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【報告】FFPJオンライン連続講座第10回&日韓国際環境賞受賞記念企画

小さな林業、大きな未来

「自伐型林業」という地方暮らし

· ニュース

FFPJオンライン連続講座第10回 小さな林業 大きな未来 「自伐型林業」という地方暮らしが1月22日(土)19:30〜21:00まで行われました。講師はFFPJ副代表で自伐型林業推進協会事務局長の上垣喜寛さんです。以下は、上垣さんの講義部分の文字起こしになります(資料はこちらからダウンロードできます。また、末尾までいくと、YouTubeの動画をご覧いただけます)。

FFPJ副代表で自伐型林業推進協会の事務局長をしています上垣喜寛と申します。この度は貴重な機会をいただきまして、そして多くの方々に参加いただきまして本当にありがとうございます。さっそくですけれども、私の方から林業のお話をしていきたいというふうに思います。 

「小さな林業、大きな未来」ということで、自伐型林業のことを今回、紹介していきたいなというふうに思っています。関根さんからも紹介いただいたとおり、今回、第27回「日韓国際環境賞」という賞をいただきました。アジアの方の1団体と日本代表が1団体。日韓国交正常化30周年からできた賞で、27回目を今回、日本代表として受けたというところで大変、光栄なところで今回も発表させていただくことになりました。

そのとき評価された点としては、これまでの森林環境ボランティア的な切り口での活動とは一線を画すとまでは言わないんですけれども、より仕事にすること、あとは環境保全を実現する林業のやり方を開発しているという点で、私たちの団体が選ばれました。2014年に団体としては立ち上がって、まだ8年程度なんですけれども、いまこの自伐型林業という、勤め人でもなく、木を切って出すだけの林業ではなく、そこで林業とか農業とか一次産業または観光とか、そういう中山間地で暮らすことを目的に林業を導入している人たちが今、だいたい2,500人くらい、この7年間の活動で出てきたという点で評価されたというところになります。その林業のことを日本と世界との今の森林の状況も含めてお話できればと思います。初めての言葉とかも多いと思うので、専門用語についてはいろいろとできるだけ使わないように頑張りますけれども、もし分からないところがあったら後ほど、質疑のときに聞いていただければというふうに思います。

今この4人出ているのが、鳥取県智頭町という人口7千人の地域で暮らしている人たち、皆、自伐型林業というやり方で林業を始めた人たちです。右から2番目の人がUターンで戻ってきた人で、だいたいみんな智頭町というところから外に出た人、また左の2人なんかは他所から智頭町というところに移り住んできた人たちです。その人たちが新規参入しやすい、そして生業にもできる形がこの自伐型林業というところで、この智頭町だけでも今、30人くらいが仕事として始めて、生業をつくっております。今回、目次としては、まず森林の役割、これはもう、みなさんの方が詳しいと思うので、さっと話題提供的なところに留めますが、メインは日本の森林と林業と、小さな林業「自伐(じばつ)型林業」という、2と3にボリュームをあてていきたいと思っております。 

1. 森林の役割

森林の役割というのは、戦後は木材生産ということで、森で切った木を出すことが経済に貢献するよということになっていたんですけれども、2000年代くらいから、森林の機能というのが、もっと木材を生産するだけじゃないよということで、水をつくるとか環境を守るとかレクレーション機能があるというふうに出てきました。私もあまりこれまでそんなに森林の価値というのは今一良く分かっていないところがあった時期もあったんですけれども、これは私が一時期住んでいた静岡県三島市、富士山の伏流水が何百年にも亘ってきていると。で、住んだときに、だいたい夏でも15℃くらいの水道水が出てくる、冬でも15℃くらいという、一定の水温で保たれているというところがあって、ああこういう形で森があるということは、水をつくっているということなんだなっていうのを、すごく暮らしとして実感したところでもありました。

その山がどうなっているのかなっていうのも気になっていたんですけれども、日本の前に今、世界はどうなっているかというと、森林の役割というのはこの生物多様性、8つの機能があるというふうに言われております。生物多様性、環境保全とか、いろいろありますけれども、特に注目されているのは今、環境の部分ですね。土砂災害防止とか、あとは気候変動のところがすごく強調されてきております。SDGsとかになると全部の機能になってくるんですけれども。今、これはアマゾンですが、森林伐採されたところから湿度がなくなってくるところで乾燥して、ここから火災が起きるということがかなり問題になってきています。ナショナルジオグラフィックとかそういうところでも、しょっちゅう特集されるところですね。アメリカでは熱波という状態です。これも森林がなくなっているところもあるんですけれども、気候変動で気温が高くなって燃えてしまうという状況があると。気候変動と森林というのが、たいへんフォーカスが当たっているところです。

2. 日本の森林と林業

日本はというと、だいたい日本の情報でいくと、今、森林の伐採が遅れている、間伐遅れがあって森が暗いので、もっと整備しなければいけない。整備というのはだいたい伐採することに行くんですけれども。それが環境保全になって災害防止も起こるというふうに期待されるというふうな論調がほとんどです。日本の山奥に行くと、ほとんど見れないところなんですけれども、これが高知県の様子ですね。上の方ではかなり伐採がされていて、残った木はこういうふうに道のところから風が入って、なぎ倒されているという現場です。これが今、あまり珍しくないんですね。これは道がグヂャグヂャグヂャって入っているんですが、すべてこれ、伐採されている現場です。皆伐という現場ですね。道はこんなに広いです。6メートルくらいの広い道が入っていて、だいたい道というのは、道をつけてそこを切るっていうのが今、主流なんですけれども。だいたい法面(のりめん)を削って、法面というと山側の斜面を削って谷側って言うんですか、下の方に盛っていくと。熱海の土石流で盛土という言葉が出てきた、その盛土がドンドンドンドン崩れ落ちるような現場が今、出てきています。で、山奥だったらまだいいと言ったら怒られるんですけれども、こういう現場ですね。皆伐されてもう右側は木があるんだけど、そこからすごいコントラストが起こっているんですね。

何をしているかというと、これは見たことある方もいるかもしれないんですが、左下が植えた木です。植えた木が下草刈りといって、その植えた木を生かすために他の木を切っていく。で、間伐をして2回目の間伐をして、50年で回していくというのが戦後採られてきた林業です。で、切ったらまた植えていくという循環が森林循環で、環境保全で持続可能な林業なんだというのが、これが林業白書に出ているものです。

これが皆伐された現場ですね。皆伐された現場から土砂が崩壊しています。これは岩泉です。岩手県岩泉で皆伐された現場なのですが、右側に民家があります。民家からは山が見えません。ちょっと行くと、山が丸裸になっていて、丸裸にしているやり方は道をつけてジグザグにしている。で、これが谷にも入っちゃっているので、谷に入ってもいいんですけれども、谷に道をつけるやり方は、ほとんど土建屋に近いので、そこからズルズルズルズル雪崩が起きています。土砂崩れが起きていて、下の民家に迫ってきていると。去年、ドキュメンタリー映画「壊れゆく森から、持続する森へ」という映画をつくりました。アジア太平洋資料センターという団体とともにつくったのですが、岩泉の現場に行ってみると、本当にこわいこわいと、いつ土砂崩れが起きるか分からない、逃げたくても逃げられないという現場です。

日本の林業政策と制度

これが循環と言われている伐採、今、すごい言われているものを整理しております。何でこういう状況が起こっているのかということです。ダラダラ言っちゃってすみません。みなさんの顔が見えないので言いづらいんですけれども、今、ちょっと写真を中心にしてきましたけれども、文字で学んでもらいたいところもあって、知ってもらいたいところもあって、ここに記しております。

日本の林業政策と制度ということで、時系列で並べました。日本は林業基本法というものが1964年につくられまして、産業としての林業が政策目標になりました。2001年にそれが改正されます。改正されたときに森林林業基本法ということで、冒頭にも示した8つの機能、多面的機能というものが1つの森林の働きとして生かされようという動きが出まして、森林林業基本計画というものも、その法律を実現するために整備されたということです。

この流れで常にあるのは、この林業をする人というのは、いったい誰なのかというところがポイントです。林業をする人は、農業だとだいたい土地を持っている人が農業をします。もちろん借りてやっている人もいるんですけれども。林業は持っている人はほとんど林業をしていないんですね。そしてその1964年の基本法のときには、森林組合という山主さんのための組織があるんですけれども、森林組合も林業をすると。森林組合の中にも作業班というものがつくられまして、山主さんに代わって林業をするということがありました。これは持っている人とやる人というのが分かれるんですけれども、今、かつて50万人いた林業者が4万5千人にまで減っています。92%がいなくなったということで、絶滅危惧種のようなものなんですけれども。その4万5千人はだいたい作業班であったり、林業事業体、林業会社に勤めている人たちがほとんどです。山主さんというのはごくわずかです。

この2012年のところもそうなのですが、このあたりでですね、その山主さんではなくて林業者、特に大きな機械を使う、高性能林業機械というものを使う人たちに補助をそこに全集中させたんですね。選択と集中みたいな形なんですが、山主さんはもう意欲がないと。で、誰かに任せましょうね、業者なんですけれども。そして、小さくチマチマやっているよりも、もっと効率的な林業をしましょうということで、生産性であったり、効率性を追求する林業が採られまして、高性能林業機械という、だいたいいろいろセットを含めますと1億円くらい掛かるようなものを導入できる林業者に、機械補助とかいろいろな補助を集中させました。

一方で、小規模な林業者たちというのは、そこから切り捨てられます。切り捨てられたところから、僕らのような自伐型林業推進協会が出来上ります。2012年にこういう林業の仕方というものが制度として落ちてくるんですけれども、最初は山を100ha以上持っている人は補助をしますというふうに言われたので、99ha持っていた人、僕らのところでは98ha持っていた秋田の林業家がいましたけれども、その人はもう、あなたには補助しませんので、判をついてくださいと言われて、判を押して業者に任せたという人もいるぐらいです。それだけ全国に100haないとダメなんだねっていうのが、浸透した時代がありました。私たちの仲間が、それは困るということを言って、30haまで下がりましたけれども、世の中的には、もうそれだけ大きく持っていないと、小規模はダメなんだねというような形になってしまいました。

今は海外、よく外国からの木材に押されて国産材というのが使われなくなったというストーリーが多くありまして、木材自給率というフレーズで、その自給率をアップさせようという、農業と同じような、食料自給率と同じような文脈で語られていて、アップを目指しています。ただ農業と違って、農業はタネを蒔いて収穫するまで1年であったり、他のもので3年とか掛かるものもありますけれども、ひじょうに短期的ではありますが、林業に関していうと、何十年も掛かるわけですね。自給率をアップさせるということは、たくさん切りましょうということになってくるということで、たくさん切る林業が全国で広がったというそういう政策と制度の背景があります。で今、どういう林業があるのかと、あと自伐型林業のそういう機運の背景というところで続けて説明をしていきます。

所有者に「意欲がない」?

じゃあいったい森林所有者は意欲がないのかということが自伐型林業をやっている人たちの最初の疑問点でした。林業者の所有者はいっぱいいるんですけれども、意欲がないという雰囲気の人がぜんぜんいなかったんですね。むしろどうやってやっていくのかということを考えている。だけど考えてもどうにもできないなあ、自分たちでは技術がないなあ、誰かに任せなければいけないんだろうなあという人たち。あとは本当に村を離れてしまった人たちは、もうどうすることもできないので誰かやってくれという人たちがいました。

左上は2018年に林野庁が出した「林野」という雑誌の切り抜きです。林野庁で森林所有者は意欲がないというデータをつくりました。これをよく見ると、これは自伐協でも問題だということで提案をしたんですが、意欲が低い84%というところの内訳を見ると、伐採の意欲がない人が71%というまとめ方をしていました。このあと、いろいろと言ったときに、林野庁も謝罪になりました。森林経営管理法という、森林所有者ができないよという人が自治体を通じて業者に任せることを勧める法律なんですけれども、本来、現状維持と回答した8割を経営意欲が低いとしたんですね。これ、東京新聞のまとめ方でしたけれども。で、長官は今後こうした事態が生じないように適切に対処するというコメントを出したのは、民友?や赤旗の記事ですが、意欲が低いと答えた84%、修正しました。実際は、71.5%は現状維持したいと考えた人たちなんですね。農民作家の山下惣一さんもそのような話をしていました。維持というのは農家にとってはとても大事なことだけれども、世の中的には維持というのは停滞と取られるのだという話をしていましたが、まさにその文脈だったんですね。その規模でずっとい続けたいというものはもう、意欲がないものとして、サインをさせられて、業者に任されると。こういうのがずっと続いているんですね。

これまでの一般的な認識

で、私たちも必ず今、NPO法人自伐型林業推進協会というのは、国にどれだけ提案しても変わらないねということで、最初の戦略として、もう自治体と一緒にやろうと。自治体でこういう小規模林業を大切にしようというところと組もうということで、だいたいアンケートを取るんですね。一般的な認識としては山林所有者や地域住民は林業への関心をしない、能力がない。で、意欲がないという前提に立っています。で、特定の事業体へ集約することを実施してきました。で、私たちがいろいろなところでアンケートを取ると、だいたい山林所有者の6割が自ら実施したいと回答しています。ほとんどの自治体がそんな形ですね。そこから実際に自伐型林業という、誰でもできるよということと、最初の投資もそんなに多くないよと、技術さえあれば誰でも出来る形があるよということで勧めてみたところ、どんどんと自伐型林業のやり方ができ始めまして、それなりの家計が支えられるようなところまで来ている人たちが出てきています。

3. 小さな林業「自伐(じばつ)型林業」

じゃあ、その自伐型林業ということをあと30分程度で話していこうと思います。自伐型林業とは、少し定義にも入っていきます。森林経営・管理・施業を自ら、山林所有者自らが行うものです。等と書いているのは、ここらへんに関わってくるんですけれども、限られた森、そこの山ですね、山林所有者が自分の山で林業をやり続けることになります。そこの限られた森でその森を離れず、毎年収入を得る林業です。で、誰かに依頼して、その分け前を山林所有者として受けるということよりも、自分でやるので自立自営の林業です。これは実は昔から自伐林家という言われ方はありました。静岡県とかでもありました。

ただ今、自伐型林業という言い方をしているのは山林所有者、今本当に1人で住んでいる方とかもいるので、そこも危なかったり、あとはパートナーとして組んでいく仕組みをつくりたいというふうに、本当に過疎と言われている村とかでは、そういう形でやらないとねということになって、林業の主体はその山林所有者とその地域のグループ、地域の住民たちという形にしているので、少し定義が広がりました、自伐から。所有者だけでなく地域住民がそこの森でその森を離れずずっと収入を得るという形にしています。ずっと収入を得るということは、そこにずっと木がなければならない、切る木がなければならない。長期に亘って間伐、間伐というのは間引きですね。10本生えていたら、それを1本、1本、1本、1本と切ったりする。こんなに切るとなくなっちゃうので、1本なり2本なり、間伐率というものでいうと2割とか1割の間伐を10年ごとくらいに繰り返していく。これを多間伐施業というふうに言っています。

この間伐をするときに業者さんだと、そこの仕事をするときに収入を得たいので、良い木から切っていきます。ただ持っている人たちはこの10年、20年でより良い木になっていくんではないかというのを選びます。選んでできるだけ将来性のある木は残すということをしていきますので、面積当たりの質や量は向上していくということになります。収入を上げて良好な森づくり。これを両立させる形です。環境保全型林業として、これが日韓国際環境賞にも評価された点です。持続的永続的な森林経営、経営が出来るとともに環境保全をしている。そういった自立自営の林業者たちを森に張りつけていく形です。点々として、来年はこの山、再来年はどこかの違う自治体を超えた山、で、拡大して大規模な機械を運んでいく林業ではなくて、そこでずっと土着的に住んでいく形。だから土着的林業と狩猟型林業という、点々とする林業とちょっと違ってくるということになります。

一般的な林業

先ほども見せましたが、今は標準伐期という伐採時期、一番良い時期というのは50年と言われています。これをバサッと切って再造林する、植林するという、これをやっていく。50年は我慢ですよというのをやってきています。じゃあ、その林業は先ほど見せたように大きな道をつけています。必ず道をつけます。間伐をやって、次の間伐は、ほとんどスカスカの山になります。これは列状間伐といって、真ん中にドンと縦にラインが入っています。ここ、真ん中に縦にラインが入ると、全体の面積からここらへんとここらへんと、虎刈りみたいにすると、だいたい4割間伐しましたとかいう、すごく机上の間伐のやり方で間伐をしています。残った木は、あとは揺すられてボキボキボキボキピシピシと繊維が断裂してきてしまいますので、次はもう皆伐するということになってしまいます。これはある地域ですけれども、左下の方のジグザグの茶畑みたいになっているのが列状間伐ですね。大きな道を入れてたくさん切るという林業です。これが皆伐現場です。本当に100haの皆伐とかがあります。

自伐型林業

じゃあ、一方の自伐型林業、長伐期というフレーズ、多間伐という言葉が出ていましたが、この林業は50年という林業ではなくて、間伐をもっと繰り返していきます。どれくらい繰り返すかというと、もう今は200年くらいの木まで出来ているものをモデルとしています。自伐型林業の間伐は、道もつくりますけれども、だいたい道幅も機械に合わせるのが大規模的なんですけれども、幅2.5m以下です。2.5mというと、2トン車は入れます。ここのワゴンみたいなのが入っていますけれども、だいたい小型の重機になりますので、幅1.5mから1.8mくらいのマシーンで道づくりをしていきます。なぜ2.5mかというと、2.5mに切ると、高さがだいたい1.4m以下に収まります。人間がちょっと小さめですかね、小柄な方の身長くらいなんですけれども、木の根っこがだいたいそこまでは行きつくということで絶対崩れない切り取り高になるということで、これ以上、道を広げますと切り高が2mとかになってしまって、ドサッと崩れてしまうんですね。土砂崩れの原因になるということで道は極力、幅を狭くしています。それを張り巡らします。もう蜘蛛の巣のように張り巡らせて、木が倒れたらそこでどこでも出していけるような林業なので、低コストな林業としています。

ここは40年生の林業、島根県の林業。これだけ木が残っています。植林から40年で1回目の間伐です。50年で2回目の間伐をして、まだ木の本数がだいぶ残っています。3回目の間伐で2トントラックによる搬出をしています。4回目の間伐をした現場。これはどれだけの量があるかということなんですけれども、だいたい1haあたりの平均材積を300㎥とします。単位は立法です。1m×1m×1m、300㎥くらいが平均の木のボリュームと言われていますけれども、こういう自伐型林業の間伐施業をしていると、残った木が太ってきますので、今この兵庫県の現場は300㎥あった材積が本数は減っているのに800㎥まで増えています。80年生の森です。木の本数は減りますけれども、ボリュームは増えています。これは徳島の6回目の間伐です。これがさっき800だったのが、1,100㎥まで増加しています。奈良県吉野は15回以上の間伐をされています。もう人が小さいですね。1,300㎥の蓄積量を持つ杉です。切り株に人が乗っても、小人みたいになっちゃうという感じですね。

そして吉野です。2.5m以下の道でも出せます。もともと吉野というのは、道がありませんでした。大きな木をどうやって運び出すかというかというと、ヘリコプターで運んでいました。ヘリコプターで運び出すのに、1分あたり1万円掛かる。だから30分飛ばすと30万円なので、その感覚でより良い木を1本、30mくらいある木のうち、一部分しか持っていかないんですね。現場で結んで、ヘリで運んで、あとは置いておかざるを得ない。材価も下がってきて、木の価格も下がってきて、自分でやらなきゃいけないとなって、道づくりを始めた林業家がいます。今、こういう2トン車でも200年の木が積めるような形です。低コストで出来る林業。道さえあれば出来ると。林内作業車という小型の重機2つでこれだけの大径材、大きな木を運んだりもしている、本当に小さな林業なんですね。小さな林業で大きな木を運べるという工夫をこらした林業です

分かりやすく多間伐と言われるものを示します。左側にあるのが本数ですね。何本あるか、だいたい1haあたり3千本植えていたのが昔です。それを今、50年でバサッと切ります。今は除伐、間伐1回やって2回やるくらいで、あとはもう皆伐をしていくというものです。300㎥あるものを切ってまた植林しています。当然、収入になりづらいものもあるので、今は植林も出来ないよねというのが課題になっています。多間伐はどういう形でやるかというと、ドンドン本数は減らしていきます。減らしていきますが、材積が増えていく。ボリュームが増えていく。先ほども800、1,100、1,300となっていきましたが、収穫、間伐もしていく。売上も出していきながら、残った木が価値が高まっていきます。だから吉野の多間伐施業ではhaあたり1,500㎥、奈良は1万本植えたところから減らしていくんですけれども、最終的には100本から120本。あるところの寺社仏閣、今、そういう木がなくなっています。あとは戦前、戦中に強制伐採でなくなっている関係で、非常にに価値が高くなっています。数百万円にもなるような木があります。だいたいこの損益分岐点が、補助金がなくても出来るような林業というのは70年だろうねというふうに林業家たちは言っています。

条件としては山に道が入っていること。道が終わったところからは、今日はあそこの木を切っていこうかな、このシーズンで何本切ろうかなっていう形が生まれてきますので、そういう計算が立つような林業が、道づくりが終わったところの林業になります。収入になり始めて、収入が安定して、収入が拡大するのが80年以降というところです。なので今、戦後、植林されて50年、60年、今が切り時だというふうに言っていますけれども、自伐型林業を始めた人たちはその木を残しています。切らずに残していけば、価値が高まるということを知っているからです。そして木がまだまだ生長していきますので、50年皆伐は本当にもったいないねということで語られている人たちが今、自伐をやってきて、そしてこれが自伐型林業が自立可能な根拠になります。みなさんにお配りした資料のところから、これはちょっと付け足していますので、終わったあと、これも含めた資料を共有したいと思います。

自伐型林業で自立する条件

では最後、自伐型林業で自立している人たちの、だいたいざっくりとした条件です。これがなければいけないということでもありませんし、1年目からこれがなければ成り立たないという話ではありません。山林はだいたい50haくらい確保しているのが理想的です。専業の場合はいいんですけれども、副業でやっている人たちが多くいます。だいだい年間、副業でやっていても3haくらいが平均的です。3ha林業をやって、その次の現場でまた道づくりをして、少し間伐をしてやっていく。で10年後には木が残った状態の山に戻ってくると、残った木が太ってきていますので、そして道が入った状態になってきている。これをだいたい3haから10年間、ずっと繰り返すという点で30haにしています。だいたい50haあれば専業でも自立していけるよねということになります。

自立する条件としては、赤で記した3つです。山があること、そして技術が付いていること、そして資金があることですね。特にスタート資金です。スタートするときに、ここでは作業道補助というふうに書いています。国や自治体の方にも強く求めているのはここのところです。山に道が入っていると、そこに通帳にお金があるんだけど、お金が銀行にあっても、通帳がなければ引き出せないのと同じ状況になります。道が入って初めてお金を引き出せる状況になってくるので、道が本当に大事なんですね。そして壊れない道、頑丈な道、何十年も使い続けられる道が必要です。道づくりは基本的には、機械を動かして燃料を使う。そして人件費が掛かるものなので、だいたい持ち出しです。この持ち出しをいかに補填していくかということが補助金なしの林業なり、自立する林業には必要ということで、1mあたり2千円くらいは欲しいというふうに言っています。今は自伐型林業の道づくりには補助が国では出ません。国で今、ガイドラインを変えてもらっていて、幅が広ければ広いほど補助がもらえるもので、自伐がやっているような3トンのバックホーとか小さいものなんですけれども、そういうバックホーで使うものは「小さすぎる」「側溝しか掘れませんよね」と、某県の職員に嫌みを言われました。そういう道づくりでやっているので、補助対象にはならないんですね。危ないとかいろいろ言われるんですけれども。国にいろいろと言った結果、今、1.5mから3m程度の道は県によっては出ますということを言われていて、鳥取県とか高知県あたりでは、少しずつ出てきていますけれども、なかなかまだ、出てきていません。基盤整備としての行政が支援しているという状況です。このスタート資金と技術。技術が本当に大事です。道づくりが特に大事ですが、あとは木の選び方も大事なんですけれども、そういうところが出来て、初めて出来るのが林業、自伐型林業です。

だいたい生計が立ってくるということで、中山間地でベースになる林業、年収でだいたい200万円くらいはみんな確保している状況です。いくつか例を挙げていきます。高知県佐川町は8年前に自伐型林業をやると、当時の町長がマニュフェストに掲げてやりました。新規就業者が50人を超えました。もともと林業者は2人だけでした。移住者がそのうち32人、地域起こし協力隊などの制度を使ってやりました。今、その過程を含めると100人程度が移住してきたことになっていまして、8年間でこれだけの成果があるということで、いろいろな自治体がそれを参考にしました。島根県津和野町でも20名とかがやり始めています。

中山間地域をどうにかしたいというのが、僕らの団体のモットーです。中山間地域の生業がなくなってきています。農業団体からも相談を受けます。ある柚子で有名な産地のところから、自伐で何とかできないか。それは農業と林業を兼ね合わせた仕事をしたいからということです。もともと林業は秋冬、この時期がピークです。生長が一瞬止まるというか、夏だと切ってしまうと切り口から病気になってしまうというところもありますので、秋冬型なんですね。で、春夏の農業と掛け合わせたりすることで、兼業が一番、理想的ということになっています。条件不利の農業や観光の地域の小さな仕事の維持に貢献することが今、証明されてきています。

最後は鳥取県智頭町の事例を紹介したいと思います。智頭町では林道が8割、被害を受けました。西日本豪雨という3年前の豪雨災害でした。この彼がやっている自伐型林業の道は一切、崩れていませんでした。2.5m以下で排水も分散させ、壊れない道づくりを心掛けた結果でした。彼はもともとはヒップホップのラッパーを目指して二十歳からアメリカに行ったんですけれども、あるときにやっぱり自分の地域が気になり出し始めまして、山を持っていたということでUターンをして、林業を学び始めて、今、仲間と30人くらいで林業をやっています。

彼は田んぼも持っていました。耕作放棄地があったんですけれども、今はホップを育てています。地元にタルマーリーという、天然酵母を使ったパン屋を智頭町というところで開いているところがあって、そこがビールをつくっているんですね。ビールを自分のところでホップを出荷して、林業の傍らやっていると。じゃあ、いくらぐらいの収入になるんですかホップは、って言ったら、ゼロ円ですと言うんです。どうも聞いていると、山を下りて4、5時くらいになって、この店に行って、ホップの代わりにビールを飲ませてもらっているという、物々交換をしているそうです。タルマーリーというパン屋の循環の、地域内循環というところには、山が入っています。そして山の下にホップがあって、で、川が流れていると。彼らの天然酵母、土着菌をキャッチするようなものですが、そのキャッチするのも、無農薬の竹に米を乗せて、それに吸着させて、パンの酵母にしているようです。で、パンにしたりしていると。天然の菌を出しているという絵ですね。

で、彼らのところにこの山の木はもちろん、建築の材とかにも出すんですけれども、根っこの部分とか細い部分というのを余すところなく使うというのが自伐型の林業の特徴でして、根っこの部分を薪にしています。「智頭ノ森ノタンコロ薪」というブランドにして、地域の人たちに薪をドンドン供給しています。エネルギーと林業と、あとは食と、あとはここの智頭町では「森のようちえん」という園舎を持たない幼稚園の取り組みもしていて、まさに多面的機能というものが発揮された自治体なんじゃないかと思います。

今、自伐型林業はもともと7、8年前までは自伐型林業、何それ、自爆?みたいなことを言われていましたが、今は54の自治体が展開を、予算化をしたりしています。教科書にもなりまして、学習指導要領でも出ています。全国の農業学校、農業高校の人たちは自伐型林業というものを学ぶ機会を得られるようになっています。国会の方では自伐型林業普及推進議員連盟というものが立ち上がって、先ほどのように道づくりの幅の狭さ、狭い道でも補助してくださいということが実現できるように、少しずつなってきています。

4. 家族農林漁業

最後は家族農林漁業の話ですが、これは意見交換も含めてのことになろうかと思います。やはり自伐型林業は、だいたい2、3人でチームとして組んでいます。家族というよりも、親戚、近しい他人のような人たちが集まってやっています。50haをやっている人もいますし、100haくらい集まっている人たちもいますけれども、そういう人たちが智頭町の人たちのように食のところと繋がったり、あとは広葉樹の地域なんかでは、建築だけじゃなくて、榾木の生産をしたり、薪、炭、今、すごいキャンプブームですね、コロナとかで。で、すごい価格が上がったりしているんですけれども、彼らがキャンプサイトをつくったりして、薪の供給をしたりもしています。炭窯をつくるような人たちも出てきていますし、消えかけた備長炭の生産者になっている人たちも大勢出てきました。炭をつくったところから、木酢液という、農業者もたくさん使うようなものをつくっている人たちも大勢出てきました。そういう形で家族農業で小規模な人たちが林業をする。大規模な人たちは小規模にはなかなか出来ません。だから大は小を兼ねないけれども、小は大を兼ねる林業ということで今、始まってきていますし、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンの人には、こういう林業もあるんだよということをお伝えしているところであります。

そして最後ですけれども、まだまだ林業は男性が多いんですね。それは男性の視点で語られることが多かったということもあります。今もすごく多いんですけれども、左下の「もうかる林業」というのはちょっと語弊があるかもしれないんですけれども、このモデルさんは夫婦でずっと林業を40年間されていた方です。で、夫婦で内閣総理大臣賞を受賞されております。その橋本さんという方の山は夫婦でずっとやってきていまして、100haのところに30㎞、3万mの道が通されていて、生物的にも徳島のレッドデータに出るような生態系がある林業地です。3万mの道で40年で壊れた箇所は9mしかありません。それだけ頑丈な道をつくってきたところで、今も80年、90年、そして100年以上のスギやヒノキが残っているところです。このような林業者を私たちは増やしていきたいなと思っていますし、農業をやっている方、漁業をやっている方もですね、おそらく少なくとも小さな山を持っているかもしれないので、こういう自伐型林業のことを知ってもらいながら、一緒に仲間になって、山の価値を、意欲がないと言われていますから、意欲があるんだよというところをですね、私たちとともに一緒につくっていけたらなというふうに思います。以上が発表です。私は今、小田原というところに住んでいて、この酒匂川という上流部、南足柄市の方でも今、自伐型林業は盛んになってきております。どうもありがとうございました。以上