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【報告】FFPJパネルディスカッション:家族農業の地力を強化し、未来を切り拓く

· イベント

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)は2024年5月26日に第7回総会を開催しましたが、その前半に、「家族農業の地力を強化し、未来を切り拓く」と題してペネルディスカッションを行いました。パネリストは、玉山ともよさん(有機農家、兵庫県)、藏光俊輔さん(柑橘、梅農家、和歌山県)、斎藤博嗣さん(自然農法の実践者、茨城県、FFPJ常務理事)。司会は宇田篤弘さん(紀ノ川農協組合長、FFPJ常務理事)が務めました。冒頭とまとめの挨拶は、池上甲一さん(近畿大学名誉教授、FFPJ常務理事)が行いました。家族農業の「地力」という視点から、家族農業の強みをさらに磨き上げ、弱みを好機に変えて新しい発展の機会に結びつけるヒントについて考えました。以下は要旨になります(敬称略)。

 

パネルディスカッションのダイジェスト動画です。本編動画は要旨の下にあります。

 

冒頭挨拶

池上:皆さん、こんにちは。FFPJの常務理事で企画を担当しております池上でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。今回のパネルディスカッションではですね、家族農業の地力ということに注目いたしました。よく家族農業の強みとか、良さと言われるときに、家族農業のレジリエンスという表現が使われます。いろんな意味合いで使われるんですけれども、柔軟性とか強靭さとかいうような意味で、あるいは回復力ですかね。そういう意味合いで使われることが多いんですけれども、いま一つピンとはきません。それで、それを地力というふうな形で捉え直してみると、もう少し分かりやすくなるかなというふうに考えました。その地力を発揮できているかどうか。その地力を発揮するための条件ですね、家族農業の抱えている強みとか弱さというようなことを、少しざっくばらんに議論し合ってみたらどうかなというふうに考えた次第です。これは、一つは家族農業ということを考えているときに、その強み、それから弱みという内部の問題と、それから家族農業にとってどういうふうなチャンスがあるのか、良い機会があるのかという側面とそれから逆風ですね、脅威になるようなこと。今申し上げた内部での強みと弱み、それから外部条件としての脅威とそれから追い風になる機会ですね。これは経営学の用語でSWOTというふうに言いますが、SWOT分析をちょっと応用してみたら、どうかなというのが今回の趣旨でございます。

パネルディスカッション

宇田:さっそくですけども、パネルディスカッションの方を進めていきたいと思います。今日は先ほどありましたように、3名のパネリストの方が参加していただいています。兵庫県の玉山さん、それから和歌山県の「藏光農園」の藏光さん、それから一反百姓「じねん道」の斎藤さん、3名の方がパネリストで参加していただいています。どうぞよろしくお願いします。私は司会進行をさせていただきます和歌山県の紀ノ川農協の組合長で、FFPJの常務理事をしています。どうぞよろしくお願いします。また参加されている方で、質問や意見があるかとは思うのですけれども、チャットの方でよろしくお願いします。時間があれば、また内容によってまた対応させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。まず最初にですね、自己紹介の方をお願いしたいと思います。最初に兵庫県の有機農家の玉山様の方からよろしくお願いします。

玉山:はい、玉山ともよと申します。画面共有の方をさせていただきます。私は玉山と申します。夫と「のり・たま農園」という小さな農園を営んでおります。夫が94年から大阪の箕面から兵庫県の丹波篠山に移り住みまして、それで今もうだいぶなるんですけれども、だいたい1.2㌶くらい、40から50種類くらいの野菜を耕作してまして、彼は昨年から農会長を集落でやっています。

野菜セットをおもに直接、宅配便で消費者の方に販売していまして、だいたい1セット2,500円から3,500円くらいで、お客さんは隔週が多いんですけれども、延べ月100軒くらい送っています。私たちはブランド化だったり、有機野菜だからといって、高い値段で売らないようにしている。そこそこのお手頃な価格で儲けないようにしているという、それは何でかっていうと、私たちも子育て世代なんですけれども、一番、お金がないという世代に食べてほしい。子どもに安全で美味しい野菜を食べてほしいというふうに思っています。

今もう、子どもたちも大きくなって、これはつい数日前に撮った長女とキヌサヤを収穫していまして、これが一応、農園主、夫で、私たちのところは黒豆が特産品なので、黒豆の枝豆とエンドウ畑の間にカエルとか、そういうのに毎日、オハヨウと言う、そういうようないわゆる零細な農園を営んでいます。

宇田:ありがとうございます。続いて和歌山県の藏光農園の蔵光さんお願いします。

藏光:和歌山県で農業をしてます藏光農園と申します。よろしくお願いします。当園ですが、私、俊輔と妻の綾子の2人で農業をしております。妻は最近、獣害の酷さに業を煮やして、猟銃の免許を取り、猟にも行ったりしております。

作っている農産物ですが和歌山県特産の収穫間近の南高梅と、いろんな柑橘類を育てています。大きなくくりでは果樹の農家です。表示されているスライドの左の写真の南高梅が赤かったり黄色かったりするんですけれども、皆さん、もともと緑のイメージが梅にあるかと思うんですけれども、梅は完熟するとこういう色になってきます。

藏光農園の特徴は、レストランとの取り引きがとても多いです。僕自身がレストランに使っていただくことで、自分の農作物がこんなに変わるのか、というのがすごく楽しくて、レストランとたくさん取り引きをしていますし、レストランのシェフも畑によく来てくれます。

2つ目の特徴なんですけれども、最近、小林製薬さんのサプリで話題になっていますけど、機能性表示商品ですね。ミカンを個人で初めて機能性表示食品を取るというような、ちょっと個人の農家ではやりにくいことにもチャレンジしたりしております。

次が田舎に住んでますので、地域づくり的なことは割とたくさんやってます。地域の子どもに公民館で寺子屋活動として数学を教えたりですとか、高校生に農育バイトをやったりとか、「耕作放棄されそうな農地を新規就農者のために中間保持する活動を吉本興業の芸人の「わんだーらんど」さんとやったりとか、そういうこともいろいろしております。

あとは、物々交換をたくさんしていて、全国で30軒以上物々交換をしているかなと思います。牛乳とかチーズとか以外はだいたい物々交換で手に入るかなという感じで、自分の作ったものをいろんな人と交換して、それで全国に物々交換仲間を増やしているという感じでやっております。慌ててスライドを作ったので、いろいろ言えてないことがあるかもしれないですけれども、今日はよろしくお願いします。

宇田:どうもありがとうございます。続いて茨城県の斎藤さんですね、よろしくお願いします。

斎藤:斎藤博嗣です、よろしくお願いいたします。私は2005年に東京から茨城県の農村へ夫婦で移住して新規就農しました。「じねん道」という屋号で夫婦と子ども2人、家族4人で、小さな家族農園、一反百姓をして20年になります。じねん道は、小さな田畑山林に手足を使って種を蒔き、失われつつある地球環境を回復し、次の世代に引継ぐ、アグロエコロジー、地球で生きるための農、地球を生かす農、福岡正信・自然農法で「緑の百姓哲学」を実践しています。

私たちにとって百姓は、換金農作物を作るだけの農業だけではなく、生き方のベース、基本・基盤に農を置く、農的という視点を生かした、1日24時間を自分たちの手でマネジメントする、「農的ワークライフバランス」を実現する職業、暮らし方です。老若男女共同参画家庭円満農業、子育てと家庭自給生活の両立は、私たち夫婦に、親として生きる力を授けてくれます。自然の力をいただいて、私たちは生きているという原点に立ち返り、自然と深くつながることができる、農的暮らしを実践中です。

これらの写真は、子どもたちとの暮らしですが、子どもたちは五感すべてを研ぎ澄ませる農を通じて、身の丈を知り、自らを治め、地に従うことで自制心を養い、他者との比較ではない、自然の中で自分自身を育てる「じねん童」を身につけます。じねん童というのは「童(ワラベ)」の方の子どもたちですね。彼女・彼たちも今、高校2年生と中学2年生なんで、この写真はもうかなり前の写真になりますけども・・・。自然は無教育にして最大の教育者・・・、今の時代はあまりにもモノが増え過ぎて、便利になり過ぎ、欲望に従って世の中が動いていますが、本当に大切なことは目に見えません。根を深く張り、枝葉を広げ、地球と地域という故郷を未来の世代につなぐ想いで、小さな家族農業をしています。このスライドは庭で食べる我が家の食卓ですね。 

私たちは自家採種を百種類くらいしていますが、2011年3月11日福島第一原発事故を通じて、すべての解決は土に向かうこと、種を蒔くことだという気持ちで・・・、家族みんなで自家採種したタネ『じねん道のたね』(固定種&在来種の種子)の販売を通して、地球市民皆農『みんな一粒百姓にな~れ! 生きる自給率「1人1年1%Up」からはじめよう!』を現在も展開中です。本屋さんのMARUZEN&ジュンク堂書店や農文協・農業書センターとか、農産物を出荷している直売所、TALK、講演、イベントなどいろいろなところで販売してます。原発事故以来、現在まで13年くらいずっとやっています。

それから販売と同時に、このスライドはFFPJ以前、、小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン(Small and Family Farming Network Japan: SFFNJ)という国連の2014年「国際家族農業年」および「家族農業の10年」のサポーター組織に私も設立メンバーとして所属していたんですが、その団体の農民代表として、スペイン・バスク地方のビルバオでの国際会議、第6回世界家族農業会議「家族農業生産者の生活向上のための10年」に参加させていただいた際に、会場の入り口などでも、各国の農民や関係者の方とかにもプレゼントし、農民として抱える問題や同じ価値を共有していくなど、販売以外にもいろいろなところで地球市民皆農「すべての人に農を!」「自らタネを蒔く人に!」として配ったりもしています。

一反百姓とは、これはちょっと2時間位かかりちょっと長くなるので、簡潔にお話しますが、私たちの先生、自然農法の創始者、福岡正信さんの提唱した「一反百姓」。著書の『緑の哲学 農業革命論 自然農法 一反百姓のすすめ』(春秋社)に詳しく書かれていますが、「一家族の生命をささえる糧を得るには、一反でよい。最低限度の農耕によって、最小限度の食糧を得て、つましく生きる生活が・・・人間にとって最高の精神生活。

一反百姓は、農業の源流の姿、無の経済学のもとで自然農法を実践、貨幣経済からの脱出、を目ざしているものである。国民皆農の小農を柱とし、一反百姓はこのためのものである。

もし全国民が本当に一反百姓の生活に満足できるならば、その実現は不可能なことではない。」に由来しています。

本当に一反で暮らせるんですかって聞かれますが、20年前に新規就農した時は、農地法三条で農地取得の際の要件の一つであった下限面積、「5反」を借りて耕作をはじめましたが、田畑の面積は、子どもが生まれたり、学校に通ったり、親の介護があったり、家族それぞれの年齢、ライフプラン:経済的・精神的・身体的な成長や成熟に応じて増減させています。今までで一番大きく借りていた時期は10反=1町で、現在は6反くらい耕作していますが、私も今年50歳になるので、どんどん1反に減らす方向で、終活農しています(笑)私たちだけが、一反百姓をやればいいということではなくて、1人ひとりが一反の田畑を持って緑と土に帰ることがあらゆる問題の解決につながることを願って取り組んでおります。2019年より現在は、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(Family Farming Platform Japan: FFPJ)の常務理事もしております。よろしくお願いいたします。

宇田:ありがとうございます。そしたらですね、今日は先ほど、池上先生の方から、テーマについて説明ありました。まず最初の質問に入るわけですけども、レジリエンス、まあ地力ということで、皆さんの周りの家族農業に地力があるかどうかということをお尋ねしたいんですが、その理由とともにお答えいただければと思うんですが、先ほどからの話を聞いてて、藏光さんの方は地域づくりということで言われてましたけども、藏光さん、この点についてどうでしょうか。

藏光:最初にこの地力というお話をいただいて、何があるのかなというのを考えたんですけども、最近の身の回りで言うと、一世代飛んでそれがあるのかなという気がしてまして、お爺ちゃんのやってたことをお孫さんがやるみたいな感じが周りにあるなと感じてます。もうちょっと50、60代くらいの世代の人はたぶん、あんまり親から直接、農業を受け継ぐということはなかったのかなと思うんですけども、お孫さんたちがお爺さん良いところだけをたぶん、見られていたので農業を継ぎ、、親の世代というのは結構、お爺さんの大変なところも見ていて継がなかったいうのを、この話をいただいたときに思いました。そうやってつながっていくのかなという感じです。

宇田:お爺さんがやってたこと、農業ですけど、地力という点ではあるということですね。

藏光:そうですね。お孫さんたちの世代にそう見えているから継いでいるんだと思います。

宇田:分かりました。斎藤さんも玉山さんも移住されているわけですよね。かなり長くなってはきていると思うんですけども、地域とのかかわりというのが、ずっとということではないとは思うんですけども、まず玉山さんの方からですね、そういう地域の中に地力があるかどうかですね、どんなふうに映っているかについてお願いします。

玉山:地力という意味ではポテンシャルはあると思うんですけれども、今やはり私の周りを見ても、もう現役で農業をされているのは70代、80代ということで、60代でもないんですよね。そうすると、これがもういつまで持つのかな?と、本当に危いなというふうに思っていまして、やはり村の中でも私の住んでいるところは集落で44戸あるんですけども、中山間地で、どんどんどんどん耕作放棄地が増えているような状況で、もうそれを村の方でも維持するのもすごく大変になっているという意味では、やはりこの危機的な状況にもっとまともに向き合うべきなんじゃないかなというふうに思っています。

宇田:分かりました。農水省の報告なんか聞いてても、この20年間ですね、これでだいたい4分の1に基幹的農業従事者が少なくなるというようなことが言われていますよね。本当にいろんなところでそんなことが起こっているというふうに思います。次に斎藤さん、どうでしょう。

斎藤:私の周りも過疎化で後継者がいないなど、農業をやめたり、農村から出て行く若者が増え、家族農業や農村の持つ地力の全体性が急激に低下しているという印象を受けます。農業を続けている方でも、経営者としての企業的農業であったり、補助金による誘導、規模拡大のための大型機械導入、それに伴う人出をかけない、あるいは外国人労働によるモノカルチャー栽培、輸出とかITによる販路拡大、いわゆる攻めの農業を迫られるなど、農作物の現金化に追われる農業をされている方々が多いと思います。

また普段は会社や役場勤めの兼業で、米だけはゴールデンウィークなどの休暇を利用して作ってきたけども、お米の値段の下落で耕作をやめたり、野良に出て耕作しているお爺ちゃんとかお婆ちゃんとかの作った野菜も、子や孫たちはスーパーで買った方が早いって言って食べないとか・・・。さらに周辺で多いのは、太陽光パネルや土木・土建業者のヤード化、倉庫にするための農地や山林買収などで、私の所にも突然、手紙がきて「この土地売りませんか、貸しませんか」とか来るんです。そういった誘惑の中で土地持ち非農家の方が逆に農地を手放さない、貸さないとか、農地、耕作放棄地といってもギャップがあります。いずれにしても、急激に家族農業の地力は衰えていると感じます。

一方、必ずしも経済合理性のみを重視して農業をするわけではなく、市場原理の変動によく耐えて、家族農業の地力を保っている農家も少人数ですが中にはいます。後継者がいて、大学の農学部生としてに農場研修に来ていた女性と結婚し、小さな孫も田畑に一緒に連れていたりして、自分たちの農業の意義や普遍性、生活に確信を持っていて、多忙な農作業の中にも笑顔が生まれる家族農業をされ、強靭な地力を維持して、仲良く暮らしている方々もいらっしゃいます。

宇田:ありがとうございます。先ほど、藏光さんの自己紹介のときには、地域づくりということで、かなり多様なことをされているのがちょこっとだけ見えたんですが、玉山さんのとこもそう言われていたように、かなり厳しいというようなことですよね。地力が衰えていっているということなんですけれども、何かそういう中でもその地域の中で何とかしていこうみたいな動きというのはないんでしょうか。玉山さん、どうですか。

玉山:何とかしていこうというレベルじゃないですよね。やっぱりもう本当にそんなこと言っている場合なのかなというふうに思います。やっぱり最初からもうあんまりいいことじゃないかもしれないんですけども、家族農業っていうか、農的暮らしを始めてから、私たちの周りで北近畿百姓出会いの会というのを20年くらい前かな、やってたんですよね。そのときからすごく仲いい、ウチのように少量多品種を作っている野菜農家のお父さんが自殺されて、それ以来、私はやっぱり新規就農の人に、農業をやったらいいよというのを、なかなか勧めにくい状況になってしまって、やっぱりそういういいこともあるけれども、厳しい状況もある。特に生活していくのに苦しい状況があるというのを、やっぱりちゃんと向き合ってやっていくっていう、そういう中からホンマの地力というのが生まれるんじゃないかなというふうに思っています。

宇田:藏光さん、先ほどは時間ないので、簡単な紹介だけしていただいたんですけども、藏光さんはそういう地域とのかかわりをなぜやっているのかとか、もう少しやっている中身をお話ししていただければなあと思うんですけれども。

藏光:そうですね。稲作に象徴されると思うんですが、農家が減ってくると、いわゆる水の管理とか農道の整備とか溜め池の維持とか、そういう皆でやる作業がすごく大変になってくるのを実感していて、自分の畑を守ろうというのもあるんですけど、昔からある村というかコミュニティというか、そういうインフラも含めて守れる程度の人数とか規模を維持しとく必要があるなというのが僕の基本的な考えなんですよ。なので、それがもう維持できなくないレベルになったらしんどいなと思って、そうならないように手を打っているという感じですね。もともと行政も「農家が減っても、残った農家に規模拡大してもらって何とかしよう」というふうな流れだったんですけども、それだけでは既存の農家も規模拡大には限界があるよということで、もっと外からの新規就農の人を入れていって、一定の農家数を維持していきましょうということを行政とある程度認識が一致できたというところまできています。

宇田:最初、藏光さんにお会いしたときは、買い物する場所がなくなってしまうからって言ってましたよね。

藏光:そうですね、病院とか、そういうのもあります。

宇田:成り立たなくなりますものね。斎藤さんはどうでしょう。その地域の中で取り組まれているようなこととかご紹介あればお願いします。

斎藤:私の住む阿見町は人口減少社会の時代にあって、年々人口が増え5万人を超え、このまま推移すると国勢調査の結果で、令和初の町から市になる地域です。その背景は、農村に人口が増えていると言いたい所ですが、全然そうではなく、都市部の住宅地造成や高速道路のインターチェンジの開通であったり、そういう開発によって人口が増えているのであって、例にもれず農村は人口が減っている状態にあります。

阿見町の町長の呼びかけで、町の教育委員会の生涯学習課が主催で、地域の未来について一緒に考える、将来の地域リーダーを育成するための「あみ未来塾」というのが開催されて、私も参加して、一期生としてこの3月に卒塾しました。その未来塾のの受講生は、同じ阿見町でも、都市部に住む人と農村部に住む人がいるわけですが、私が未来塾に通った理由は、やはり農村だけで地域環境を維持するのはもはや本当に厳しいので、よく都市農村交流といいますが、東京からであったり、大阪からであったり、大都市からの人々と交流していくだけではなく、私も東京からの移住者なんですけども、もう少し近い、町の中の都市部の人たちともっと農作業であったり、農村部の持つ価値を共有していくこと。援農などにも車で15分位で来れる距離の人たちなので、人生の100年時代で、働き方・暮らし方のライフコースがすごく問われている時代の中で、ただ働くだけじゃなくて農的なものを取り入れていく「農的ワークライフバランス」が見直されていくのは必然だと考えます。市民農園であったり、一反百姓であったり、さまざまな人たちともう少し身近な距離で一緒に価値を共有していくアクションをしています。

いろいろな農村に対するイメージというのがあり、「農業は本当に大変ですね」「余った農産物をうまく活かして」くらいしか言われなくて、農村に対する残念な認識というのをまざまざと・・・。同じ阿見町に住む人でも、これだけの価値観というか、東京というよりも近場で地元の人たちでもかなりの乖離があり、その中で具体的にその差を少しずつ埋めていくことを少しずつですが取り組んでいます。

宇田:本当にそうですよね。私の住んでいる地域でもやっぱりそんな感じで、あと5年くらいで半分くらいになるんやないかなということで、今、斎藤さんが言われたみたいに、都市部から来ていただいて、関係する人をどれだけ増やすかというのが大事なのかなと思うんですけども、玉山さんのところを聞いていると、かなり大変だなという感じがするんですけども、そういうふうなボックスで送られているような方が交流に来るっていうところはどうなんでしょうか。

玉山:ウチはもともと夫が大阪外大、今は大阪大学になってしまったその時代、大学を卒業したときに、すごくお世話になった先生が、神前先生という先生がおられまして、毎年、学生さんを連れて田植えとか稲刈りとかに来てもらってたりとか、常日頃から誰彼なく来てたりとかした時代が結構、あったんですけれども、あとはWWOOFをやっている人が近くにいたりとかして、外国からの人も結構、来られたりとかも、そういう交流というのは、私はもう基本的には大事にしています。

宇田:先ほど池上先生からチャットでコメントがありました。直接お話ください。

池上:分かりました。1つは今、人の問題がポイントになっているわけだと思うんですけれども、その点で藏光さんが、お孫さんが結構、引き継いでいるというお話で、これはちょっとこれまでの家族農業で考えるときの親から子というところを超えているので、そういう点で少し新しいなと思うんですが、だいたい同居はあまりされてないですよね。そうするとお孫さんがどういうところでそのお爺さんの農業の良さ、後を継いでみようかなっていうふうに思ったのかなというのが知りたいなと思いまして。それでそういうところを逆に意図的にね、作っていけるかどうか、その新しい新規参入者を探すというのはいろんな面で難しい面もありますから、手始めに、子どもはなかなか難しいとしたら、孫を人質にとは言わないけれど、孫に来てもらうというのは一つの手かもしれないなと思いました。で、同じことは、実際に後は継いではいないんだけれど、子どもたちの世代が、割合、近くに住んでいて、ちょこちょこ手伝いに来ていたりすると、それなりに農業が続いていけるかなと思うんですが、そのへんとの関係というのを皆さんに聞いてみたいんですけれども。以上です。

宇田:ありがとうございます。藏光さんがひょっとしたらお孫さんじゃないかと思うんですが。

藏光:いや、僕は違います。

宇田:藏光さんはUターンなんですよね。

藏光:そうですね。

宇田:そしたら藏光さんの方からお願いします。

藏光:そうですね、さっきもちょっと言ったんですけど、今のお孫さんはお爺さんとはたぶん一緒には住んでなくて、小学生の夏休みに行くというような感じなんじゃないかなと思います。そのレベルで、そこだけを切り取っているので、ものすごくいい印象があるんじゃないかなという気がします。またお爺ちゃんの方も孫が農業をやりたいと言ったときに、継いでくれるんだったら嬉しい気持ちががあって、最初に玉山さんがおっしゃった厳しい現実があるぞ、みたいなところはあんまりおっしゃらないんじゃないかなという気がしてますね。で、お父さん世代もたぶん昔だったら反対してたと思うんですけども、最近は、「お父さんはお父さんで、お爺ちゃんの農業は嫌で別の仕事をしてみたものの、これ絶対正解やから、こっちの方がいいよ」みたいなふうにも言い切れない、状況になっていているので、お孫さんの中で、ちっちゃい頃の思い出からの流れで、継いでみたいよっていう流れができているんじゃないかなと僕は思っています。

宇田:ありがとうございます。玉山さん、どうでしょうか。

玉山:私は都会から田舎の方に移り住んだ方なので、もともと地の方で農業っていうのは、専業はやはりほとんどおられないですよね。兼業でかろうじて週末に農業やって維持しているっていう中で、だから、そもそも同居してるおウチもいるけども、農業をやってるというのがなかなか少ないっていうか、子どもたちもべつに田舎に住んでいるから外遊びをたくさんしてるっていうわけじゃなくて、結構、やっぱりインドアでゲームをしてたりする子も多かったりとかで、なかなかちゃんと自然に触れ合えてなかったりする場合も多いちゃうんかなと思うんですよね。なので、その継承というのは、やっぱり外からの力をもっとたくさん入れないと、どないにもならへんのちゃうんかなというふうに思って、斎藤さんがおっしゃる一反百姓という自分の食べるもんを自分で自給するっていうことから、そもそもだいたい外食が多くて、食事を作るっていうことからやってなかったりとかっていうので、そこからの自給も含めて上げていくというのをやった上で、やっぱり危機ってこれから来ると思うんですよね。なので、そういうときに、ロシアの場合はダーチャってあるやないですか。自分のそういう食べる物を作るという、そういうのをやっぱり真剣に考えていくというようなところを、しかも楽しみながらっていうのが大事かなというふうに思います。

宇田:本当に危機というか、キャベツもちょっとびっくりするような値段が続いていたりとか、野菜が全体的に高くなったり、お米も去年、不作で値段が上がってきてということで、そういうのが本当に始まっているなというのを感じもしますね。斎藤さん、どうでしょう。

斎藤:私も玉山さんと同様な意見で、やっぱり今、食の問題は、農村とか農業だけの問題じゃないですね。一昨日、東京の四谷にある上智大学の授業「食・農から考えるグローバル・フードシステムと日本の未来」を生徒さんと一緒に受講してきたんですが、「アグロエコロジー」を知っている人?」などの質問に対してもなかなか手があがりません。農業・農村の人が減少している話ですが、そもそも日本だけでなく世界的にみても少子高齢化がはじまっている国や地域がたくさんあります。先ほどお話した「あみ未来塾」には、中学校の先生も参加されていましたが、中学3年生に「将来、阿見町に住み続けたいと思いますか」と139名にアンケートをしたら、「阿見町にはずっと住み続けられない」という回答が多数返ってきたんですね。ちなみにその中学校は農村部ではなく、人口増加している地域の都市部にある学校です。農村とか農業をしている地域じゃなくても、将来まで阿見町に住みたいですかと問われた時に、中学生たちは、「教育機関が少ない」「やりたい職業の職場がない」とかですね、いまだに都市への一極集中というのは止まらない現状。農業・農村とか云々じゃなくて、地方にそもそも住もうという人が、増えてきているとは思うんですけど・・・移住、地域おこし協力隊など、まだまだ少ない事例です。

玉山さんがおっしゃるとおり、食料危機もそうですけど、これからAIとか、人々の職業というのも減っていくという時代の中で、私は農業とか農村の持つポテンシャルが、人間性の回復も含めて、「もう農業しかない!」くらい、都市部の人であったり、多様な人たちがむしろ農業・農村の魅力を、もっともっと感じる人が増えることが、逆にスタンダードになってくるのじゃないかなと私の感覚だと思っているんですが。その辺りを具体的に、じゃあ農村や農民の地力というものはどういうものなのかというのを伝えていくのに、私は「カルティベイティブ・ラーニング(Cultivative Learning)」(自耕的・身体的で永続性のある農による学び)と言っているんですが、農作業をして一緒に種を蒔いたり、緑や土に近い感覚を共有することで伝えていきたいなと思っています。

宇田:ありがとうございます。そうですね、全体として人がだんだん少なくなっていって、農村にある地力が弱ってきているというふうなことが言えると思うんですけども、じゃあどうやって、今、斎藤さんが少しお話はされていたと思うんですが、高めていくためというか、どんな地力を高めていくのか、というところをですね、感じる部分、自分で考えているようなところもお話していただいたらと思うんですが、藏光さん、どうでしょうか。

藏光:地力を高めていくという事についての理解がふそくしているんですけれども、僕自身は農業の環境というのは良くなっていると思ってまして、というのも、インターネットの普及ですごく都市の方々とつながるのがものすごく容易になっているかなというのがあって、昔はなかなか直接、農業者の顔が見えなかったという問題があったんですけども、今は個人と個人とでもつながれるような時代になってきてるので、その意味で、農業はとてもやりやすくなっているんじゃないかなと思いますし、さっきの阿見町の話で、皆さん出て行きたいというふうにおっしゃっているということを伺って、まだそういう感じなんだなというのがちょっとびっくりしました。どちらかというと、関係人口ということばは、都市から田舎に来てもらうというイメージが強いと思うんですけども、僕はどっちかというと、農家も都市に行くということを同じくらいの頻度でやって農村に何か持って帰ってこないといけないんじゃないかなというふうに思っているので、自分自身も割と都会には出るようにしているんですけども、都会から一方的に来ていただくのではなくて、僕らの方も同じくらい出て行かないからたぶん、都市の方が良く見えちゃうのかなって思っています。ちょっと答えになっていないかもしれないです、ごめんなさい。

宇田:片方だけだと直流になってしまいますよね、交流じゃなくて。

藏光:そうですね、はい。

宇田:藏光さんは小さな農家で力の強い農家を自分のところに10人目標でしたよね。育てたいという、それが何か意味を取ってみたら地力を育てているんやないかなっていうふうに、人ですよね、コミュニティを作るということではないのかなと思うんですけども。そういうところはどうなんでしょうかね。

藏光:やっぱり、玉山さんもけっこうしんどい地区とおっしゃっているんですけど、それこそ自分が住んでいる地区も40軒くらいなんですが、そこに1人、新規就農者が入るだけで、ぜんぜん地域全体の活気っていうんですかね、そういうのがすごく出てくるなっていうのは、既に2人別々の地区にウチからの研修者が入っているんですけども、1人新規就農者が来ると、周りの農家も、新しい人が来たぞみたいになるし、その新しい人にウチのここの場所、やってくれよとか、この道具を貸してあげようかとか、そういうふうになったりして、かなり効果はあるかなと思ってるので、自分の地区にも来てほしいんですけど、自分の地区は何とか自分で頑張って、まず周りの地区を盛り上がっていけば自分も結果的に楽になるかなと思っているんで、13地区あるので、その13地区に1人ずつ新規就農者を入れていくというのが、僕の目標というか、今、頑張っているところです。

宇田:藏光さんから、インターネットを使って都市の方へもっと行かなあかんという話なんですけれども、斎藤さん、どうでしょうか。

斎藤:そうですね。東京の下町育ちで、東京の好きな場所もたくさんありますが、最近は東京に来ると、ウルトラマンではありませんがある程度時間が過ぎると(笑)、空気の澄んだ田舎に早く帰りたくなって・・・。先ほども少しお話しましたが、上智大学で全学共通科目「食と農と身体」の中で、私も授業を担当するのですが、授業タイトルは『地球市民皆農〜農から「善く生きる」〜』です。教育に対して私はアプローチしているんですね。それは大学なのか分からないですけど、やっぱり学校で教育、学習を受けている子どもたちの農業・農村に対するイメージというのは、かなり斜陽な遅れた地域だと・・・それだけで子どもたちは固定化した負のイメージを持つか分からないんですけども。

ただ最近では、高校では地理総合が必修科目になって、社会科の教科書自体も変わりつつあり、娘や息子の高校・中学の教科書を見たりすると、総合的に横断的に学習するという方向にはなりつつあるように感じます。FFPJの常務理事の方々も編著者を担当している本、「ほんとうのグローバリゼーションってなに?」「ほんとうのサステナビリティってなに?」「ほんとうのエコシステムってなに?」という3刊シリーズで、農林漁業を視点とした切り口で、クリティカル・シンキングといって、学習者自身が課題解決志向で自ら考える形式の本で、農文協さんから出版されていますので、ぜひご一読ください。

私は農村から都市にアクションすることもそうですが、学校や教育にアクセスして、もっと農の素晴らしさであったり、これも先ほどお話しましたがAIの台頭など、本当に先の見通せない時代に、もちろん現金収入という部分は必要だと思うんですけど、必ずしも現金収入だけが生きていく道ではなくて、そのバッファを持たせるっていうか、自分が会社を辞めちゃったり、心を病んじゃったり、不登校になったり、自分の生活を支える手段というものは、必ずしも会社や学校だけじゃないよって・・・もっと広く多様なソサエティとしての農業・農村がある。食べものを自給できれば、自分の生き方の何%かはクリアできるよとか、そういった「地力」を子どもたちに、農業を職業としての農業だけじゃなくて、自分の生活を維持したり、体を大切にしたり、ポストSDGsは、ウェルビーイング「身体的・精神的・社会的に良好な状態」とかも言われますけども、そういう人としての基本的な心と体の健康、生涯を生きていくためのライフプランとしても、農的生活はあるんだよということを・・・。子どもたちもすごく病んでいるというか、将来に対して物凄く不安を抱えているので、農の持つ役割や可能性を、都市や学校などには強く伝えていきたいなと思っています。

宇田:ありがとうございます。そうですね。弱ってきているんだけども、インターネットだったりとか、人ですよね。人の数だけの問題ではなくて、そういう人を育成していくということを、都市であったり田舎であったりということの中で、本来の地力をどう高めていくか。家族の農業というのはすごく大事だとは思うんですが、高めていこうということですね。そういうお話の流れになっていると思うんですけども、玉山さんのところは今の藏光さんとか斎藤さんのお話を聞いて、どうでしょうかね。

玉山:私のところに不動産屋じゃないんですけど、「農業をやりたいんですけども」というふうに来られる若いカップルとか、ときどきそういうお問い合わせをいただくんですけども、ただ家がなくて、貸せる農地というのはいっぱいあるよっていうふうに、周りで言われるんですけども、空き家もたくさんあるけれども、実際に空き家バンクとかも市の方でもやっていたりするんですけど、結局、それを最初に新規就農なりスタートするというときに、住むところがなかなかないというようなことはよく聞くんですよね。そういうせっかくやりたいという人がここに住んでくれたらいいのになあっていうようなことがあっても、なかなかそういうことをご紹介できなかったりとかっていうのは、やっぱりすごく歯がゆいですし、私もすごく自給というのは大事だと思っていて、そういった自給を可能にするっていうか、いわゆる多様な農業者ということだと思うんですけども、その多様な農業者に対しての支援というのは本当にないんですよね。

で、例えば認定農業者であるとか、地域農業計画とか人・農地プランとか、そういう認定されたりとか、青色申告をしてなきゃいけないとか、そういったすごくハードルが高くて、そういった多様な農業者に対する支援があまりに少ないんじゃないかなってふうのも、すごく思います。だからそういったところをやるときに、じゃあ半分融資しますよって、でも融資ではダメなんや!ということなんですよ。それはお金を払ってでもそこに来てもらって、やってもらうというくらいじゃないと、本当に誰もそんな最初から資本金があってとか、というような農家なんていないんで、そこが私は何かいつも歯がゆいなというふうに思っています。

宇田:和歌山は空き家率でいうと今、ワースト2かな。ワースト1かワースト2くらいなんですよね。山間部に行くと、本当に半分くらい空き家というところもあるんですね。で、藏光さんのところは、空き家を活用して、それからお2人、育成してきているということなんですけども、そのあたりはどうでしょうかね、どんなふうにしていますか。

藏光:そうですね、だから僕はもう、新規就農希望者が来たときにすぐ住めるように、自腹で古民家を1つ借りて、水道もガスも通年で通してます。研修生が来ない間はずっと空いているんですけども、それくらい踏み込んで、トータルで支援していかないと、移住して新規就農してもらうまでにはいろいろなところにハードルがあって、なかなか難しいなという結論になってしまうかなって思っていて、農地についても自分がちょっと作りたくない品種の農地が耕作放棄されそうになったら、無理やりちょっと作ったりしたりとかして、自分でちょっと余らせとくくらい持っておいて、新しい人がまた来たときのために、違う地区で農地を持っておいて、じゃあその農地をベースにこの地区に入っていこうかみたいな。で、2年間研修する間、研修中はウチの古民家に住んでもらって、2、3年かけて、住む家も一緒に探すというようなパッケージで進めてるという感じです。行政の支援がぶつ切りかなという気がしてまして、なので、どっかで皆、壁に当たってしまうので、そこはちょっと行政と話しながら、ここらへんはスムーズにしていってくださいねみたいな、ことをやりながら進めているという感じですね、僕は。

宇田:本当に今、行政のお話が出たんですけども、私たちも県の方に対して、いろいろ要望を出したりするんですけども、いつもこれ、やってますやってますということで嚙み合わないんですよ。これ、なぜかなあと考えたときに、じゃあ和歌山県としてどんだけの食料を自給していくのかという目標を持っているかというと、持っていないんです。ただやっているっていうことなんですよね。確かにやっているんですけれども。

それが本当に県民の人、住民の人にとって、必要な量だけ高めていくようなことをやれてるかということかなと、最近思って、行政の方に要望するときの中身をちょっと変えていかなあかんなって今、してるところなんですね。いろんなところを出していただいて、強み、確かに強みもあるんだけども、足らないところについては、それぞれいろいろと努力されて、してるなという感じがお話として聞き取れたのではないかなというふうに思っています。

もう少し議論をしていきたいんですけども。弱み、まあ困っていることかな。そういうところをどう、取り組まれていると思うんですけども、どんなふうにして、これ、地域のところに人を呼んできたりするかというところですね、もう少しお話をできたらなと思ったりもするんですけども、斎藤さんのところは勉強、教育ということでお話されていましたし、藏光さん、直接こう、担い手を育成したり、インターネットを活用して関係する人を増やしていくとかですね、そんなことも言われてましたし、玉山さんはもっと、何ていうかな、認定農家だけでなくて、いろんな方を、多様な方を対象にしてやっていけば、もっとやれるんだろうということの考えの中で、先ほどこれは足らないというふうなおっしゃり方だったんじゃないかなと思うんですけども、そうすると多様な方がもう少し農業の方にかかわっていただくために、どんなふうなことをしていったらいいのかなという、もう少し何かこう、一般的なことでもいいですし、考えていただいたらなあと思うんですけども。

玉山さんは行政のことでもっとこう、いろんなことをしてもらえればということなんです。この点はどうでしょうかね、もう少しこんなことをしてもらえたらとか、こんなふうにしたらいいんじゃないかということはどうでしょう。

玉山:私はまず、例えば地域の農業をどうするとか、そういうような大きなことを、国の農業をどうするとか、そういうことじゃなくって、もっと根本的に、この家族農林水産業ですよね。私が思うのは、家庭円満って言われるのはごもっともなんですけど、そうじゃない場合も往々にしてあるわけですよ。私は今、こういうふうにお話させてもらってますけど、もともと農業をやりたくなかったんですよね。で、今でもやっているのは、夫がやっているから、私、留学してたことあるんですけども、帰ってきて、すぐ妊娠して、それでどっか外に働きに行こうと思ったけれども、結局、行きそこねてしまったんですよね。で次、次って子どもが生まれたりとかして、そしたら、家のことをやらなあかんとか、子育てせなあかんとか、その上で、できる範囲で農業をやってくれっていうことになって、そういった妻じゃなくて、おかんっていうような、そういう役割を求められるのがほんまに腹が立つと思っているんですよ。

何でそんなね、家族農林業だけじゃなくて、その女性の影の労働というのがね、無償働かせ放題の、すごく労働集約的な産業形態の1つが家族農林水産業じゃないですか。そしたらその中で、私も含めて自分の子どもも、ほぼほぼ職業選択の自由というのがないんですよ。で、もちろんそれはね、素晴らしいことでもあって、農家っていうか、農業の価値ももちろん分かった上で言っているんですけども、だけれども、例えば普通、農家の子が自分の子が豊かに過ごすために、貧困を継承したくないじゃないですか。そんなら農家になるよりも、外に働きに行って、金持ちになっていい暮らしした方がいいよっていうので、皆、農村から都会に行ったりする場合が、学校も含めて多いと思うんですけど、そしたらそういった農家が置かれているっていうか、そういった女性も子どもも置かれているという、そういう構造的な中で、どないしてやっていくという、そういう視点がないとやっぱり難しいなと思っていて、だから地域とか、大きなことじゃなくて、我が家のことですよね言ってみたら。自分の家のことで、何で私は農家、やりたくないと言っても、結構、楽しいなと思いながらもやっている反面、自分がつねにお手伝いさんとして扱われるっていうか、まあそれは例えば夫が家事とか育児に対して、手伝ってやっているんだというものの裏返しかもしれないんですけれども、そういうふうに言われたら、そんなら何であんたと一緒にやらなあかんねん、というふうになるんですよね。だから家族農林業という、家族とかファミリーファーミングが出たときに、最初から家族仲良くっていうのが前提にあるっていうのはどうなのかなってすごく思うんですよ。じゃあそれを押し付けられる方の身になってみたら、そこの中でしか幸せを感じるべきではないのかとか、こうなるっていうのをちょっと思っているところなんで、そういうところです。ちょっとまとまりないですけど。

宇田:それはひじょうに大事なとこですよね。和歌山でみても果樹農家の女性の地位というのはやっぱり、なんか力仕事が多いから、割とお父さんの方に仕事の指示を受けてするっていうパターンが多くって、野菜農家になってくると、比較的、女性の方がきめ細やかく計画立ててやれてるような印象があるんですけども、本当にその何て言うんかな、今のこの家族っていうのを、玉山さんに参加していただくときに、そういうご意見も伺っていたんですけども、藏光さんのところは、先ほど奥さんが猟銃を持って活動されてる姿がありましたけど、そのあたりは藏光さんはどういうふうに、ジェンダーの問題になってくるんじゃないかと思うんですけども、どうでしょうか。

藏光:ちょっと観点が違うかもしれないんですけど、奥様が違うお仕事をしてて、1人で農業をされているという人もいると思うんですけども、僕は1人でやるのは結構、割と限界が見えやすいかなと思って。2人になると、3人か4人分くらいの何か強さがあるんかなと僕は思っているんですよ。なので、結構、2人目を見つけるというのがなかなか難しいんですけど、そのときに奥さまがやっていただけると、とてもありがたいかなというふうに僕は思ってますね。実際にウチも妻がやってくれてるんですけども。まあ果樹なんですけども、例えば本当の力仕事って、あんまり多くなくて、例えば選別したりとか、出荷したりとかという作業もかなりの割合を占めてくるんで、分担すればそんなにしんどいということはないのかなっていうふうには思いますね。

僕その玉山さんの最初の話でもうちょっと気になったことがあって、あんまり生活とかが苦しいと帰って来たくなくなるみたいなお話をちょっとされていたような気がしたんですけど、本当にそのとおりだなと思うので、まず自分がしっかり稼ぐという姿を、満足する分だけは稼ぎきるというのがあった方が今の社会においてはいいのかなという気がします。僕とかはすごく物々交換とかをやって、それはそれで楽しいですけど、それだけじゃないかな。資本主義の今、社会だと思っているので、そういうところでも都会に劣らないくらいの魅力を自分自身が出せないと、ちょっと説得力がなんか薄いのかなっていう、違う楽しみもありますよというだけだと、ちょっと説得力が薄いのかなと思うので、本当に資本主義のところでも、都会のサラリーマンと遜色ないくらいは頑張って稼ぎますっていうようなところはやっぱり持っといた方が、将来のお子さんとかそういういろんな人の選択肢には入ってくるのかなというふうに思ってやっております。

宇田:いずれにしても日本の社会の中で、まだまだ女性の地位っていうか、本当にまだまだ十分でないというふうに思いますし、田舎の村のところでいくと、自治会とかみても、ほぼほぼ男性ばっかりで運営しているようなところがまだまだ多いんですよね。女性の方がそこに出てきてない。その形だけでなくって、おそらく自分のことは自分で決められるとか自由度とかっていう問題が一番の本質的なとこじゃないかなと私は思うんですけれども。自由に自分で決められる。自分のことは自分で決められるっていうようなところというのが、大事なんじゃないかなとちょっと思ったりするんですけど、斎藤さん、どうでしょうか。

斎藤:私は妻と東京で出会いましたが、妻、彼女の方は2年くらい電気ガス水道のないところで、愛媛の山で暮らしていたので、昔はもっとハードに、ハードでもないのかな?自然に仕える暮らしをしていましたが、だから今の生活は結構マイペースで質素に「仕事が暮らし、暮らしが仕事」の農的暮らしをしているんですよ。もともと「モッタイナイ」もったいながり屋の生き方が好きだったので、あんまり貧しいとか、お金はそんなにないけど貧しいと彼女は感じないというか、むしろ僕より十分すごく幸せな暮らしで・・・本人は何て言うか分からないですけど。

そんな暮らしの中で、地元のスーパーとか直売所、農民連さんの直売所にも出荷してますけども、私と妻はいつもだいたい一緒なんですよ。例えば学校の授業参観や先生との面談なんかも全部一緒の出席だし、はっきり言って一緒じゃない時の方が少ない。今日はこうして私が一人で話しているんですが、こういうパネルディスカッションや講演をする時も、15年間くらいは、講演会とかも2人で、いや子どもたちもフォーラムや会議にも一緒に連れて4人で家族も全員一緒に参加してやってきたんですね。ここ5年はもう、子どもたちも大きくなってきたりして、プレゼンテーションや授業にもすごく用意が必要なので、全生活をみんなでそこに参画するということができないですが。農業の場や家だけが私たちや子どもにとって、共有すべき場というよりは、いろいろな場所に行くにもできるだけ一緒にいくように努力しています。

これは一つの事例をあげますが、北海道で「マイペース酪農」といって、放牧で酪農を経営されている三友さんご夫婦。ぜひ読んで欲しい本として「ジャストプロポーション~新しい農業経営論の構築に向けて~」(長尾正克著、筑波書房)の中で、酪農仕事の効率化の観点などから、別々に作業を分けた時もご夫婦であったそうですが、やっぱりそうするとお互いの姿が見えなくなり、そのことはマイナスだということに気づいて、一緒にやっている話が本の中で出てきます。本のタイトル“ジャストプロポーション”適正サイズという意味からだと思うんですけども、マイペース酪農という素晴らしい現場の実践がある。

夫婦であったり家族が仲良くというのは、実際大変な努力が必要ですが・・・。

私は農業・農村の問題はただでさえ暗い話になりがちなので、基本的にはいつもポジティブに話すように気をつけてはいるんですが、こうした流れなので、ネガティブな部分のお話をします。私たち夫婦も農村に移住して、すごくパワハラというか配慮のないハラスメントはもうさんざん受けてきて・・・例えば、子どもが生まれたときに、地元の人が(風習として?)新品の赤ちゃんの服を我が家に持ってきてくれてプレゼントしてくれたんですね。大変うれしかったのですが、お返しとして、手作りで心をこめて作ったものをお返ししたのですが、「私は新品で買ったものをあなたたちにあげたのに、手作りのものをよこすのか」とか言われました。日本では買ったものが誠意として受け止められますが、諸外国では心のこもった手作りのその人らしい贈り物が誠意を感じて喜ばれますが・・・。それから他には、部落では自治会費や赤い羽根の募金などいろいろな集金がありますが、強制ではなく任意のお金の回収の時に、使途がよくわからない内容だったので、何に使うお金なんでしょうかと聞いた所、「あなたたち、農村にきたらお金がかからないと思っているかもしれないけど、農村の方がお金かかりますからね」と、いきなり叱られたり・・・私たちも払わないとは言っていないんですけども・・・。信じられないハラスメントをたくさん受けている中で、それを彼女と2人で、子どもたちと田畑山林で何度も泣いたこともありますし、家族4人でくぐりぬけて来たという結束が私たちはものすごく強いんですね、かけがえのないパートナーというのが。それが玉山さんには、それは奥さんに聞いたら何て言うのか?といわれてしまうかもしれないですけれど。

自分の話になりましたけど・・・そこは乗り越えてきたという意識なので、そういった形で農業というよりも、農的ワークライフバランスという言い方をしてますけど、その中心に私たちは自然というものがある。ネコ(猫)であったり、あらゆる自然を見ていると・・・、縄文時代は階級もないし、奪い合うとか、争いがなかったと言われてますね。自然の中にベースを置くっていうことは、すべてが仮想的な生活に向かう中、最も人間が還るべきバックボーンだと思っています。私たちにとって農耕というより、自然という感覚の方が身近なのかなと・・・自然に全幅の信頼を置いて農的暮らしをしていることが、昔は(今も)喧嘩しても、20年今まで一緒に生活し、農業をしていく中で、自然(じねん)「おのずからしかり」でそれなりに済むという形で暮らしております。すみません、ちょっと答えになっているか分からないんですけど。

宇田:はい、どうもありがとうございます。ちょっと時間が迫ってきていますので、玉山さんのような、女性の農村での位置、そういったところというのは大きな課題ですし、ここはやっぱり解決していかないと、本当の意味でまだまだこの地力を上げていくというのもならないなと思いますし、ここは非常に大きな課題だなということで、ちょっと一旦ここを終わりまして、最後になりますけども、これからですね、ご自身の農業とか住んでる地域、農村の方をですね、どんなふうに変えていきたいか、未来に対する希望を、思いを語っていただいて、終わっていきたいと思います。ちょっと消化不良かも分かりませんが、よろしくお願いします。藏光さんの方からお願いします。

藏光:そうですね、あんまり考えてなかったですね。今日、本当に我々からの発信が足りなさ過ぎるんじゃないかなというのを思いました。「良い」というか「楽しい」というか、そういう暮らしがイマココで出来ているんですよということが、都市の人たちというか、農家以外の方にまだまだ伝わり足りてないんじゃないかなというふうに思ったので、引き続き発信はしっかりしていかないといけないと思います。

それから斎藤さんがおっしゃってたように、僕も自然の場所に自分のベースがあるというのはものすごく大事で、それが本当に心の安定になっているところがかなりあるなあと思っているんで、その安定の上で都会に出て行くっていうのも大事かなと思っているので、そういうところも都会の人にも知っていただきたい。ベースがたぶん都会にあるよりも農村側にある方がいいよっていうことをもうちょっと伝えていかないといけないのかなあというふうに改めて思いました。しんどいことはいっぱいあるんですけど、いいところを見てやっていきたいなと思います。

あとは研修生を含めて引き続き新規就農者に入って来ていただけるように、環境を、そのパワハラがないようにとかもそうですけども、そういうのが無意識のうちにやっちゃうとか、「来てもいいことないよ」とか言っちゃうからダメかなと思うんで、引き続きそういうところも含めて来てほしいですというところは前面に出して、これからも、新しい仲間を増やしていくみたいなふうにしていきたいなと思っております。以上です。ありがとうございます。

宇田:ありがとうございます。斎藤さん、お願いします。

斎藤:都市部と農村部同士が、また農村部の中でも公正な目線で対話力を上げて・・・。家族農業の10年もすでに5年の半分経過して、それと、小農と農村で働く人びとの権利宣言ですね、せっかく農民が勇気づけられる素晴らしい道しるべとして、国連で採択されて、まあ玉山さんのおっしゃるように問題点というか本当の農の現場との乖離性というのはあると思うんですけど・・・。

これは日本だけが抱えている課題ではなく、世界的に俯瞰しても農村離れという難題は多くみられますが、農業・農村・家族農業の問題は、人間の暮らし方それ自体がすごく問われていることなのだと思います。家族農業の10年であったり、小農の権利宣言もですけども、そういった世界の潮流をもう一度見直して、農業・農村・食と農の意義を再認識することそのものが、すなわち「人間の生のあり方」を考えることなのだと・・・。

つまり私は、農業とか農村の問題があるのではなくて、人間という問題が残っていると思っているんです、原発もですけど。先の見通せない時代に、この田畑を耕して農作物を作ることに加え、地球という自然に寄り添う根源的な生命産業として、真に人間性の回復ができる産業として、農村や農業がもっと見直されることを家族農業で、一反百姓として実践し、FFPJとしても提言していきたいと思っています。貴重な機会を頂きありがとうございました。

宇田:ありがとうございます。最後に玉山さん、お願いします。

玉山:はい。もうボチボチやっていくしかないかなっていうとこやと思うんですよね。希望というのは、私も特にないんです。もう毎日、追われるような生活もしてますけど、でもやっぱり、いろんなこととこの農村であったりとか、問題やったり、楽しいことも含めて、つながりをもっと広げていかなあかんなと思っていて、その中でも、今やっぱり農業のことだけ見とってもあかんと思うんですよ。ほかのことも見ながら、もっと農民も知識を蓄えて、今、世の中で何が起こっているのかっていうのを知らんとあかんと思うんですよね。

で、そういった知識っていうのは、別に学校で教えられて、記憶してテストに出るからとか、そんなのじゃなくって、そういうのを自分で勉強していくっていうのを常に、一生涯、私も地に足付けて生きていくにはどうしたらいいかなというふうに思っていますし、そんな中でも、やっぱり原発事故が起こったあとで、福島イノベーション・コースト構想のF-REIというところで、農林水産業で、例えばスマート農業やったりバイオやったり、一方でそんなところにすごいたくさんお金を使っている割には、能登でぜんぜん何の復興もされてないような、例えば世界情勢でもイスラエルでも何でもいいんですけども、ウクライナでも。そんなことも全部、オールラウンドにやっぱり幅広く見ていく中での私らが居るっていう、で、その上で豊かさというのをお金にだけ頼るのではなく、この自然に生かされているっていうその命の大切さみたいなところをやっぱり私らも感じながら、子どもらにどないしてそういうのを伝えていけたらいいかなと思うし、どうやってそういう知恵というか、年配の方から学ぶことができるかなと思いますし、だからそういったいろんなつながりをどうやったら紡いでいって、このネットワークというところから、最終的には地力、私はカタカナでレジリエンスって、ちょっと嫌ですけど、カタカナ来たらなんか騙されるんちゃうかと思いますけども、そういうような自分らの力というのをフツフツと溜めていかなあかんのかなって、それはいざというときに使えるやろうし、そういうのを思いながら地味にいきたいなと思います。

宇田:ありがとうございました。はい、進行の方はあまり上手くできなかったかも分かりませんけど、ありがとうございました。このあとは池上先生の方でまとめをしていただいて終わっていきたいなというふうに思います。池上先生、よろしくお願いします。

まとめの発言

池上:はい、どうもありがとうございました。私、特に玉山さんに十分、感じていることをしゃべってほしいなと思っていたので、そういう点でたいへん期待どおりに応えていただき良かったと思っています。また後で申し上げたいと思いますけど、時間があんまりないので、ちょっと考えていることをいくつかだけ申し上げたいと思います。

1つ目は、家族農業の強みは、一番は自分たちの食は自分たちでちゃんとまず確保できるんだというところにあるということだと思うんですが、今日の朝の『おはよう朝日』のバラエティーショーみたいなのを見ていましたら、特集が3Dフードプリンターだったんですよね。前から私もいろいろ警告というか、いろんなことを指摘しているんですが、星新一さんの『禁断の命令』っていう生活が、まさに3Dフードプリンターを使って、いろんなチューブで運ばれて来るものを、今日はこれ食べるってポッと決めて、整形したものを食べるという、そういうものが山形大学の先生が開発したというのが出てきました。これを見ていくと、つまり農と食というのが、あり方がまったく根本的に変わってしまう。へたをすると農も食もいらん、工業製品でいいんだということになりかねない。そういう時代を迎えつつあるということをしっかり認識しておく必要があるかなというふうに感じました。

もう一つ、2番目ですが、ちょっと残念というか、そうかもしれないなと思って感じていますのが、今年の大学卒業生の職業選択基準ですね。これが、かつては結構、やりがいというのが上の方にあって、給与っていうのは6番目か7番目くらいで低かったんですが、最近はこれが完全に逆転しちゃって、もう給与、待遇が一番トップになっているらしいんですね。実際に生活が苦しくなっているということも背景にあるのはよく分かりますけれども、それからもう一つは生きがい搾取。ちゃんとした報酬なしに、生きがいという名目で働かされてきているという労働の現実も影響してると思うんですけれども、こういう選択の仕方になっていく1つの背景に、メリットとデメリットに分けていいか。すぐにメリット、デメリットに分けてしまうという発想があるんじゃないかと思うんですよ。でもメリットもデメリットも相対的なもんですし、場合によっては逆転するわけですよね。そこのところを考えていかないと、まずいんじゃないかなというふうに思っています。その全体的な豊かさという話とか、命の大切さ、それから人間としてのあり方を問うというような見方というのは、まさにメリットデメリット論では分からない。そこのところから豊かな教育のあり方って、もういっぺん考えていかなきゃいけないだろうなと思います。で、お孫さんがちょっと夏休みくらいに来て、お爺ちゃんの農業を手伝って、農業が辛いつらいということはあまり聞かずに帰っていくと、継いでくれることもあるかもしれないっていうのは、それはそれで面白い取り組みかなと、だから小学校くらいは大事やねっていうふうに思いました。

それで3つ目が、今日、一番お聞きしたかった点ですし、これからFFPJとしても考えていかなきゃいけない点で、家族というものの持っている構造的な暴力というとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう側面ね、これは何も家族農業に限るわけじゃありませんけれども、家族そのものの持っている日本的な特質っていうところをきちんと向かい合っていかなきゃいけない。それが農村という、土地と家という家産を持っている中で、それが継承されてきた。しかも長男に、男系で継承されてきたっていう、そのずっと延長にきているというところ。そこを何とか超えないことには、どうしようもなくなってきているんじゃないかなというふうに思っています。たぶんその延長線上に農村社会のマッチョイズムと言いますかね、斎藤さんがさんざん感じられたような圧力とかイジメとかね、に近いもの。最近はだいぶ薄くなってきたとはいえ、そういう問題がまだ残っていると思います。

4番目が人の問題です。これは皆さん方も十分、意識されてますし、お話されましたので、あまり繰り返しませんけれども、地力あるいは底力の根源というのは人にあるということがよく分かりました。

以上でまとめにしたいと思います。今日は比較的自由にしゃべっていただけたかなというふうに思ってますし、皆さん方の日頃の思いをプラスの面もややダークの面も含めてお聞きすることができました。企画した者として、大変ありがたく感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

宇田:どうもありがとうございます。それでは、今日はご参加いただいた皆さん、本当にどうもありがとうございました。今年の夏はまた暑いという予想と雨が多くて豪雨もあるのではないかということで、また台風も近づいてますけども、くれぐれも健康には注意して、それぞれの地域で皆さん、活躍されることを期待して終わっていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。