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 【報告】第2回SDGs実施指針改訂に向けたパートナーシップ会議 池上甲一さん

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2022年10月24日に開催された「第2回SDGs実施指針改訂に向けたパートナーシップ会議」に参加した池上甲一さん(FFPJ常務理事・近畿大学名誉教授)が報告を寄せてくださいました。池上さんの報告は以下の通りです。

 日本政府は2023年度末を目途に、「SDGs実施指針」の改訂作業を進めている。民間の委員15名から構成される「SDGs推進円卓会議」は、この改定プロセスに幅広い市民団体の意見を反映させたいという意図の下に、パートナーシップ会議を設けた。第1回は2022年7月27日に開催された。この会議の参加報告はFFPJのウェブサイトに掲載済みである。第1回では可能な範囲で関係団体・組織が指針改訂に向けた「提言」をまとめるための機会を設け、その結果に基づいて「提言」を事務局に提出することが了承された。FFPJでは「提言」を検討する機会を設ける時間的余裕がなかったが、池上が共同代表を務める西日本アグロエコロジー協会では少人数ながらもワークショップを開き、そこで出された意見を取りまとめて事務局に提出した。

第2回は2022年10月24日に開催され、第1回に引き続いて池上が参加したので、その概要を報告する。午前中は全体会議と分科会、午後は分科会の結果を持ち寄っての全体会議が行われた。分科会は第1回と同様にSDGsの5つのP (People, Prosperity, Planet, Peace, Partnership)に対応して分かれており、今回も家族農林漁業と深く関連するPlanetの分科会に参加した。

午前中の全体会議では、最初に蟹江氏(慶応大学大学院)によるSDGs実施指針改訂に向けたプロセスとパートナーシップ会議の意義、第1回会議の概要が報告された。続いて、稲場氏(GII/IDI懇談会NGO連絡会代表)が、各団体から提出された「提言」に関する取りまとめを説明し、最終的には「提言」とパートナーシップ会議の議論を取りまとめ、円卓会議が政府の「SDGs推進実施本部」に提案する際に「みんなでつくってきた提言」なので尊重するように強く申し入れたいとの方針を表明した。提出された提言は29あった。いずれも日本協同組合連携機構(JCA)のウェブサイに掲載されている。

その後4件の報告があった。キーワードはジェンダー、人権、政府と非営利組織との関係、難民、ウェルビーイング、超高齢社会など。日本の首長のうち女性の占める割合は2000年ごろ0.5%だったが、現在は少し増えて2.5%となっている。しかし、いまだに1割にも遠く及ばない。女性、難民、移住者、高齢者を含めて、日本では人権に関する意識が希薄であらゆる主体の当事者意識を高めるとともに、政府が積極的に関与・支援するように従来の姿勢を変える必要があることを改めて感じた。

分科会ではまず、根本氏(国連広報センター)が気候アクションキャンペーンについて紹介し、危機の「自分事化」と行動の重要性を強調した。次いで、第1回の分科会の振り返り、プラネット(第3分科会)にかかわる提言についてのあらましが報告され、これらを統合した第3分科会としての「まとめとしての提案」案が示された。ゴール13に関して、火力発電ゼロと再生可能エネルギーの主要電源化が欠かせないこと、2050年目標では遅すぎること、日本のフロン回収技術について再評価してもよいといった意見がだされた。

池上は西日本アグロエコロジー協会の提言に基づいて、直接プラネットにかかわる課題と全体の組織運営のあり方にかかわる課題の2点について述べた。まず前者については、①現段階での「まとめ」案に記載されている「有機農業」の推進についてその主体が不明確である。「みどり戦略」が想定しているモノカルチャー型の有機農業経営体ではなく、多品目少量生産の本来的な中小規模の有機農家を主体として明記すべきである。②農山漁村地域と家族農林漁業の役割を実施指針に反映させる。

次に後者の組織運営のあり方については、8月のFFPJ常務理事会で出された意見を踏まえて、③SDGsのVNR(自発的国家レビュー)と家族農業の10年のモニタリングを連動させること、④円卓会議の構成の見直し(とくに小規模家族農家をメンバーに入れる)などについて意見を述べた。

最後の全体会議では各分科会の討議の結果をそれぞれラポルトゥール(第3分科会は江守正多・東京大学教授)が報告した。第2回パートナーシップ会議の後、それぞれの討議結果を円卓会議で議論し、できるだけ多彩な意見を反映して取りまとめ、実施本部に提出するよていであることが説明された。