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持続可能な未来へ【家族農林漁業マガジン第1号】

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 新しい年度になりましたが、新型コロナウイルスの感染が各地で拡大しています。私たちの生活はもとより、農林水産業にも大きな影響が出ています。皆様も対応に追われていることと思いますが、どうか引き続き体調管理にお気をつけてお過ごしください。
 たいへんな時期ではありますが、FFPJの活動に関わるお知らせをお届けいたします。

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)とは

 国連の呼びかけに呼応して、2019年6月に設立した市民団体です。国連「家族農業の10年」の行動計画を普及・啓発するため、国内における家族農林漁業を中心とした食料・農業・農村関連政策を提言し、国際社会が目指す「持続可能な社会の実現」に寄与する活動を行なっています。(FFPJはFamily Farming Platform Japanの略です)

メニューはコチラです。

  1. 2020年版「新しい食料・農業・農村基本計画」
  2. FFPJの活動報告
    (1)国会議員との懇談会
    (2)院内集会
  3. イベント中止・延期のお知らせ
  4. 国連「家族農業の10年」の行動計画に関する会員アンケート調査について

1. 2020年版「新しい食料・農業・農村基本計画」

 2020年3月31日に第5期「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定されました。今後10年間の農政の指針となるもので、林業、水産業の施策にも影響を与えます。
 今回の基本計画の特徴は、従来の路線である「担い手の重点支援」「輸出促進」「スマート農業」等が中心ですが、「中小・家族農家など多様な経営」の営農継続を重視するとも述べています。不十分ながらFFPJの政策提言が一定程度反映されたかたちです。
 また、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会が同じく3月31日に江藤農相に答申した「新たな酪農肉用牛近代化基本方針案」でも、中小規模の家族経営等が規模拡大をしなくても、生産性向上に取り組む場合は支援する方針を明記しました。
 まだまだ課題は山積していますが、FFPJ会員の皆様には新基本計画のパブリックコメントにご協力頂き、本当にありがとうございました。改めてお礼を申し上げるとともに、今後も引き続きご協力をよろしくお願い致します。

2. 活動の報告

(1)国会議員との懇談会

 2月21日、国会議員会館内で、「令和2年食料・農業・農村基本計画に対する提言についての各党との意見交換会」が開催されました。

 食料・農業・農村基本計画は5年ごとに見直され、食料自給率目標はじめ、今後10年間の農政の基本計画を策定します。今回の各党との意見交換会は、「持続可能な農業を創る会」(座長:蔦谷栄一、農的社会デザイン研究所・代表)が呼びかけ、基本計画に対する提言を出した生産者団体、消費者団体、市民団体が参加し、各党との意見交換を行いました。
 主催あいさつした下山久信氏(呼びかけ人、さんぶ野菜ネットワーク代表)は、同日午前中開催の食料・農業・農村政策審議会企画部会の傍聴も踏まえ、「本日の企画部会に基本計画骨子案が出されたが、耕作面積、食料自給率、基幹的農業従事者の減少・高齢化、気候危機など持続可能性に対する危機感がなさすぎる」と批判しました。
 家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)からは池上甲一常務理事が報告。まずFFPJは国連「家族農業の10年」に対応して2019年6月に発足し、2020年1月末段階で会員数が23団体50名(合計約6万人)に達していることを紹介したのち、家族農業だけでなく、家族林業、家族漁業も対象であることを強調しました。次に兵庫県丹波市の実態を踏まえ、有畜複合経営で農家民泊や食農教育など多角的な活動をしている「小農の鑑」が苦労していること、イノシシ・シカの被害が意欲を削いでいる大きな原因であること、学校給食に地元有機農産物の導入を目指す子育て世代の希望にこたえられるような政策が求められていることを紹介したのち、家族農林漁業が果たしている重要な役割に鑑みて基本計画に位置づけること、気候変動対応としても重要なアグロエコロジーの普及、全世代を対象とした食育を社会インフラとして提供し、学校や病院などの給食を無償化し、地元調達率や有機農産物調達率を義務化することなどを提言しました。
 今回の意見交換会には、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、無所属議員などの野党議員に加えて、自民党、公明党の与党議員の参加もありました。また、参加団体も、農業法人協会、有機農業団体や環境NGO、消費者団体と幅広く参加しており、このつながりを「家族農業の10年」の推進へとつなげていければと思います。

(2)院内集会

1月31日、FFPJは政府が3月に第5期「食料・農業・農村基本計画」を決定するのを前に、記者会見及び院内集会を開催し、「第5期『食料・農業・農村基本計画』への提言」を発表しました。会員に意見を募り、ワークショップを行なって提言書として取りまとめたものです(提言の詳細はFFPJウェブサイトでご覧いただけます)。
 なお提言の発表に先立ち、村上代表らが農林水産省を訪問し、山口靖大臣官房政策課長に提言書を手渡すとともに、次期基本計画に向けた考え方について、意見交換を行ないました。

村上真平(FFPJ代表)の挨拶

 去年の6月14日に家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンを結成しました。今回の提言は、プラットフォームを結成した目的と合致しております。それは、本当の意味での持続可能な社会を、自分たちのためにも、子どもたちのためにもつくらなければならないということです。
 持続可能という言葉を使うときに、いつも引っ掛かるものがあります。それは、持続可能の意味はずっと続くと言うこと。人間の生命が続いて行く。農業も続いていく。だから持続可能ではないということは、続かないということです。ということは私たちが持続可能なという言葉を使うとき、現在のこの体制は持続可能ではないということを本当に理解しているのか。これが最初の問いになると思います。
 持続可能な発展という言葉が使われたのは1970年代、ローマクラブの発表です。これからは石油がなくなり、いろんな資源がなくなっていく中で、このような発展の仕方でいいのかということが言われました。簡単に言うならば、それまでの発展というのは、経済発展ひとつを言っていた。経済発展さえすれば、みんな豊かになれる。特に日本はこの考えのもとに経済成長をしてきました。

しかしその中で出てきた問題は何か。公害です。それによって水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくのような公害病も出ました。公害という言葉も問題です。公の害、つまり発展する過程の中で生まれてしまった仕方のない害という意味になります。そこではっきりしたことは、経済発展を至上目的とするならば環境を壊す。そして人間まで影響を受ける。それによって幸せどころか不幸せになる人たちが増えていくということです。
 それはおかしいと言われ出して、2015年にSDGs、持続可能な発展という目標が出てきました。本来なら持続可能な社会と言うべきですけれども、それは17項目に亘って、169もの細かいものに分かれていて、多くの企業が社会的責任として、あれとこれをやりますみたいなことになっている。それ自体が悪いとは思わないけれども、その中で忘れ去られたものがある。それは持続可能というものを本気で考えるならば最低限、私たちは日々の行動、日々の経済活動、日々の生き方の中で考えなければならないことがある。1つは環境的に健全であるかどうか。これ以上環境を壊しては、生きる社会とは言えない。そして社会的に公正であるかどうか。いまの社会は、世界で4人の大富豪が35億以上の貧しいと言われる半分の人たちの全財産より多く持っていると言われている。5年前は60何人だったし、その前は百何人でした。こういう経済発展をやっていけば、人びとが豊かになるということは完全にイルージョン、幻想である。そういうことがいま色々な形で目の前に表れてきたときに、本当に持続可能な社会を自分たちのため、子どもたちのためにつくれるのかということです。
 国連がはっきり言ったことは、「家族農業の10年」というものがなければ絶対ダメだと。その理由は簡単です。人間が生きるために必要な環境を真剣に考えてやっている人、特に伝統的な農業をしている人たちは、環境を守り、多様性を守り、慎ましい生き方をしながら、なおかつ少ない土地で企業がやっている農業の2倍、3倍の生産を上げている。そういうことが明らかになってきた。そういう人たちが生きていける社会にならない限り、持続可能な社会はあり得ない。そしていま国連は、機械化・ロボット化し、ITを使って先端を行く農業がこれからの農業の方向性だとは言っていません。そこが一番のポイントだと思います。
 日本の場合は相変わらず大きいところがたくさん儲ければ、下々まで潤うという考え方を捨てきれず、農業でもそれは変わっていません。それに対して何も言わなかったらどうなるか。やはりそのことを真剣に言っていかないと何も変わらないだろうということで、ささやかながら今回、農水省が提示した枠組みに沿って、私たちの考えを示させていただきました。

3. イベント中止・延期のお知らせ

 新型コロナウイルス感染症に罹患された皆様、感染拡大により生活に影響を受けられた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。
 多くの催しの中止や延期が発表される中、FFPJにおいても、当初5月開催をめざしていた総会の延期を余儀なくされております。今後の状況をみつつ、東京もしくは名古屋・大阪などで開催し、同時にパネル討論会を行ない、「10年先を見た前向きな話」を皆さんと一緒に考える機会を持ちたいと考えております。決定次第、ウェブサイトなどでお知らせ申し上げます。

4. 国連「家族農業の10年」の行動計画に関する会員アンケート調査について

 国連「家族農業の10年」に呼応した活動を行なっていくにあたり、FFPJでは世界の行動計画(グローバル・アクション・プラン:GAP)の7つの柱(政策、若者、女性、農林漁業組織、レジリエンス、気候変動、多面的機能・多就業)を踏まえて、国内の行動計画(ナショナルアクションプラン:NAP)として、具体的な目標、期限、行動、成果を明記して、政策提言を行なうことを目指しています。
 つきましては、近く会員の皆さまに行動計画策定のためのアンケートを実施する予定です。この行動計画は持続可能な社会を実現するために、私たちが活動していく骨格を成すものです。何卒ご協力をお願い申し上げます。

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)
発行責任者:川島 卓
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11(社会医学研究会館2F)
公式サイト https://www.ffpj.org/
メールアドレス info@ffpj.org
電話 03-5966-2224