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【報告】「2020年 世界食料デーイベント」に参加しました

国連食糧農業機関(FAO)が設立された10月16日は世界食料デーです。今年はFAO創立75周年の節目でした。世界では気候変動や新型コロナウィルス禍によって飢餓や食料不安に直面する人が急速に増加することが懸念されています。その中で、持続可能な農業・食料システムへの転換と国連「持続可能な開発目標」(SDGs)実現に向けた行動が求められています。FAO駐日連絡事務所が主催する世界食料デーイベントにFFPJ常務理事の関根佳恵氏がオンラインで参加しました。以下は、FFPJの活動に関わる部分についての関根氏からの報告です。

イベントでは国連世界食糧計画(WFP)が2020年ノーベル平和賞を受賞したことへの祝意が示されるとともに、増加する局面にある栄養不足人口への危機感が共有されました。その上で、国際農業開発基金(IFAD)のローマ本部から参加したロン・ハートマン氏(グローバルエンゲージメント・パートナーシップ・資金調達部長)は、飢餓をゼロにするために小規模農業を支援することが重要であると強調しました。FAO駐日連絡事務所長に2020年9月に就任した日比絵里子氏は、持続可能な農業のパラダイムに転換し、食料システムを変革する必要があり、そのためには過小評価されてきた小規模・家族農業の再評価と支援が欠かせないことを訴えました。また、気候変動やコロナ禍に直面して大規模・集約農業の限界とこうした農業モデルは環境外部コストが高いことを認識した今、アグロエコロジーやそれを支える小規模・家族農業を重視すべきだとの認識を示しました。

司会の国谷裕子氏(日本担当FAO親善大使)は、以上の指摘を受けて、日本における小規模・家族農業の役割や重要性について農林水産省の大澤誠氏(農林水産審議官)に質問しました。大澤氏は、国内でもいろいろ議論があるとしたうえで、「日本は小規模農業が98%」を占めており、こうした農業が「急速に高齢化し減少している」ことを指摘しました。特に中山間地域等の「山がちなところでは人口が減って生産基盤が維持できなくなっているため支援が必要」であるとの認識を示し、「輸出を目指す産業政策と地域政策のバランスが重要」と指摘しました。また、2021年の食料システムサミットでは、健康的で地域の食材を利用した和食のよさや「食への想い」も含めて日本の考え方を世界に共有していきたいと述べました。

総括として、司会の国谷氏はアグロエコロジー、小規模・家族農業等の重要な概念が示されたことを強調しました。日比氏は、「家族農業に対する非近代的等の負のイメージを払拭して、SDGs実現のための担い手として位置づけて支援していくことが重要」「そのためには地元(ローカル・地域)に焦点を合わせる必要がある」とまとめました。最後に、日本担当FAO親善大使の中村勝宏氏(日本ホテル・ホテルメトロポリタンエドモント統括名誉総料理長)は、シェフとしての立場から「小規模・家族農業は世界の90%、日本の98%を占めており、日本最大の素晴らしいものを提供しているスペシャリスト。漁業でも同じ」と実感を込めて話し、彼らこそ「食のヒーロー」として讃えるべきとまとめました。

開催概要

日時:2020年10月16日(金)

主催:FAO駐日連絡事務所

共催:IFAD、WFP日本事務所

後援:外務省、農林水産省

2020年 世界食料デーイベント/World Food Day Event 2020

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