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【報告】世界農村フォーラム(WRF)交流セッション:国連家族農業の10年(2019ー2028)国別行動計画の作成:現状における課題と機会

国連「家族農業の10年」(UNDFF)の開幕式で採択された「世界行動計画」では、地域ごと、各国ごとに、それぞれの条件に応じた行動計画(地域行動計画、国別行動計画:NAP, National Action Plan)を作ることが盛り込まれています。2020年8月現在で、国別行動計画承認済みの国がガンビア、インドネシア、ペルー、ドミニカの4か国で、作成中の国がフィリピン、ネパールなど5か国にとどまっており、2024年までに100か国、5つの地域(アジア・大洋州など)、7つのサブ地域で行動計画を策定済みという目標には程遠い状況にあります。2020年の6月30日には、農民・市民社会組織(WCC)が策定を加速するようにという共同宣言を出したところです。

このような状況の下で、2020年10月29日にFAOのバンコク・オフィスがホストになって、WRF主催のオンライン会議が開催されたので、常務理事の池上甲一が参加しました。参加者数はアジア地域全体に及ぶ56人でした(開始時)。目的は、アジア諸国の体験共有とNAPの策定促進です。この催しは開会式、3つの報告セッション、質疑、まとめという全体で4つのセッションから構成されていました。

開会式ではWRFダイレクターのLaura Lorenzoさん、IFAD(国際農業開発基金)のJean-Philippe Audinetさん(生産者組織・農村開発担当)、タイの国連常任代表(ローマ)で、UNDFFの国際運営委員会(ISC)メンバーでもあるThanawat Tiensinさん(世界食料安全保障委員会、WFC議長)からスピーチがありました。

次に国別行動計画と地域行動計画の概観が、WRFのNCFF地域コーディネーターであるBelén Citolerさんから報告されました。現在、54か国と8つのサブ地域で計画の策定作業が進行中で、今後その内容を詳しく調査していく予定のようです。早くに国別行動計画ができたガンビアとペルーについては、FAOがパートナーとして関与していたとの説明を受け、やはりFAOとの連携・協力は大事なことを痛感しました。次の報告セッションではアジアの地域イニシアティブとして、アジア・大洋州の地域フォーラム、キャンペーン、南アジアの地域コンサルテーション(予定)がアジア農民機構(AFA, Asia Farmers Association)、フィリピンのラス・ボナス大学、インドの南アジア地域協力連合(SAARC)のそれぞれの担当者から報告がありました。3つめのセッションでは各国の経験共有が目的で、すでに策定済みのインドネシア、策定中のネパール、フィリピンから報告がありました。討議では政府との関係の作り方や策定過程の重要性、各国の事情に応じた枠組みと行程の必要性などが議論されました。

印象に残ったことは、第1にアジアでもカンボジア、インド、日本などで市民社会が策定に取り組み始めていることの紹介、第2に政策と行動に結びつけるために、政策決定者の関心をひきつけ、SDGsの中心に家族農業を置くように働きかけることが大切だということ、第3にコロナ問題をきっかけに、緊急的・短期的な対応から長期的な転換に切り替えていく必要があること、第4にこの点で2021年に開催される食料システム・サミットが重要であり、そこではSDGs、食料保障(確保)、食料主権、アグロエコロジーなどが議論されるとの見通しが示されたこと、などです。政府が公式な策定主体なので当然ですが、とくに、政府との良好な関係と政策対話の場の構築が重要であることを痛感しました。今後、FFPJとして努力していくべき分野です。

開催概要

世界農村フォーラム(WRF, World Rural Forum)交流セッション:国連家族農業の10年(2019ー2028)国別行動計画の作成:現状における課題と機会

主催:世界農村フォーラム(WRF, World Rural Forum)

日時:2020年10月29日17時~19時30分開催

場所:オンライン

Exchange session “Developing National Action Plans of the UNDFF 2019-2028: challenges and opportunities in the actual context”

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