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【報告】FFPJ3.14「食料・農業・農村基本法」改正に向けた院内集会

· イベント

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)は「食料・農業・農村基本法」改正の問題点を明らかにし、小規模・家族農業が豊かになる改正の方向を考え、運動を作っていくため3月14日(木)13:30〜16:00まで、衆議院第2議員会館第4会議室とオンラインを結んで集会を開催しました。参加者は会議室、オンライン合わせて120人でした。

集会では第1部で、FFPJ常務理事で近畿大学名誉教授の池上甲一さんが「新基本法論議に向けたFFPJの提言」と題して講演。第2部では、会場・オンライン参加の皆さんからご発言いただき、意見交換しました。集会の最後に今後の行動計画について確認しました(行動計画はこちら)。

以下、第1部の池上甲一さんの講演の概要です(資料はこちら)。(動画や第2部の発言についても完成したものからアップロードしていく予定です)。

いまご紹介いただきましたFFPJの常務理事を拝命しております池上甲一でございます。私はいつも内容をいっぱい盛り込み過ぎて、時間不足になってしまいます。ですが、今日はタイムキーパーがおりますので何とか48分で収めたいと思います。

今日はもちろんすべてのことを喋るわけにはいきませんので、2つか3つに絞ってお話します。1つは今、代表も指摘されましたが、この当事者不在の政策決定過程、意思決定過程について、ちょっと過剰かなと思われるかもしれませんが、見直しの過程を詳しく説明していきたいと思います。

これから申し上げるような意思決定の過程は、新聞などのメディアではあまり報道されません。ですので、各省庁、農水省とか内閣府の関係部署のホームページや審議会・検討部会の議事録を丹念に見ていく、点検するということをしないと、政策決定過程はなかなか分かりません。そういう密室のような、分からないところで、あるいはあまりきちんと情報発信をされていないようなところで決められてきたものが、国民の合意に基づいて、この基本法の改訂案を提言するということになるのでしょうか。大いに疑わしいですね。この間のプロセスそのものをしっかり検証しておかなければいけないと感じています。これはこと基本法だけではなくて、色々な政策の場面でこういう動きがみられるわけですけれども、そこのところを検証しておきたいと考えています。

*院内集会を設けた理由 

FFPJは去年の3月にも院内集会を開きまして、そのときにお手元にもございます「基本法の見直しに向けての提言」について議論しました。農水省さんにもお渡しいたしました。私たちのような小さな組織の提言はあまり重視されないだろうとは思いますが、それでもこの提言が基本法改訂案にどの程度、反映されているのか、あるいは反映されなかったのかということを検証して、新たな提言と行動に結びつけたいというのが、本日の院内集会を設けた趣旨でございます。

 今日は、昨年のFFPJ提案と基本法改訂案との対比、改訂案の決定過程、担い手像、食料安全保障の4点を申し上げたいと思います。特に意思決定プロセスと担い手像ですね、それから時間が許せば食料安全保障の問題、このあたりについて少しご紹介をしていきたいと思っております。

*2023年3月に行ったFFPJの提言項目

まずお手元にあります去年の3月に行った提言の項目について、ここではいちいち申し上げませんけれども、概略としては1番目が熟議型民主主義、2番目が基本理念、3番目に担い手像の多様化、4番目に効率性・労働生産性だけではなくて、エネルギー生産性の重視とか、あるいは資本生産性というような新しい指標を入れるべきだということ。5番目に共食と自給の意義を認める。それから6番目にフードスケープ、7番目に生物多様性の視点、8番目にアグロエコロジーの視点、9番目にスマート農業に代表されるようなテクノロジー一辺倒ではなく、それを冷静に評価するということ、それから情報主権の考え方ということも盛り込むべきだ。10番目に農業政策の進め方として、縦割り行政を打破すべきだというような提言を行いました。

*FFPJの提案からみた基本法改訂案の点数

それを踏まえて、このスライドの点数は私が勝手に付けたんですけれども、1番目と2番目の基本理念と熟議型民主主義については、ゼロどころかマイナスですね。それから3から7の農業の担い手・あり方と農村社会は、あとで申し上げますように、これまでの基本法では、ほとんど何もないに等しかった農村社会政策が少しマシになったかなという意味で50点を付けました。農業環境政策とアグロエコロジーは、アグロエコロジーは何も言っていませんが、一応30点。テクノロジーは反省がないどころかスマート農業の推進ばかりなのでゼロ。食と農の結合のところは若干、意識はされているかなということで40点をつけました。点数の高低はどうでもいいんですけれども、基本的にはほとんど反映されていない、落第だということが分かります。

◆ 基本法改訂案の検討プロセスと意思決定のあり方

これからメインの基本法改訂案の検討プロセスと意志決定のあり方について申し上げていきます。結論から言いますと、スケジュールありきの改訂議論です。それから形式的な合意形成にとどまっている。今回の国会上程についても、初めから今国会で、6月くらいでしたかね、には成立させるんだというのがもう前提になっています。そういうやり方で決まったような改訂法で、例えばこの改訂案の目玉の一つになっている合理的価格の形成、つまり生産費をちゃんと反映する値段を付けますと言われて、消費者はハイそうですかと簡単に頷けますか。ちゃんと自分たちの意思が反映させられていますか。当事者の意見反映がないような決定プロセスでは、問題があまりにも大きすぎるのではないかと思っております。

*見直しに至る経緯1:見直しの開始

それで、多々書きました。そもそもこういう基本法の見直しというのは、理念法なので、担当する農水省にとってみてもですね、労多くして益少なしというのがたぶん実感だったと思います。しかし、少し政治のメカニズムが変わって、官邸主導の農政から、農水省の主導による農政も少しはできるようになったということで、農水省もちょっとやる気を出されたみたいですね。見直しは森山議員の発言から始まって、自民党で色々決めたり、それから政府の活力創造本部で基本法の検証を決めました。ついでですが、この活力創造本部というのは、食料安定供給・農林水産業基盤強化本部、これから強化本部と言いますが、そういうものに変わりました。その強化本部で岸田首相が指示をして、基本法検証部会が始まりました。たった1年間の検証期間なんですよね。この検証部会は、何と月2回という非常に早いペースで開催されて来ました。で、翌年の5月19日にはもう中間とりまとめ案が出てきます。一応、パブリックコメント、それから地方意見交換会というものが開かれました。

*見直しに至る経緯2:検証部会設置後の開催経過

パブリックコメントはいつもそうですけれども、形式的です。今回は1カ月間ありましたので、通常よりは多少長かったんですけれども、それでも指示された1つひとつの項目ごとに200字以内で書けという形になっています。パブコメを出された方はご存じだと思いますけれども、そんな細切れの状態でちゃんとしたパブコメが出せるか、ということがまず1点です。それから地方意見交換会についてです。私も近畿地方農政局の意見交換会に出席しました。でもこれはまったく意見交換会じゃないですね。喋っているのは壇上の検証部会の委員と選ばれてそこに出てきた登壇者の方たちだけ。会場からの質問さえも許されない。そんな意見交換会がありますか。そういうパブコメと地方意見交換会を踏まえて、広く国民の意見を聞いたというされていることに対して、きわめて遺憾に思います。

*見直しに至る経緯3:強化本部の動き

見直しそのものを決めた強化本部でございますけれども、ここでも実質的な議論はなしです。大筋として、「骨太の方針」を決める前に中間取りまとめを出し、それを「骨太の方針」に反映するんだというように、まさにスケジュールありきで、出口が決められている中で議論がされてきた。骨太の方針もわずか20分か25分くらいで決めたようです。また議論なしですね。そういうような意思決定がずっと行われてきているというところに、すごく大きな問題があると感じます。

*見直しに至る経緯4:中間とりまとめ、最終とりまとめの公表

それから今回の基本法の見直しの目玉になっている、ちょっと名前が変わりましたが、不測時食料安全保障法(⇒食料確保困難事態対策法)、あとで説明しますけれども、要するに食料が足りなくなったときにどうするかを議論する検討会と、それから適正価格形成協議会というものが出来て、そこでそれぞれ議論がされてきました。この時点では不測時食料安全保障検討会というふうにされていましたが、これは内閣府が所管なので官邸主導ですね。一方の適正価格形成協議会、これは農水が主導するという形でした。どちらも検討会は非公開なんですけれど、上の官邸主導の方は会議資料議事概要等の公開義務がありません。そ農水省の方は一応、原則公開になっていて今のところ、公開されています。要するに、秘密主義になっています。

*基本法の見直し過程と政策決定の問題

見直し過程、政策決定のプロセスをまとめますと、とにかく政治的に決められたスケジュールありきで進められてきました。国民合意に向けて、腰を据えた議論がまったくされて来なかった。なおざりだったということですね。この典型が形式的なパブコメと地方意見交換会だったと思います。地方意見交換会の登壇者とか、それから基本法見直しの過程で、審議会にヒアリングの結果というものが載せられていますけれども、そのヒアリングの対象者はどうやって決めたのか、どうやって選んだのかということはまったく分かりません。勘ぐって言えば、都合のいい人を選んできたとしか言いようがないでしょう。

こういう日本に比べて、外国がいつでもいいというわけではありませんけれども、例えば、EUの政策決定過程というのはけっこうオープンで、幅広い人たちからの寄与を歓迎しています。もちろん字数に制限はありません。準備期間もかなり長くとっています。国連家族農業の10年の世界行動計画を作る際にも、政府だけではなくて、色々な主体にヒアリングをしています。最近ではオープンなプラットフォーを作り、多くの人から意見を募集するような仕組みも導入しています。そういう仕組みを導入すべきではないかと思っています。そういう点では現代風な「目安箱」のような、農と食の政策提言を常時受け付けるような仕組みというのも要るんだろう。それが出来たからと言って、ちゃんと反映するかどうかは分かりませんけれども、少なくともそういう仕組みが要るだろうと思っています。

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◆ 基本法改定の基本理念をどう評価するか

次に基本理念に移ります。昨年の院内集会のときに、基本理念をちゃんと検討しましょうということを申し上げました。その点を検討する前に、けなしてばっかりでは農水省のやる気を損なってはいけないので、一応、少しは良くなったかなと思う点を挙げておきました。

*評価に値する主な改訂点1:食料システムを対象、多様な担い手、環境と調和

一つは食料システムを対象としたことです。まだ不十分ですが、食料システムを対象としたことは新機軸だといえます。食料システムというのは、農業に資材を供給する資材メーカーから、最後の食べ手の消費者まで全体の流れとして考えるということです。なので、農家ももちろんですけれども、消費者もそういう食と農にかかわる政策の主体だというふうに位置づけられるんですね。だから、農家や消費者という当事者がちゃんと意見を述べられるような、あるいは政策決定に関与できるような仕組みにすることが、食料システムを対象にするということではないでしょうか。そうさせなきゃいけないんだと考えています。

2番目に、多様な担い手というのを一応、改定案に入れました。もちろん、大規模経営一辺倒から脱却するのかなぁ? というクエスチョンつきですけれども。今進められている政策に、地域計画という新しい仕組みがありますが、その地域計画の中では地域ごとに議論して、多様な担い手で計画をつくっていこうという仕組みになっています。これについては後ほど、申し上げたいと思います。

3番目に、環境と調和のとれた食料システムということを書いています。この点については昔から主張してきました。私は大学院生の頃から、近代農業の持っている環境破壊的な側面をずっと指摘してきましたが、まったく耳を傾けてもらえなかったですね。そのことを思うと、地球温暖化ガスの排出という肝炎だけですが、ようやく農業は環境に負荷を与えていることを認めた。それは一応、進歩かなと感じています。ただ、あくまでも脱炭素化なので、多面的機能とか生物多様性の問題とかの位置づけはだいぶ弱いといわざるを得ません。

*評価に値する改訂点2:地域社会の維持、食料自給率目標の設定、食料の円滑な入手

それから、農村政策ですね、人口が減る状況下でも地域社会の維持ということを書き込んだ。この点に本気に取り組んでもらえれば、かなりのことができるでしょう。今までだと過疎化、人口が減ったらもう、撤退しましょう。あるいはコンパクトシティで中心部に色々な機能を集めましょうという流れでしたが、それに対する代替と捉えたい。ただ、そこに書かれているのは農地保全のための共同活動とか農福連携とかであって、もう少しきちんとした対策が要るかと思います。

それから鳥獣害対策が基本法に盛り込まれました。鳥獣害は、現在の農山村で一番大きな問題の一つ、やる気をなくす大きな問題の原因になっているので、その対策を基本法に書き込んだということは、それなりに評価をしていいかと思います。

これまでの検討の過程では、食料自給率目標は除外されると言われてきましたが、かろうじて残りました。食料自給率については年1回の達成度を公表する。これは農業白書でやるのかなと思うんですけれども、そういうものが一応、入って来た。基本法の検討過程から考えると、多少は良くなりました。ただし、食料自給率目標はその他の食料安全保障の確保に関する事項というものと並列されているので、自給率目標の位置づけは低くなっていると言わざるを得ないかもしれません。

次に、食料の円滑な入手というところでは、過疎地とかですね、それから食料難民、難民という言葉はあまり使わない方がいいんですけれども、食料の入手可能性がたいへん弱くなっている地域、都市の真ん中でもそうですが、そういうところでも円滑に食料が届くということに一応、気を配ったことは素直に評価したいと思います。

*基本法改訂案の提案理由

いま申し上げたように、多少は良くなっている点がありますけれども、全体としてはきわめて不十分です。このスライドに、基本法改訂案の提案理由をコピーしました。食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的発展のための生産性の向上、農村における地域社会の維持が必要になったというわけです。そして、この4つが改定案の四本柱の理念ということになっています。

*改訂法のポイント:基本理念

そこで、基本理念について、少し検討してみたいと思います。1番目の、国民1人1人の安全保障の確立。これはFAOのちょっと前(2013年)の段階の食料安全保障についての考え方で、それを成り立たせる4つの側面のうちの2番目のものなんですね。これまでは国の食料安全保障が達成されていればそれで良し、一国主義の食料安全保障だった。国内のことは知りませんよというものだったことに比べると、国民1人1人の食料安全保障は少し良くなったと言えるでしょう。1人1人の安全保障について、国が責任を持ちますということですね。ところが、国内の食料安全保障を確保するために、国内生産を旨としながら輸入先を多様化し、備蓄を組み合わせるというわけです。特に、安定的に輸入を確保するために輸入先を多様化するという「寝ぼけた」ことを言っているのは大きな間違いです。そもそも、基本法見直しが課題となった理由の一つは、輸入が上手くできなくなったということです。それなのに、多様化すれば大丈夫なんだというわけです。まったく意味が分かりません。

それから、合理的な価格形成ですね。食料システムとして合理的費用を考慮しようということになっています。これはまた後ほど検討したいと思います。

次に、農業の持続的発展のところですね。これは新たな技術を活用した生産性の高い農業経営、やる気のある人を支援しますということが強調されています。そもそも、やる気のない人っているんかいなとか、やる気をなくさせているのはなぜなんだと思いますが、まあ、そういう理念を入れているということです。

*基本理念についての評価

基本理念の評価についてはちょっとだけ詳しく見ていきたいと思います。基本法は理念法だから仕方がないと言えばそうなんですけれども、基本理念に色々なものが盛り込まれています。体系性に欠けていて、何がいったい大事なのかということが分からない。この疑問については、かの日経新聞でさえ、何が重要なのかはっきりしないということを指摘しています。田代先生は、「何でもやるということは、何にもしないと同じことだ」と断じています。どこに一番、重点を置くのかということがぼやけているということです。

基本法の見直しの過程では、新しい法律を作るということも一時期言われていましたが、結局は見直しにとどまりました。なので、理念法という位置づけは変わっていない。とはいえ、中身には先ほど申し上げた鳥獣害の問題のように個別具体的な問題も入っていたりするので、抽象的なものと個別的なものとが同居していて、これもちょっと分かりにくい理由になっているかと思います。

*ぶれない理念・姿勢、腰を据えた農政

ぶれない理念ということについてです。1999年にできた現行の食料・農業・農村基本法をつくるときに、旧の1961年基本法の反省に立ってですね、大内先生は、基本的な農業のあり方についての哲学・思想がなかったと喝破されています。それから農政審議会の会長をされた武田さんもですね、農業の役割というのは命の産業で、そういう観点からちゃんと考えるべきではなかったか、農業の特質を世の中が忘れてしまっていると反省の弁を述べておられます。

つまり哲学抜きで、あるいは理念抜きで、その場限りの対応、小手先の対応に終始してきた、そこから訣別しなきゃいけないということです。そのためにこそ、きちんとした熟議型民主主義を実現させていかなければいけない。熟議なしに、腰を据えた農政とそれを国民が支える形には成り得ない。最近の政策決定手段に見られるやり方を今回の基本法見直しでも行なっているわけで、こういう政治の貧困化こそをきちんと見直していかなければいけない。それを改めさせていかなければいけないと考えます。

*基本理念の整理が必要

従いまして、基本理念を整理することが必要です。人間にとって一番大事なことは食料の確保ですね。食料をちゃんと手に入れるということが一番大事なことです。それを新自由主義的な枠組みでやってきた。市場で全部、解決できるという考え方でやって来ましたが、もうその限界は明確になっている。ここから脱却することが緊急の課題です。

2番目に冒頭で代表が申し上げましたように、地球社会がもう持たないことがはっきりして来ている。そういう閾値を超えるのは時間の問題です。ティッピング・ポイントを越えるのは時間の問題だと見られている。この問題の克服に農業がどう貢献し、その中でどういうふうにちゃんと食料を供給できるようにするのか。そのことを考えると、農村がきちんとしていることがとても重要です。農村に人がちゃんと住めるようにすることが二番目に大事な課題だと思います。

ただ地球社会の永続可能性ということを考えると、もちろん地球温暖化による気候変動はすごく大きな問題ですが、それとともに種(しゅ)の大量絶滅ですね。種はどんどん減ってきて、大量絶滅の時代に突入しています。脱「人新生」、あるいは資本がすべてを決めていく資本新生からの脱却(脱「資本新生」)を本気で考えなければいけない段階に入っています。

◆ 改訂案の農業政策をどう評価するか:担い手の観点から

次に農業政策の評価ですが、担い手の観点から少し考えたいと思います。

*改訂案の担い手像

改訂案の担い手像といて、望ましい農業構造の確立は、旧の条文からそのまま残りました。とすると、新自由主義的な路線をやっぱり継承するのかという疑問が生じます。実際、生産性の高い農業を実現するんだと言っています。ここで言っている生産性は、あくまで労働生産性ですよね。エネルギー生産性とかの観点はまったくありません。

改定案では、効率的かつ安定的で農業経営を営む者、者(シャ)ですね。それと多様な農業者が行う農業生産活動を支援するんだとしています。しかし、この条文はよく分かりません。多様な農業者による農業生産活動とは、あくまで農地を確保するための農業生産活動というように読めるんですね。もちろん農地を確保していく、維持していくことは大事なんですが、この条文を読んでいると、多様な農業者というのは、どうも農業の担い手というよりも、農地を維持するための協力者だとしか読めない気がします。もし、この多様な農業者を担い手として農業政策の対象に位置づけるとすれば、それをどういうふうに把握するのか、何人くらいいるのか、どういう形の農業をやっているのか、ということをきちんと把握しなければいけないはずです。そうしないと、政策の対象には成り得ない。だけれども、今の統計の仕組みでは、そういう多様な農業者を把握する制度にはなっていません。あくまで経営体だけなんですね。経営体を把握するという統計体系になっています。

ですから、多様な農業者を捉えられるような統計の整備というものも必要不可欠です。そのためには経営体にこだわることを止めなければいけない。国連家族農業の10年の「世界行動計画」でも統計をきちんとすることが盛り込まれています。統計数値に基づいた政策を行う、流行りのカタカナ語でいうと、エビデンス・ベースの政策をするんだということが謳われていますが、改定案の担い手政策にはそういう認識があまりにも少ないと考えております。

*農業に必要な要素はどう変わったか

ここからは、担い手に関係する統計的な動きをごく簡単におさらいします。これは農業センサスという統計を使って、1980年から2020年までの変化を分かりやすくまとめたものです。明らかに農家数、経営耕地面積、基幹的農業従事者は右肩下がりです。これは農業の担い手がいませんと言われていることを表しています。だけれども、統計では土地持ち非農家と定義されている人たちは、1980年に比べると2倍くらいに増えている。こういう人たちが皆、都会へ行っちゃったらどうしますか。農村はもちません。このグラフから、増えている土地持ち非農家をちゃんと政策対象に入れるべきだということが分かります。

ちなみに農業従事者という統計もあります。農業従事者というのは、1日でも農業に携わった人のことです。だから、大学生でも農業を手伝えば、農業従事者としてカウントされます。この農業従事者が急激に減っているんですよ。農業就業人口とか、ここで書いている基幹的農業従事者よりも早いペースで農業従事者が減っています。一つには大型機械を使うようになって、手伝う場面がなくなってきていますし、もうひとつには子どもを働かせてはいけないとか、手伝いより勉強だとかという風潮も影響しているのではないかと思います。農業の基幹的従事者が減るということも深刻なんですけれども、農業従事者が減っていることはあんまり注目されませんが、きわめて深刻な事態ではないかと考えています。農業の実際を知る機会が失われるからです。とすれば、消費者と言われている人たちが、積極的に農業にかかわっていくこと、例えば生協が生産過程に入っていったり、直接、農業生産をやったりということを始めていますけれども、そういう形で農業従事者の数をもっと増やしていくことが大事だと考えています。

*低下する農業所得率

それから、とても重要な問題として、農業所得率が非常に低くなっていることがあります。1950年代には60%を超えていました。売上のうちの60%くらいは所得になっていたんですね。ところが21世紀に入る頃から、40%台に下がってしまって、それからほとんど変わっていません。売上は増えても所得はさほど増えないのが現実です。

もう一つ、非農業との所得格差も非常に大きくなっています。農業の1時間当たり所得、畜産とか野菜とか果樹とか、いわゆる儲かる部分を含めても536円です。1時間当たり536円。稲作は大規模経営もちっちゃい経営も全部ひっくるめてですけれども、1時間当たりは何とたった10円です。稲作は儲からん儲からんと言われていることが一目瞭然です。これに比べて他産業の1時間当たり賃金は、4,000円弱です。こういう現実を見ると、適正な価格形成でどこまで対応できるのか、きわめて難しいし、無理じゃないかと思わざるを得ません。価格政策もきちんとしなきゃいけないんですが、それだけでは十分ではないということをきちんと認識しておく。代わりに対策を考えなければいけないというふうに思います。

もう一つ大事なことは、農業には儲からない仕事、タダの仕事がけっこうあるんですね。これが地域社会を支えている。タダの仕事、例えば溝掃除をするとか、草刈りをするとか、農道の舗装されていないところをちゃんとするとかね、山仕事をするとか、そういう儲からないけれどもちゃんとしなきゃいけない仕事、タダの仕事が地域を支えている。ここのところもきちんと評価して、それを支援できるような対策、政策を打つことも必要なんではないか。このタダの仕事が最近では、山村でどんどんどんどん出来なくなってきている。そのことが例えば、洪水の被害とか、地滑りの被害とかを深刻化させているとも言われています。

*大規模土地利用型経営の農地集積と大規模化によるコスト節減

日本の農政はずっと大規模化、大規模化と言って土地利用型経営の大規模化を進めてきました。今の統計で一番大きいのは150㌶以上です。もっとも、日本では大きいですが、世界じゃちっちゃいほうですね。一応50㌶以上くらいを対象についてみると、その数は少しずつ増えては来ていますが、この大規模経営の使っている農地の全体に占める割合は、まだ2割弱くらいです。確かに大規模化するとコストを節減できるのですが、50㌶以上でも全国平均の半減というわけにはいきませんし、値段の高騰した肥料の費用は全国平均の90%強にとどまっています。

労働費は4割弱低くなっています。労働費はこうやって計算すると確かに費用なんですけれど、家族経営にとって労働費は農家の収入ですよね、所得になります。資本主義的な企業的な経営だと費用に計算しちゃうんだけれど、家族経営では、労働費は農家の手取りになっています。ですから、生産費でみたらちょっとくらい赤字になっても、農業を続けていけるわけです。労働費は、むしろ手取りとして考えた方がいい。

問題は生産費とお米の値段との関係です。例えば滋賀県の水かがみというお米、これはブランド米で割合、価格がいい品種なんですけれども、2021年は1万3,732円、2022年は1万3,600円台でした。この価格でも、全国の平均生産費と比べると赤字です。50㌶以上になると生産費が9,000円なので、多少は余裕があるかもしれませんが、それでもしっかり儲かっているという状況にはなりません。

*酪農経営の大規模化

酪農経営とか肉牛経営は、もうとにかく大規模化が進んでいます。その分、畜産農家の数は減っています。酪農経営だと、今は数千戸ですね。それから肉牛経営も大幅に減っています。

肉牛経営については、繁殖、つまり子牛をとる経営も、肥育経営も全部込みの数字です。畜産の子どり経営というのは、とくに中山間地域で重要な役割を持っているので、これがあんまり数が減っちゃうとやはり問題が大きいと思いますね。

卵は物価の優等生でしたが、採卵鶏はこの2022年には10万羽以上のところが大部分を占めるというような状況になりました。その結果、鶏インフルが出ると、卵が足らんということになってしまっています。

*農業に関する基本施策の内容と評価1:担い手

ここで、担い手に関する基本施策の評価を少ししておきましょう。現状認識としてというか、担い手政策の前提として、現在よりも相当少ない農業経営体が食料の安定供給を担っていかねばならない状況を念頭に置いています。そもそも農家がなぜ減ったのか、農家を減らさないための努力をしたのか、というところの反省がまったくないところが大きな問題です。

もう一つは、「もっぱら農業を営む者や経営意欲のある者」をおもな政策対象としている点です。これは今の基本法と同じなんですけれど、もっぱら農業を営む専業的な経営、あるいは経営意欲、これはどうやって測るのか分かりませんが、経営意欲のある人たちだけを政策対象とする。でも半農半Xで新しいことをやろうと思っている人はとても意欲的です。そういう人たちをどういうふうに位置づけるのかは、従来の基本的な考え方でいくと分かりません。あるいは兼業農家で、中核的な役割を担っている人たちがいっぱいいます。そういう人たちをどういうふうに政策対象にしていくのか、ということが見えて来ません。

また個人経営について、その経営発展の支援ということで、第三者継承のことを入れました。多少は新規参入の壁を下げようとしているのかなと期待していますが、まだどうなるか分かりません。今までは農家の子どもじゃないと農業を継げない、あるいは継ぎにくいというようになっていたところを、もう少し窓口を広げようと、農地法の改訂なんかもそういう方向に向かっているかと思います。

適正な価格形成については、特に農業法人が想定されていますけれども、原価管理をちゃんとせよということになっています。つまりコストをきちんと把握しましょうということになっています。コストに基づいて、適正な価格形成ができるようにしましょうというわけですが、そのための管理作業を考えると、新しい追加の負担になるかと思うんですね。

*農業に関する基本施策の内容と評価2:農業生産基盤の維持管理の効率化・高度化、技術や品種の開発・普及

農業の担い手が減っていくので、生産性を上げなければいけないというのが改定案の一貫した図式です。そこで、スマート農業だと言っているわけですね。スマート農業推進のために色々と予算を使うことになっています。

でも、スマート農業はそんなにいい話ばかりでしょうか。例えば、ここにちょっと例を書きましたけれども、岡山県に児島湾の干拓地かな、10㌶の水田があるんですよ。ちょっと想像つかない規模です。最初のうちは何人かトライしましたが、今は作り手がいません。そんな大きな田んぼではまともな営農はできませんよ、当然のことながら。レーザー・ブルドーザーみたいな、2千万円も3千万円もするような機械を使って田んぼを平にしたところで、思うような稲作はできません。明日は気温が低そうだから深水で管理しようかと思ったって、なかなか水が溜まりません。風が吹けば、水が片側に吹き寄せられてしまいます。そういうところでは、ちゃんとした稲作ができない。それなのに、10haよりは小さいでしょうが、そういう大区画圃場をまだつくろうと言っています。現実味が非常に薄いですね。

それから補助金、このICT技術とか、バイオ技術を使ったイノベーションをつくり出すんだということで、農業予算が計上されるんですが、それは農家に行くわけじゃありません。ベンダー企業、つまり開発企業に行っちゃう、情報企業に行っちゃうわけですね。これを農業補助金と呼ぶことには疑問があります。

最後に、最大の問題は、技術に農民がかかわれないということです。かつては地元に農機メーカーがあったので、色々相談して、地域に合った機械を作ったりとか、少し修正したりとかが出来たんですけれども、もうそういうことはほとんど出来なくなっています。ましてやICTとかバイオ技術を使うとかになると、農家はまったく関与出来ません。技術の主体性が失われていってしまうのです。

ICTに関しては、どんどん情報が蓄積されていきます。土壌の質や、作業の時期と内容など、色々なデータが蓄積されていきます。農研機構などが開発しているアプリを使って、タダですから使ってください、それを使うとあなたの経営では、この時期にこういう肥料をやったらいいですよ、こういう農薬を散布すればいいですよって情報が返ってきます。便利でしょというわけなんですね。けれども、そこにアップされたデータというのは、ぜんぶ溜められて、例えば情報企業が使えるようになっていく。だから情報主権をどういうふうに確保するか、その対価をどうするかという問題が生まれてきますが、この問題についてはまったく議論されていません。これは何も農業だけじゃありませんけれども、情報主権は、今後の大きな課題だと思います。

*スマート農業:テクノロジーの冷静な評価

時間が迫ってきたので、ここはかなり飛ばしますが、1点だけ指摘すると、フードテックが推進されています。これは食べる方にきわめて大きな影響を与えます。特に消費者の皆さんには、ぜひ星新一の『禁断の命令』というショートショートを読んでいただきたい。そういう世界がもう目の前に来ています。あなたはそれを選びますか?

*農業に関する基本施策の内容と評価3:生産資材の国産化

生産資材の国産化については、肥料が高騰した、エサが高騰したということで、それがトラウマになって、生産資材を国産化しようと言っています。問題はこの下水汚泥資源ですね。これを積極的に活用しようということで、すでに神戸市は商品化していますし、私の住んでいる滋賀県でも下水汚泥の肥料を使おうという方向に舵を切っています。これは次のスライドにもありますけど、けっこう大きな問題ですね。

食料自給率低迷の原因としては、先ほど申し上げたように、やっぱり穀物を食わすという加工型畜産が最大の問題なので、エサの振興が本筋だというふうにされています。それでも大規模畜産を前提にする限り、エサの自給はたいへん厳しいでしょう。それよりも山地酪農、放牧畜産とか、それからマイペース酪農のような形の中小規模で、その地域の資源でちゃんとやっていけるような形が一番大事かと思います。

*地域農業の営農主体≒担い手の多様性

担い手に関して言うと、政策の重点はどうしてもこの図の真ん中から右に書いている、プロ農家、農業法人、それから新規参入の会社、こういうところに置かれているんですけれども、これは地域とほとんど関係ないか遊離してしまっています。実際には、ここに書いてある色々なタイプの農家が地域にはいるわけです。あるいは農業をやっている人がいるわけですよね。ここをきちんと捉えて、小規模家族農業を対象にするような基本法を作っていかなければいけないと思います。

◆ 食料安全保障についての検討

*食料確保困難事態対処法

ちょっと時間が来てしまったので、食料安全保障についての検討は資料を読んでいただきたいと思います。要点だけ、かいつまんで話しておきます。この名前のなかなか覚えられない食料確保困難事態対策法は非常に問題の多い法案です。これについては、あとで時間があれば申し上げたいと思いますけれども、午前中に農水省のレクチャーを受けましたが、皆さんそんなに心配要りませんよということを盛んに強調しておりましたが、実はそうではないんじゃないかと思っています。

「食料増産命令が出された時代」、これが分かるような世代、実感できるよう方はこの場にはおられないと思いますが、そうした息苦しく、生きづらい時代になることを避けたいと思います。歴史に学ぶ重要性、ちゃんと歴史を学びましょうということです。

食料自給率は、1999年に新しく、食料・農業・農村基本法が出来ましたが、それ以降ずっと横這いですね。ちゃんと上がる努力をしたんですか。努力をしたけれど、うまくいかなかったのなら、それはなぜか、総括したんですかということを、午前中のレクチャーで申し上げて来ました。

*改訂案の食料安全保障

もう時間が来たので、最後にちょっとだけ言わせてください。このスライド(改訂案の食料安全保障の1)の一番下のところです。

供給能力の向上、それから輸入の多様化、備蓄って言っていますけれども、この供給能力を向上すれば、それで事足れりなのか。本当に1人1人の食料アクセスが、食料安全保障が確保できるのか。そうなっていない根本の原因は格差、貧困なんですよ。これを構造的に直さないかぎり、いくらフードバンクで届けますよとか言っても、それでは限度があるわけですよ。一番大事な、構造的な是正をするということ。これは農水省の仕事じゃないと言われるかもしれないけれども、そこのところを含めた対策をとらないかぎり、食料安全保障は確保できません。これは明言できます。実質所得の向上を図る。こここそ官邸主導の出番です。岸田首相の言っている新しい資本主義の内容を実質化してほしいと切に思います。

*おわりに

本当に最後の最後ですが、これまでの農政では、消費者は受け身の存在に位置づけられて来ました。今の基本法でも受け身の存在です。新しい改訂案でも受け身の存在です。政策を提言する主体ではない。しかし、食料システムとして捉える以上、政策形成に発言する主体として位置づけてもらわないと困ります。

具体的な提案についてはあとで申し上げたいと思います。最初、意図していた食料安全保障については十分に説明出来ませんでした。しかし、政策決定プロセスと、農業の担い手の問題については、少し突っ込んだ議論が出来たかなと思います。時間配分がへたくそで申しわけありませんでした。以上で私の話題提供を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 

FFPJ代表の村上真平さんによるあいさつです


皆さんこんにちは。家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンの代表をさせてもらっています村上です。今日は表題にあるように「家族農業を支える基本法改正で農村も都市も豊かになろう」ということなんですが、本来そうあるべき基本法改正であれば、皆でここで喜びをシェアできるのですが、この後池上さんから改正案がどうゆうものなのかを具体的に話されると思うのですが、今回の基本法改正というものが、そのやり方を含めて農民がほとんど関わらない。そしてイノベーション、それから大規模化、そういったものによって様々な問題が起こっていることは一切見ないで、ただ先に進んでしまうという。今日ここに資料として皆さんに配られた「農民」という新聞に載っている内容が、正にこの通りの状況があるということで、国に対する不満を言いたい、そういう気持ちになっています。

ただ国というものがこういう形で今進めようとしていますが、僕らはもっと広い視野で見ていく必要がある。特に、僕らの子どもたち、またその子どもたちということを考えたときに、世界ではSDGsということで持続可能な発展、持続可能な社会をつくっていかないといけないと全世界に言わないといけないくらいに、持続可能じゃない社会で私たちは生きているわけです。

それから、人新世ということで、生命の歴史というのは40億年あるわけですが、いまの人類は第6回目の大絶滅期を迎えていると言われています。じゃあ第5回目はいつかと言うと、6600万年前にユカタン半島に隕石が落ちて、それによって、そのころ大隆盛を極めていた恐竜が滅びて、そのときに全種の60~70%が絶滅して、そこで生き残ったものが人間も含めて今の形でいるわけですが、現在起こっている大絶滅期は、100万種以上の動植物が絶滅していこうとしていて、それが全然止まる気配がありません。

そして、それを行っているのが生命の中の1種、人類ということなんですね。私たちが、私たち自身が住めなくなるような環境、社会をつくっているという。
衣・食・住の中でも食というものは一番大切なものであり、そもそもそれは健康を支えるものであり、同時にこれは自然の中で行われるが故に、自然を壊してしまうと持続可能なものにはならない。これは普通に考えれば絶対に分かることなのですが、国などが法律として様々な形にするときに、どうして自然を壊して、貧しい人たちを蔑ろにして、実際に農業をやっても生活ができない・将来に希望が持てないという、そういう経済システムの中に農業を国が置いているからなのですが、そういうことを一切見ようとせずに、小手先で、「じゃあ農業を儲けられるようにしましょう」「これから輸出産業にしましょう」とすることが、全然意味が分からない。意味が分からないことをこうやって基本法の中に入れてくる。もう、めちゃくちゃだな、と正直思います。いまの農業の中で一番の問題というのは、とにかく農業をやる人たちがいないということです。

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今回の改正の中で、国が一番考えないといけなかったのは、1961年の基本法制定のときに「選択的拡大」ということで、耕種部門も畜産部門も単一化して、大規模化していったんですよね。それまで耕種と畜産というのは全部つながりがあって循環していた。その循環を切って、お金を儲けるためにということで進めていったことでいろんな問題が起こり、僕の父もそれに巻き込まれて破産寸前になって有機農業に転換した、ということがありました。現在起こっている畜産危機は、円高のために起こったと言われていますが、ほとんどのものを海外に依存して、そもそも畜産部門というものは土地がベースにあるものを、いわゆる施設だけでやろうとした、そのやり方、それは国が進めたやり方なんですよね。畜産団地や干拓事業もそうなのですが、国が近代化を、その先に「お金が儲かるぞ」と言ってやっていったものが、結局農民がそこで生きていけなくなっている。その一番基本的なことを、本来反省をした上で、このSDGsや人新世と言われる、自分たちの行動が自分たちだけではなくて、これからの未来の人たちの生きる環境であるとか、そういう経済的なものも含めて、場を失わせようとしている、という観点に立って本来はこの改正案をつくるべきだったし、そういうことをきっちりと農民も含めて関係者に意見を言わせるべきでした。そういうものが全然ない。

僕は国際的な会議などによく出席しますが、そういう場でよく言われていることは、「何か法律をつくるときにその当事者が入っていないものは全然意味がない」ということ。これが世界的に常識なんです。でも、日本のこういう法をつくる人たちの中で、農業に関わっている人たちが一体何人いたのでしょうか。そういう意味では本当に、ものの決め方から言って民主主義的な原則を外してしまったものであり、そういう傾向がどんどん強くなっている今の日本の状況。世界の状況を見ても気候変動や戦争、様々なポピュリストと呼ばれる「自分さえ良ければそれでいいんだ」という政治家がどんどん出てきているこの社会というものは、誰が見ても、若者が見ても未来を見通せないし、未来に希望を持てないものですよね。

ですから、そういう状況の中でこの農の在り方、そして行政の在り方というものは何なのかということは、本来問われるべきものであろうと思っています。
僕自身はいま、自分の農業の傍らで自給自足というものをあるところで教えています。僕自身はほぼ自給自足をしています。醤油も味噌も作っています。これは自分の自営のためでありますし、農民にとっては一番の武器だと思っています。生きるための最高のものを持っていると。でも国は、そういうものは捨てて儲かるものだけ作れとか、そういうものにはお金出しますよ、とかと言うので僕は言いたい。皆そんなものに耳を傾けるんではない、と。
なぜ僕が自給自足をしているか。それは、自給自足というのは農民以外でも誰でもできるんですよね。そして自給自足をすると、当然農薬関係は使わないです。自分が食べるものですから。そして、そのときに土のことや自然のことを考えて、そこに関わっていくと人というのは本当に変わっていくんですよね。そういうふうな人たちが増えないと、やっぱり世の中変わらないのかな、ということで今やっているわけですが。

 でも嘆いてばかりはいられない。「農民」に書かれているような実情は、世の中の人にはっきりと伝えて、じゃあそうではない本来の在り方というものを、これからに向けて今日はぜひここで皆さんと話をして、見つめていきたいと思っています。よろしくお願いします。

続いて「農村と都市の生活者の視点から」というタイトルで農家や消費者団体の皆さんから発言をいただいた内容を紹介します。6組7人の方々が会場とオンラインで率直な思いを伝えてくださいました。発言者の皆さんのダイジェストもご覧ください。

 

☆玉山ともよさん:兵庫県丹波篠山市の農家

私は夫と兵庫県の丹波篠山市で、無農薬・無化学肥料で野菜を大体1ヘクタールくらいで作り、直販で販売をしています。野菜は、少量多品目ということで年間40~50種類ほど作っています。
私のほうからの訴えとしては、1番目に「正直、もうこれ以上、補助金申請の煩雑な手続きのために、農作業にあてるべき大事な時間を奪われたくない」という気持ちです。
私たち農民は天気が良いときは作業をしたいですし、雨が降る前には種を蒔きたいし、苗を畑に植えたい。だけど、所得を増やすために事務作業を増やしてどうする!と思う。

2番目に「農水省や政策立案者は、そもそもの状況をお分かりになっていないんじゃないか」ということ。農民の平均年齢は見渡しても60歳を優に超えている。そういった、いわゆるご高齢の方々の中でスマホを使いこなせない、パソコンができないっていう方はたくさんおられます。なのにこれ以上、紙やオンライン上の仕事を増やしてどうするの?

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そして3番目に「農業で食べていけない」。これが農民が生きていけない・少なくなっている1番の原因なのはもう本当に明らかです。米の価格は最初から赤字なんです。それで、米は作るより買ったほうがいい、というのはもう常識です。30kgの米袋で1等が7000円、2等が6700円、3等が6000円という値段がつく。私たちは出していないんですけど、JA丹波の昨年の実績として、1等じゃなくて2等・3等が多いということは、1俵(60kg)で1万2000~3000円くらいにということになる。それでは到底食べていけるとは思えません。米、水稲がやっぱり日本の農業の基本ではないでしょうか。そういうことを考えながら、今日の午前中に農水省の方たちとのレクに参加させてもらったが、所得を増やすために経営力を高めたビジネスをするとか、複合経営・多角化・コスト削減・スマート農業などなどを組み合わせて、差別化・個別化・ブランディングをして、農家でしっかり考えるとかと言われたって「そんなもの最初からできるわけないやん!」と。もう「私らにどうせいっちゅうことねん?」という話なんです。
そんなことよりも、いかに農業を支えていけるようにするのか。米の値段はもう倍にしても足りないんですよ。3倍くらいになるようにしないと。せめて政府が農家に対して直接補助するべきだと思っています。

4番目に、多様な農業経営体というのが地域計画の中で、どのように位置付けられるのかが私のほうでは分かりません。兼業農家、自給農家、土地持ち非農家とか、青色申告をしていない農業が専業ではない人たち、でも田畑を耕している、景観保持に貢献している、そういった方たちにも補助金が申請できるような、また申請がしやすい仕組みをつくってほしい。だって、そういう人たちにも農業機械は必要だし、例えばビニールハウスが大雪で建て直しが必要というときだって、農業経営体としてカウントされない人たちには補助金申請にアクセスすることができない。
うちはたまたま去年から集落の中の農会長という立場を夫が預かっているんですけど、もうこれ以上、土地の集約とか集積とか、そんなことはできない。そういった農業政策があるために結局は集落の現場に負担がかかるだけで、私たちはそんなことをしなければならないほど余裕のあるわけがない。だけど本当に補助金申請のメニューはあったとしても、それにアクセスすることができない。それが私たちの大きな悩みでもあります。

最後に、有機農業について一言申し上げたいと思っています。有機JASがいかに面倒くさいか。これをどのくらいの方がご存じなのかは分かりませんが、申請手続きやほ場管理の報告書作成の作業だったりとか。あまりにもそういうことへの負担が大きすぎて、例えば認証に来てくださる方への交通費の負担ですとか、そういった負担は農作物の販売価格にはとても転嫁できない。うちの場合は、個人の消費者に直接送っていて市場に出していないので認証の必要性というのはそんなに感じないが、でもそのことで補助金申請するときに、認証のことで例えば環境保全型農業直接支払い交付金だとか、毎年毎年有機JASを取れ取れ取れっていう方向でのプレッシャーを感じる。

有機農業を推進するのも除草ロボットや除草する手間が省ける遺伝子組み換え作物の導入など、それは方向性として間違っているし、まったく効果的ではない。私はむしろ、地元に安全な由来がはっきりした堆肥センターをつくってほしい、と思っている。肥料は実際むちゃくちゃ高くなっていますし、そういったことが実際に農家がものを売るというときに価格転嫁できないということも、地元の安全な堆肥をできるだけ使うということが、農家だけじゃなく、農業をしたいという方に広く行き渡ることで農業を家族単位でも小さな単位でも押し上げていく、というそういうことが必要なんじゃないかと思う。
かんたんではありますが以上です。ありがとうございました。

 

☆高橋千佳さん:あいコープみやぎ理事長

発言の機会をいただき、ありがとうございます。あいコープみやぎの高橋と申します。今日はオンラインで宮城県仙台市から参加させていただいております。
私たち生活協同組合は、「自分たちの食べ物は自分たちの国で」「安全・安心かつ自然環境との調和を守ろう」と産地とともに取り組んでまいりました。

食料自給率の向上は、食料安全保障の観点からも早急に具体的対策を取るべきです。海外依存の輸入に頼るのではなく、肥料・飼料の高騰に左右されず、目の前の気候危機にどうやって対処していくか、農業従事者の減少にどのように歯止めをかけるかが緊急の課題だと考えております。

世界で最初に飢えるのは日本という、食料危機が訪れる構造から食の安全保障をどのように守るのか、私たちの日々の活動で取り組んでいるところです。
あいコープの活動を紹介いたします。消費者が生産現場を知ることに重きを置きまして、「無農薬交流田」や「畑の交流会」に留まらない「援農活動」を行っています。4月で3年目を迎える「産地応援し隊」は組合員が直接産地の農作業の手伝いで汗を流し、あいコープ独自の栽培基準、これは無農薬や有機栽培、そして農薬・化学肥料を減らす栽培方法は大変手間がかかりますので、マンパワーとして私たちの組合員が作業を行う取り組みです。登録人数が170人にものぼりました。私どもあいコープは、組合員数1万5000人の小さな生協ではありますが、様々な活動の中で食と農に関わる問題は組合員の関心が最も高い分野です。

担い手不足の深刻度が増す中で将来の農業従事者を増やすためにも、産地に寄りそった活動になります。そして高齢化と気候危機、肥料の高騰、鳥インフル、海水温の上昇による魚種の変化、東北・三陸の魚種もかなり変ってきております。様々な厳しい問題がある第一次産業。せめて生活が保障できる所得支援制度の確立も含めて、希望ある若者が安心して農畜産業に携われるように整備していくことを明示していただきたいと考えております。

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一方で有機農業を目指すことは「みどりの食料システム戦略」にある環境負荷を下げ、脱炭素への実現につながると思っております。土を育む持続可能な農業こそが食料自給率アップにも結びつくのです。あいコープでは「資源循環型農業推進プロジェクト」を立ち上げまして、生協の産直の特徴を生かし、地域循環型農業の推進を行っております。30年ほど前から行ってきた取り組みですが、世代交代が進むなかで、理念と技術の継承を再確認しながら加工メーカーも一緒になり、BM技術を導入した菌体づくりを行い、種堆肥を育てるという具体的な活動を「農法研究会」が中心になって行っております。豆腐のおから、ワカメなどの地域の廃棄物の有効活用ができることが分かり、地域で一丸となって循環型の持続可能な農業を目指しています。

優秀な土により収穫量を増やし、消費者が求めやすい価格、誰もが有機農産物を食べられるようにビジョンを掲げています。
日本の各地でどの土地にも気候に合った農作物、種が育まれます。「種を制する者が世界を制す」と言われるくらい大きな問題です。種子法・種苗法がいかなるものか、種をつなぐ活動を通じて学びを深めてまいりました。さらに、遺伝子組み換え・ゲノム編集問題に関しましては、一番大切なのは食品表示だと思っております。現在の食品表示制度では消費者の“選ぶ権利”が損なわれかねません。加工食品の原料原産地表示「国内製造」は消費者が誤認していますし、食べたくないゲノム編集食品は、表示義務がないので知らず知らずのうちに口にする恐怖すらあります。ゲノム編集トマトに関しては、小学校・福祉施設に「受け取らないでください」運動を実施、メーカーに「つくらないで」ハガキを送るなど手を尽くしており、全国の仲間の生協とともに安全なトマトに「OKシードマーク」をカタログに付けております。署名活動も展開してきました。私たちの声が届いているのだろうか、国が消費者にしっかり説明する義務があるはずです。先ほど「受け身の消費者」という表現がありましたが、そうは言われたくありません。食品表示の見直しを求めたいと思います。

最後になりますが、私たちあいコープは「社会福祉法人みんなの輪」との協業で、農・畜・福の連携にも取り組んでおります。畜産に関しましても、生産から加工まで一貫した透明度の高い仕組みを導入しておりまして、肥育の場から食肉加工場の作業まで、障害をお持ちの利用者さんの働く場になっています。食肉だけではなく、パン、菓子、農産品そして石鹸に至るまであいコープ商品の10%が「社会福祉法人みんなの輪」の商品です。障害のあるなしに関わらず、誰でも安心して暮らせる仕組みがあることで、私たちは生協だと胸を張って言えることができるのです。

人が中心にならない利益中心型の大規模農業を進めるのではなくて、小さな単位でも人間らしい家族農業を地域ごとに展開できるような税金の使い方をしてほしい、と切に願って私からの発言を終わりたいと思います。

 

☆國母克行さん:栃木農民連会長、安田理恵子さん:こくぼ農園で週2回有機野菜づくり

(國母さん)真岡市で農業をしている、こくぼ農園の國母です。動植物、細菌などを殺す毒物や化学肥料などを使わないで、生態系の力を借りて、いわゆるアグロエコロジーというものを意識しておりますけれど、米、麦、大豆、菜種、エゴマ、野菜など作っています。

農園の特徴として、生産物は産直提携、直販、通信販売などで消費され、他に地域の個人事業者の皆さんの協力で、豆腐、うどん、小麦粉、パンなどに利用され、自家製で食用油、味噌、醤油、納豆などを作っています。レストラン、そば屋さんなどとの繋がりもあり、ほぼ地域内で完結する形ができています。こういう形になったのは多少の営業活動もしましたが、地場産の安全で美味しい農産物を使いたい、食べたいという皆さんの要求に応える形で、非常に幸せなことですが、発展してきました。今は同様の考えの農家の仲間も輪に加わって増えてきています。
さらに、働き方も少し変わっていて、基本は家族農業ですが、稲、麦、大豆、菜種などは私が担当ですが、野菜部門はつれあいと娘が中心となって、そこに私のところの農業に関心を持って手伝ってくれる、子育て中のお母さんが5・6人加わって運営しています。大変頼りになる皆さんで、農作業はもちろん、宣伝、営業活動、流通など助けてもらっています。今日はその中の一人、安田さんに来てもらいました。

(安田さん)援農女子として、少し発言させてください。私が農業に関わるきっかけになったのは、友人に誘われ、畑を借りて野菜作りを始めたことでした。そこから農作業は時間を忘れるくらい楽しくなり、夢中になりました!そんな時、國母さんの講演を聞く機会がありました。地球・人・生き物に優しい持続可能な農業を目指されていることを知りました。その思いに共感し、こくぼ農園で勉強させてもらいたいと門をたたきました。

こくぼ農園には、私と同じように援農している子育て中のママ達が数名います。お喋りしながら、農作業を楽しんでいます。先日は私の中学一年生の息子も作業に加わりました。日光を浴びながら、土に触れ、人の役に立つ。そんな体験をさせてもらい、上機嫌で、充実した時間を過ごせたようでした。
こくぼ農園ではたくさんの野菜を作るので、様々な作業があり、飽きません。いただくお野菜も美味しく、いつも元気をもらっています。また、稲刈り、田植えなど季節ごとの農業体験会、味噌作り、納豆作り、麹作りなど貴重な経験をさせてもらっています。

最近は稲作の勉強会も始まりました。実家の田んぼを引き継ぐなどの理由で、女性5・6名が國母さんの講義を受けています。そろそろ、実習もできる時期になるのでワクワクしています。
少しずつつながりの輪が大きくなっているこくぼ農園です。
地球環境を守るため、私たちの健康のため、地域循環型の持続可能な有機農業が日本中に広がってほしいと思います。そのために、学校給食を有機給食にする取り組みが全国的に広がっています。私もできることをやりながら、運動を進めたいと思っています。ありがとうございました。

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(國母さん)今回の改正案についてですが、まず、予想される緊急事態にならないよう、農業をしっかり支援して備えてほしいということです。すでに手遅れになりつつありますが、今からでも変な対策、例えば農家は自分の体力をつけるために、こちらは支援しないから輸出で稼げですか!?国内で飢餓が始まりつつあるという事態なのに、そういうことを言うというのは信じられないです。輸出入は大量のエネルギーを浪費します。環境に配慮した農業を唱えているのに、それに全く矛盾します。感覚的な話になりますが緊急事態が起きて、政府が主導権を握るのを期待しているかのように感じます。

盛り込んでほしいこととして、◎法的な順序が逆になりますが、「みどりの食料システム」の中には推進方策として学校給食への供給の提案があったと思います。公共調達まで意識したものではないかもしれませんが、環境負荷に配慮した農産物は子どもたちに優先して食べてもらうのは、生産者にとってもうれしいことであるので盛り込んでもらいたいです。◎支援が法人など大規模化中心に、企業向けになってしまっているので、私のところのように多様な形の家族農業もしっかり支える方針を示してほしい。◎種子について全く触れられていないので、農民の種の権利を根本からしっかり明記してほしい。

評価できる点として、消費者が環境負荷などに配慮した商品を選ぶべきとしている点は、消極的とは言え当然と思います。ある意味、示唆的ですが輸入品ではなく、国産の環境に配慮したものを選んでください、という矛盾しているがそう解釈できると感じた。言い換えれば、消費者が食べるものを選べば農政も、もしかすると国政も変えられる。自分が食べるものを選ぶことで、ですね。今日のタイトルにもありますが「つながる、つなぐ」ですね。消費者の方々とつながって、そういう考えを皆さんと広げられたらいいなと思っております。

アグロエコロジーや真の有機農業が自然の摂理に従って人が生きていける方向を示すものなら、この改正案は私たちを困難に向かわせるものになりかねない、と思っています。

改正案は、基本的にあまりにもおかしいので、改正案の撤回と再構築を望みます。農業は土、水、空気、太陽、種子さえあれば食料を生み出せる無敵の職業と思っていました。しかし今これらすべてが、環境の汚染、気候変動、バイオテクノロジー、戦争などにより危うい状況にあります。これらの危機を乗り越える方向性を示すような、日本国憲法の下で光輝く農業の憲法と言える高貴なぐらいの改正案を私たちも加わって練り上げたい。

 

☆纐纈(こうけつ)美千世さん(日本消費者連盟事務局長)

今日はこのような発言の機会をいただき本当にありがとうございます。
最初に、この「食料・農業・農村基本法」の改正案は、今後の農業政策を左右するとても重要な法律であるにも関わらず、極めて短期間で決められようとしている。このことに私たちは非常に強い危惧を持っております。

また基本法改正案には消費者の役割について述べた条文があるのですが、私たち消費者・市民の要求に耳を傾けて検討されたとは到底思えません。食べ物や農業という、暮らしに関わる重要な法律であるのに消費者・市民が置き去りにされているというのは、非常に問題だと考えております。
それでは政府が出している改正案に対して、日本消費者連盟の意見を述べます。
改正案への要望はたくさんあります。日本消費者連盟は今年1月にこの改正に対する意見書を取りまとめ、消費者団体や生協などから賛同を得たうえで2月26日に農水省と意見交換を行いました。
意見書では7つの要請をしています。今日は時間が限られていますので3つにしぼってお話したいと思います。

1つ目は、食料安全保障が前面に出ていることへの懸念です。「食料の安定供給」という文言をわざわざ「食料安全保障」に変更し、これまでになかった「食料安全保障の動向に関する事項」というものを新設しています。問題だと考える理由は、政府が言う食料安全保障とは有事の際に食料が確保できるかどうか、という意味に捉えているからです。食料は常日頃、つまり平時から安定的に供給されるべきものです。しかし、現状を見て本当に安定的に安心して食料が供給されていると言えるでしょうか。食料の多くを海外からの輸入に依存する現状こそが問題で、そのことに対する危機感が足りません。国内生産の落ち込みの理由の1つとして、審議会などでは「農家の離農」をあげていますが、なぜ農家が離農せざるを得なかったのか。そしてなぜ、農業を引き継ぐ後継者が育たなかったのか、という原因が議論されていないように思います。農業政策の失敗に関する詳細な分析・検討が行われていない。これが問題です。本来であれば、その反省の上に立って基本法を改正するべきなのに、そのような議論が行われていないことが問題です。そしてこの問題に関していえば、気候危機が深刻化し、各地で紛争が頻発しているため、「食料安全保障の確保が重要ではないか」という声もありますが、基本法改正とともに出されている「食料供給困難事態対策法案」などを見れば、戦時を想定していることは間違いないのではないかと思います。いま政府は「戦争する国づくり」に向けて着々と準備を進めています。そのような中で「食料・農業・農村基本法」もその動きに絡め取られている、という不安が拭えません。

問題点の2つ目は食料自給率の問題です。食料の輸入自由化を進めたことによって、自給率が主要先進国の中でも最低水準になっている危機的な状況を改善しようという姿勢が見られません。第1章の目的に、「自給率の向上を図ること」をしっかり明示するべきです。そして、食料の輸入依存体質からの脱却を明確にうたうべきだと考えます。

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最後に「食料・農業・農村基本法」に対する思いを述べたいと思います。輸入に頼ったり、自然の営みを無視した技術を使うことのない、安心・安全な食料が常に確保されて皆にきちんと行き渡ること。そして家族農業が安心して営め、それが次世代にもつながっていくこと。そして農村が単なる食料供給地ではなく、人と人がつながる豊かな場所になること。それを私たちは望んでいます。この基本法はそのための法律になるはずです。日本消費者連盟は、皆がつながって家族農業を支える基本法にするためにこれからも取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございます。

 

☆下山久信さん:全国有機農業推進協議会理事長、千葉県成田市の農家

先ほど池上先生が話された、政策決定のことについて話されましたが、裏話を含めて、いかに一部の議論だけで進めているかということを話したい。
自民党の農林族と農水省、それとJAが密室で決めてきた、ということです。ことは2022年の12月に森山(裕)さんが、「食料安全保障」と言ったんですよね。ウクライナの戦争を受けて。やっていることは戦時立法なんです。自民党本部で行っている自民党農林合同会議というものに私も参加して話を聞いているんですけど、その会議ではほとんど意見が出ない。大体が森山さんが発言して、衛藤(晟一)さんが発言して、それで終わり。政府の強化本部というのは、ほとんど議論もなしですよ。自民党が決定した内容と全く同じ。はっきりと申し上げてめちゃくちゃですね。

今日これまでにいろいろと議論ありましたけれど、昨日も私のところに記者が来て「農地の件で見せてほしい」とのことで案内したのだが、いま成田空港周辺で起こっているのは農地バブル。熊本の菊陽町と同じ。うちのほうは市街化調整区域だから不動産屋がしょっちゅう来る。「土地売ってください」と。「1アールいくらか?」と聞くと「坪10万」と言う。1アールは300坪だから3000万円。1ヘクタールでいったら3億円ですよね。それで今回、農地の法律の規制が出るんだけど、成田の場合「地域未来投資促進法」というものがあって、いわゆる農業振興農用地を除外申請して、そこに例えば海外の物流会社が物流センターをつくるとか、農地法には国籍条項がないですから多古町にも海外の実験農場がある。日本にはそういった規制がないから、バイエルンも実験農場を持っている。結局、いま起こっている事態というのは多国籍企業に日本の農地が抑えられている、ということです。それは衆議院議員の北神(圭朗)さんがその話を国会でいろいろと質問しているけれど、それに対する岸田首相の答弁はめちゃくちゃ。このままいくと外国資本に農地を抑えられてしまう。

農地はこの60年間で170万ヘクタール減っている。いま「地域計画」をつくることになっているが、農業委員がアンケートを配って、それを回収して集落で会議を開いて、10年後や20年後、この畑や田んぼは誰がやるのか。そもそも、そのアンケートを記入して出さない。回収率40%。これも絵に描いた餅。それと担い手の問題について、これは頭にきたから農水省に言ったんだけど、スマート農業の政策には、20年後には農業従事者は30万人になります、と書いてある。ふざけるな、と。これは国の政策の失敗なんだと。だから人がだめになって農地がだめになったことへの総括が何もないじゃないですか、今回の基本法改正で。売国法だね。

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だからこれは国会の議員さんたちにがんばってもらって、継続審議にしないといけない。それで戦時の法律は廃案!これでいかないとだめですよ。いま起こっている事態はそういうことですよね。食料安全保障とか言っているけど、食料自給率のことは書いていない。ほんとめちゃくちゃな法律だよ、これ。

基本法というのは理念が必要なんですよ。国民のためにどうするのか、という理念とか志がないといけないのに、それがない。現行基本法はつくるのに6年かかった。農業政策に有機農業推進を入れないといけない。私は当然入るものだと思っていた。「みどり戦略」を3年前につくったんだから。農水省のホームページに基本法の説明があるが、そこに以前は有機農業の推進というのが入っていた。ところが2月13日の自民党の農林合同会議以降、それが消えた。これにも何か裏の話があるんじゃないか。スマート農業も、あんなに高い機械買って、ただでさえ合わないのに成り立つわけがない。されと残念ながら、農地が資産になっている。私の成田の家は市街化調整区域で、固定資産税は1アール6万円。2アールだから12万円払っているけど、富里市で私の子どもや孫が5ヘクタールで有機野菜をつくっているが、そこは農業振興農用地だから固定資産税は700円なんです。700円と6万円。つまりそれは国民の財産なんです。コモンなんです。そういうことがちゃんと議論されないとダメ!以上です。

 

☆斎藤博嗣さん:一反百姓「じねん道」/FFPJ常務理事

茨城で農家やっています。うちは“一反百姓”と言いながら、実際には8反歩やっています。一反歩というのは、自然農法の父・福岡正信さんの「国民皆農」と言って、全ての問題の解決は1人1人が農民になるしかないと言って、1人1反という考えが由来です。

はじめに活動紹介をします。先ほどもお話しましたが、私は屋号を一反百姓「じねん道」(齋藤ファミリー農園)としていまして、2005年に東京から茨城県阿見町の農村に移住し新規就農しました。今は夫婦と子ども二人で、小さな家族農園を営んでいます。
一反百姓「じねん道」では「緑の百姓哲学」を実践していて、福岡正信さんが唱えた『不耕起・無肥料・無除草・無農薬』の4原則での栽培をしています。永続的な非暴力農法、「地球を生かす農」であり「地球で生きるための農」だと思って、アグロエコロジーだと思って取り組んでいます。一反百姓はこの新自由主義の中で、新“自給”主義だと思って取り組んでいます。一反百姓とは「1億総生涯現役社会」のためのものです。地方創生と人生100年時代における究極の働き方・暮らし方改革だと思って、実践しております。

子どもたちと柿渋を、ちょっと湿気があるところやおもちゃの積み木に塗ったりして、暮らしが仕事・仕事が暮らし・24時間365日自学自習。農産物をつくることが農業者だと私たちは思っていないので、だから“百姓”、百のことを生業とする者として百姓と言っていますけども、こういった農作業以外の部分、子どもたちの勉強の自給、医療の自給、全て自給するということで百の仕事をしている。私はだから「何をつくっているんですか?」と聞かれたら、農業生産者として作っているものもたくさんあるんですが、むしろこういった背景をお話することのほうが多いです。五感を研ぎ澄ませる野良仕事。これは子どもが井戸水を汲んでいる写真ですが、いつもこれをやっているわけではありませんが、こういった形でやっています。ほぼ暮らしそのものが防犯対策につながっていると考えています。

そして野良仕事の中から、等身大の自己肯定感、自分自身の大きさを手足で感じ取る。頭の中だけじゃなく、手足で感じることそのものが子どもたちにとっても私たちにとっても重要な暮らしだと思っています。「自然は無教育にして最大の教育者」であり、子どもたちは「じねん童」ですね。本当の自己肯定感を含む、他者との比較ではない、西洋のネイチャーのほうではない、日本の「自ずから然り」のほうの自然の力を身につける暮らしだと思っています。百姓の食卓は無形文化遺産だ、とも思っています。

それでさっきから子どもたちの写真は小さいときのものばかりですが、もう高校生になっていて、最近「金融と経済を考える」高校生小論文コンクールで日本銀行総裁賞というのをいただきました。これは「自分の足元から考える環境と経済の両立」という題名です。日銀の方が高校まで来て表彰されました。これ、地元の茨城新聞に掲載された記事です。あと、もう1つ連続受賞で「NPO法人世界遺産アカデミー」が『世界遺産×SDGsチャレンジ!小論文部門』という、これも最優秀賞を受賞しました。「自分の足元から意識する世界遺産地域について」というタイトルで。娘は私よりよっぽど優秀なんですけど。
地域の小学校や大学生にもレクチャーするんですけども、子どもたちや大学生に農業や農村に対するイメージを聞くと、15K、マイナスイメージです。「きつい」「汚い」「かっこ悪い」「稼げない」「危険」「結婚できない」・・・これずっと読んでいくと長くなるんですが「過疎化」「後継者不足」「血縁強すぎ」「結論が出ない」「個人主義はNG」「家父長制」などが出されます。

しかしですね、一方で私は畑などで「カルティベイティブ・ラーニング(Cultivative Learning)」と言って、カルチャーの語源はAgriculture(農業)です。文化を耕す、ということは自らを耕す。「自耕的・身体的で永続性のある農による学び」をカルティベイティブ・ラーニングと呼んでいますが、ポストSDGsは「ウェル・ビーイング(Well-Being)」だと言われていますけれど、これは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」ということを示しますが、これを生涯に渡って高めていくためにカルティベイティブ・ラーニング、自分の生活を農を通して作り上げるということが重要だと話しています。

ちなみに私、6月に上智大学で非常勤講師をするんですけど、上智大学は「体育」という科目を「身体知」という科目に変えるらしく、その中で私は農業の話をすることになっている。これはつまり食、自分の体をつくっているものは食である。プラス食はどこから来ていて、どのように生産されているのか。そこにさらに私が問いたいのは、その生産者なり作っている人が何を感じて自然との交換、草であったり虫であったり、空気であったり、全てのものを私たちは百姓としてすべてを交換しながら農作物を作っている、そういう話も今のこのAI時代に、あらゆる職業が減っていくと言われていますが、最も大事な身体に返っていくということをむしろ言っています。ラテンアメリカでは「小農大学」といって私のような農民の人が講師・教授になって講義を行う大学もたくさんあります。

それで新農業基本法への私の見方ですね。改正案では「食料」だけを見て「農民」「農村」を見ていない基本法、というのが私の感じたイメージです。もう食料だけを追いかけて、国民・消費者の食料さえ手に入れば、農民と農村はいいのか、というのが私の全体の印象です。

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それで茨城新聞にも載りましたが、「改正案では食料安全保障の確保を基本理念に位置づけ、食料供給困難事態対策法案では農家に生産拡大を要請し、増産計画の届け出を指示できると規定し、農地法などの改正案では農業法人への企業の規制を緩和」などと、もうむちゃくちゃなことが書いてありますが、その中で同じ新聞の特集欄に『「食」を支える茨城の農水産業―「品質で勝負」切磋琢磨』という非常に素晴らしい取り組みも載っているのですが、この「NIPPON FOOD SHIFT―食から日本を考える」、これ農水が応援しているみたいですが、実際には生産物、食の部分だけをクローズアップしていて、もちろんお米を高く売りたいから、こうやって取り上げられることは生産者にとってすごく有難いことですけども、この記事の最後の部分は「国の政策は大規模化、省力化、輸出のほうに向いている。それには乗りたくても乗れない。田んぼも小さいから」「国土保全の観点からも、農政には中山間地域の農業にもっと目を向けてもらいたい。兼業・家族経営を認めて育てていかないと、山間地の田んぼはなくなってしまうのではないか」と地域の生産者さんが話している。現状はこっちです。むしろ、こっちをクローズアップしてもらいたいと私は思っています。
農業の多面的機能などですね、農民の役割はもっといろいろ深いものがあります。そして「世界農業遺産」、私は自分の畑を農業遺産だと思っていますし、あらゆる農民が同じように取り組んでいると思います。

「多様な」という言葉は便利ですけども、農業の主体や農業人材や農地の具体的ビジョンがもっと必要だと思います。私の地域でも企業が入ってくるといろいろな問題、不法投棄ですとか不法残土を置いたり、本当にひどい状態です。法人で働く人というのは、ほとんど地域人ではないです。地域人というのは「生命」「生涯」を「生活」の場だとする人だと思っています。
「農」に関するローカルな知は、『生活知』という農家の経験から生まれた「知」なので、この農家から学ぶ「地に着く」姿勢が私は必要だと思います。

最後にFFPJとして、「家族農業以外に持続可能な食料生産のパラダイムに近い存在はない」とグラチィアーノ・ダ・シルバFAO元事務局長は言っています。この小規模・家族農業は大変な作業や責任の共有によって強まり、家族の絆、コミュニティの信頼と平和・知識の交換、世代継承、生物多様性やその他多くのことを私たちに教えてくれる生活です。私はこれを「農的ワーク・ライフ・バランス」と呼んでいますが、いま少子化の中で「家庭円満農業」の価値というのは計り知れないと思っています。

農水省とも一緒になって営農が続けられる政策を考えていきたいと思います。SDGs達成のためにも、世界的課題解決のためにも小規模・家族農業やアグロエコロジーは世界的潮流です。
「小規模・家族農業の価値」を再評価するビジョンを示す“農家が主体”“農民目線”の改正をお願いして私の発言とします。ありがとうございました。

 

続いて池上甲一さんによるFFPJとしての「行動の提案」です。


時間が余りありませんので、5分ぐらいで終わりにしたいと思います。ここでは11の項目を「行動計画」として掲げました。
重要だなと思うところだけ申し上げておきます。

これが何と言っても重要なのですが、「国民合意に向けた十分な議論が担保できていない」ということですね。急いで成立させるな、ということが一番だと思います。撤回ないし、新しい基本法のつくり直しというところまで本当は考えなきゃいけないと思います。これが一番大事な点です。

それから2番目に、FFPJは家族農業を支援する政策の強化というものをうたっていますので、「国内行動計画の策定」ということが一番大事だと思っているんですけども、寺田議員が昨年の国会質問で聞いたら「策定しない」と回答したそうで、今日午前中の農水省のレクチャーでも「そのように局長が回答している」というふうに明言されました。非常に残念です。日本は「家族農業の10年」の提案国でもありながら、「行動計画」をつくろうともしないということに対して、強い遺憾の意を表明させてもらいましたが、今後も「行動計画」の策定求めて、引き続き活動していきたいと思います。

3番目はちょっととばしまして、4番目「食料供給困難事態」という変な名前になりましたが、これはまさに下山さんもおっしゃられましたが、有事法制であることは間違いないと思います。これに「経済安全保障」や防衛予算の一方的な急増などを考え合わせると、戦争できる普通の国を目指しての一連の流れではないか、そういうものの一環だと考えています。従って、一番大事なことは食料供給困難事態など発生しないようにすること。家族農業を充実させることということです。同時に、戦時状態にならないようにするための「平和を求める活動」ですよね。これがやっぱり、そもそもの基本だと思います。平和なしに食料の安定的確保ということはあり得ないですね。「そうじゃない」という人や、北朝鮮や中国がどうだ、と言いますが、そういうのは言い訳です。そうじゃなくて、だからこそきちんと平和交渉をしないといけない、ということですよね。平和こそがまず、食料確保の大前提だということを国是として定めることが大事かと思っています。

今の点は「食への権利」「食料主権」という、食べるほうの側からと作るほうの側からの権利という出発点だったものが、だんだんと接近してきていますので、食への権利と食料主権を同時に追求していくような制度ということが大事と思います。

次に(5番目)種苗ですね。いくらいいものを作れと言われたって、苗がなかったらどないすんねんっていう話なんですよね。そして、サツマイモの苗を渡して「さあ作って」と言っても、そんなに簡単にできるものではありません。不足事態には「計画」をつくらせて、その指示に従わなかったら「公表します」という、制裁の法をつくるというのは本当に発想がおかしい。話を戻しまして、種苗に関しては「UPOV(ユポフ)条約」を日本政府はどんどん他の国にもいま推し進めようとしています。それに対して、逆の方向から農民の権利を認めさせる制度化を求めていかないといけない。遺伝資源も地方自治体や民間が持っていたものが非常に厳しくなっていて、それを公的な形できちんと保証していくという仕組みがないので、そこも非常に大きな問題だと思っています。

それから6番目が、統計ですね。これは講演でも申し上げましたが、ちゃんとしたエビデンスベースにするための統計をきちんと整理するということですね。種の話で言うと、「種子統計」が何年か前になくなっていますので、これを復活させるとか、統計スタッフを増員するとか、まさにこういう所にこそデジタルをうまく使うとか、そういうことが必要だと思います。

それから(7番目)食と農を結び付ける仕組みとして、生産者と消費者が一緒に政策提言ができるような「食農政策会議」のようなものを、まずは地方自治体から求めていきたいと思っております。

それから(8番目)農業のデジタル化の前提として、農民の権利を保障する「情報主権」ということも同時にきちんと導入することも大事かと思います。

それから9番目の「適正な価格形成」ですが、これはすべてを価格に上乗せすることは現実的ではない。それも大事ではあるけれど、直接所得補償のほうがメインではないかというふうに思っています。その直接所得補償を優先する政策をきちんと考えていってもらえるように提言していきたい。
10番、11番は時間の都合で省略して、最後に申し上げたいのは先ほども言いましたが、研究者も含めて「哀しみの農業」になるような農学や科学や政策ではなくて、「楽しみの農業」になる、そういう社会になるように努力をしていきたいと思っています。以上です。

最後にFFPJ副代表の二平章さんからの閉会あいさつです。


どうも皆さん、長い時間ごくろうさまでした。私は、FFPJの副代表という肩書きですけども、元々は私は漁業・水産のほうの代表で、たまたま副代表になっているわけでして、農業との関連では私は自宅の目の前の40坪の土地で野菜だけは作っているということで小小小規模な農の人でもあります。そういう意味で、農業政策についてずっと勉強してきたわけではないのですが、やはり漁業政策・水産政策というのは、農業政策ができてから1~2年後に決まってくるという、関係性がある。そういう点では今日の議論、本当に私も勉強させてもらいました。池上先生からお話があった中に、今度の改正基本法については、やはりいろいろと問題があるということです。やはりスケジュールありきで、ほとんど現場の意見を聞かないでつくっていくというのが一番の問題なのではないかと。

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水産のほうでは2018年に漁業法の改悪、「新漁業法」と言われていますけれども。それがつくられたときと、やはり同じですね。ほとんどの全国の漁民は知らない。組合長すらも知らない中でできた改悪漁業法が、いまその具体化がどんどん全国の漁村でやられている状態です。いま漁民の方々が「なんでこんなことが始まっているんだ」と言われるが、それは2018年の改悪にそって水産庁は進めている、というわけなので、全く同じではないかと思います。
そういう意味では、従事されている方々の直接的な意見をたくさん聞くという姿勢が、農水省には全くないという、農民や漁民のことは考えていないというのが、今の農政だと私も実感をしています。

その他に今日、とっても勉強になった6組7人の発言。なかなか私もこういう機会がない中で今日はたくさん聞かせていただきました。私はやはり、ここに希望があるんじゃないかと思いました。本来ならもっとたくさんの時間で、この方々にもっといろんなお話をしていただきたいなと思いましたが、その中には夢のある話も出てきたし、具体的な「もっとこういうふうにしてほしい」などの提案も出ていました。こういう方々がもし、政府の審議委員になっていれば、もっと素晴らしい改正案ができただろうと思います。

だから今日は国会議員の方々もここに来られていましたけど、国会そのものが変わっていかないと、やはり農業・漁業にとっていい法律はできてこないのではないかということを、またあらためて私も今日ここで確認しました。野党の先生方が今日ここに来られましたけども、ぜひ国会でがんばっていただいて質問もしていただき、また政治の世界で政府を変えていくようなことに一緒になって運動を起こしていければと思いました。
本当に今日は皆さん、ありがとうございました。ともにがんばっていきましょう。

3月14日の院内集会の全体の動画はこちらです。