林業をやっている人たちがいなくなってしまって、そこの復権運動をしていると。で、ドイツ、オーストリアでもこういう人がいるということが分かって、学ぶべきものというのが、何か違うところにあるんじゃないか、ということがあったというところになります。

*守ることで補助金がもらえる?

このようなところで、ドイツ、オーストリアのところをそれなりに説明してきたわけですけれども、ちょっと残念なこともありまして、ドイツ、オーストリアに僕が期待していたというところが一つあったんですね。あったのはこのFFPJで出会ってから、EUの政策が国と別に補助制度とかがあるというようなことがあって、EUは環境とかに対してすごく補助をしてくれたりするというのがあると聞いていました。ブドウ畑かなんかで、ちょっとごめんなさい。関根さんが補ってくれると思うんですけど、ブドウ畑で鳥かな、小麦畑で小鹿かな、何かそこを見つけると、だいたい繁殖したりしているところだから、繁殖して子どもを作ったりしているところを見つけたら、補助を受けられるとかいう、本当に生産する食物や木材とか、そういったものを生産する現場の中でも何かを守ることで補助をされるという、すごくいいものがあるというふうに聞いていたので、そういうのを色んな質問をしてきたんですけども、たしかにそれはあったんです。300年か400年ぐらいかな、の大きな太い木があって、そこを残しているだけでお金をもらえるというんで、メチャクチャいいですね、やっぱりそういうのEUすごいですねって言ったんですけど、それがですね、日本円にすると数百円だったんですよ。

だから、制度としてあるし、制度として作った人の思いはあるんだけれども、やっている側としては、もらっているのはありがたいんだけど、自分たちの所得を保障するほどにはならないと。当たり前と言えば、当たり前だと思うんですけど、そういう補助の中でも自分たちの所得を保障する制度とか補助というものと、何か大事にしようねっていうメッセージに近いものを出す補助制度というものが、何か2つあるのかなっていうのが、期待したけれども、そこまでではなかったけれども、そうだよなという合点がいったことが分かったということになります。

*世直し運動のネットワークとして

ちょっと時間があるので。これは自伐型林業の活動をずぅーと見てくれている愛媛大学の名誉教授の方が言ってくれたものになります。自伐型林業運動は、世直し運動という面を強く持っている。これは災害を引き起こすような林業をするのでなくてとかですね、過疎地をどうにかしようという、そういった世直し。世直しというか大規模化ですね、大規模とか生産性、効率性を求め続けるのはよくないんじゃないかという形で開発して組み立てるのが自伐型林業という施業となります。

「大きいことはいいことだ」「速いことはいいことだ」といった近代的価値観に強い疑問を持っているという点で、ここにいるメンバーの中にもいますけれども、40代とか30代、子育て世代というのが多くいるという点では、少し価値観としては違っているのかもしれないということですね。

林業を産業としてだけ見るのではなく、地域や環境、公益を強く意識し、副業を大切にするというところです。自伐型林業をやっている人もですね、農業というのもありますが、農業では食っていけないというところもあってですね、観光業とか、あとはITとか、本当に様々なメディアデザイナーをやったりだとか、あとはどういう人がいるかな、地域活動を一生懸命やっている人とかもいるんですけれども、そういう60年代70年代とかのサラリーマン時代からまた違う価値を持った形での林業の参入が入っています。

自分で試行錯誤しながら会得していくということで、まだ開発されて間もないということもありますけれども、やっぱりドイツの山と向き合ってというふうにあったように、何か自分で考える、考えて試してみるというトライアンドエラーを繰り返す林業をしていると。それだけにやはり、横のネットワークというものがなければ、存続できるか分からないというところでは、ネットワークを大事にするということで、この自伐型林業推進協会があるということになっております。

今、自伐型林業は70ぐらいの自治体、国の方では、少し自伐のことを意識してくれてきているぐらいですけれども、今、林業者がいなくなり、さらに森林組合というものが作業班を持って林業をするようになった今、山主さんや新しく林業をする人たちをつなぎとめたり、技術の伝承をしたりしているというところでは、この自伐型林業の形を何か広域的にネットワークを組むという役割がますます時代的には出てきたかなと思って、僕もドイツでもオーストリアでも森林組合の仕組みとか、そういったところを学んできたところですので、ぜひ本も復習がてら見てもらったり、あとは自伐協の会員になったり、FFPJでまた、企画してくださいっていうのを言ってくれたらいいなと思っています。以上で50分、終わりになります。