水田の多面的機能の喪失、生物多様性の減少、農薬や化学肥料の使用の増大などが懸念される節水型乾田直播に関して、2026年2月24日、衆議院第1議員会館大会議室とオンライン併用で院内集会が開催されました。主催は、節水型乾田直播問題を考える実行委員会。院内集会の中での、FFPJ常務理事の池上甲一さん(近畿大学名誉教授)の発言要旨を紹介します。(発言は農水省側の回答を受けてのもの)
「節水型」は普及段階になく、検証のための実証段階にあると言うことだが、検証の結果不適切であれば「節水型」の推奨はしないという理解で良いか。どのように、だれが検証するのか。そもそもの研究課題の選択について検証すべきだ。
1.節水型に偏る前のめりの姿勢は食料・農業・農村基本法の第4条多面的機能と第6条農村の振興、第47条中山間地域等の振興に反するものであり、慎重な検討と真摯な反省が必要だと考えている。
前提として、節水型推奨のうたい文句は「田植え不要・代掻き不要・湛水不要」の3大不要である。要らない要らないばかり。ついでに節水型に対応できない農家もいらない?農家がいなくなれば農水省も要らないと言われるのでは?言い過ぎですが、そういう方向に向かっているのではないかと懸念。
構造改革集中期間は農家減らしの加速
目的は田植作業と水管理作業の省略による労働時間の節約→労働生産性の向上→規模拡大 この認識に間違いはないか。
①実際にどれくらいの作業時間が減るのか。割合の大きいのは水管理。逆に除草時間、除草回数と除草剤利用量の増加 増える作業時間もコストアップもあるがどこにも触れられていない。
減った分の労働時間はどう活用するのか。活用に言及している事例報告はない
福利厚生? 労力軽減?重労働からの解放?ほとんど言及されていない。
そもそも労働時間の節約はなんのためか。小規模農家や農業労働者の場合、労働時間の削減は手取り収入の減少を意味する。
労働時間への支払いは家族労賃なので収入になる。
②育苗と田植え抜き、水管理抜きの「手抜き」が推奨 あたかも水路は不要とまで言いかねない論調 水路は必須ですよね? 地下水揚水は別の問題を生起 水の確認作業は必須 これもドローン?
水管理労働→「走り水」は数回必要 節水型ではむしろ細かい水管理が必要で、そのためには水利システムが機能していることが前提→中小農家や土地持ち非農家からなる農村コミュニティの重要性
少ない取水量だから、水路の水量も少なくて良いということにはならない 水位を維持する水量が必要。必要なときに必要な少量だけ水を入れれば良いというのは「ためにする」PR 実態を反映していない。水道ではない。
水道方式に変更するには膨大な投資 水路と田んぼは一体的で単なる「米の生産施設」ではないことを特に強調したい。
③小規模経営にはどの程度恩恵があるのか。節水型の推奨は規模拡大のためとすれば離農傾向を促進→地域社会の崩壊 いま述べた水利システムが維持できなくなる。中山間地域の事例では効果が限定的 本当の棚田では無理 棚田は不要?
棚田の多い中山間地域でも節水型を推進しようとするのか。無理だとするなら代わりの政策手段は?「中山間地域におけるきめ細かな整備」とは。
仰木の棚田(今森光彦さんの写真、里山、棚田)近辺に居住 この棚田を誰が作り守っているか 生み出しているのは米生産のほかに、景観や水涵養、洪水防止、生物多様性などお金にならない役割 ただの仕事が支えている
④労働生産性と経営全体としての採算性は直結しない、立場によって違う
資本生産性とエネルギー生産性の悪化
営農類型別、経営規模別経営試算はしているか
必要な機械・農業資材、基盤整備の見込み 初期投資は?
ケンブリッジローラー、ロータリーシーダーやドリルシーダー ドローン播種 除草剤スプレーヤー(ブームスプレイヤー)
⑤技術の安定性:未確立 連作障害、雑草、発芽、水分量 25年11月11日開催の「農業の未来を創造する議員連盟」総会のヒアリングで農水省は 「収量が極めて不安定な事例もある」と発言。NEWGREEN社も「失敗しやすい構造」があると自認。 新しい技術開発で解決できるのか?
終わりに、高市首相の施政方針演説では危機管理投資-令和の国土強靱化対策として事前防災・予防保全が強調されている。まさに中山間地域の田んぼを継承していくことはこの方針に適っている。
同じく危機管理投資-食料安全保障の確保のためには、節水型への過剰傾斜・過大な期待はかえって逆に作用する。
要するに、稲作をコストからしか見ていない。偏った視点で、稲作の全体性を見ようとしない点に強い懸念を抱く。