サイトへ戻る

家族農業を強化する「スマートな農業」ーFFPJ理事の亀岡孝治さんー

· 会員だより

昨年5月の総会で理事に選出された亀岡孝治さんに、代表理事を務めているALFAE(FFPJの団体会員)の活動やご自身の取り組みについて寄稿していただきました。

新しく理事に就任した一般社団法人ALFAE(Area-wide E-laboratory of Food, Agriculture and Environment,アジア太平洋食農環境情報拠点)の代表理事をしている亀岡孝治です。家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)にはこれまで法人として参加していましたが、これを機に個人としても何らかの貢献をしたいと考えています。

私は2020年の3月で三重大学生物資源学部(元の農学部・水産学部)を定年退職しましたが、昨年8月1日から軽井沢町に本拠を持つ信州大学の社会基盤研究所で特任教授として採用されました。定年後の主な活動としては、(一社)ALFAEの代表理事の他に、愛知県6次産業化サポートセンターの有識者として6次産業化を目指す愛知県の農林漁家を支援する業務、三重大学在籍時に共同研究などで関係が深かった学校法人辻料理学館(辻調理師専門学校、辻製菓専門学校)の研究担当理事として専門学校における研究を支援する活動などを行っています。

私は和歌山県紀の川市(元の那賀郡粉河町)で農家の長男として生まれ、小学校から高等学校までは休みの時間の多くをミカン・八朔、ブドウ、モモ、稲作などの手伝いにあてる生活でした。私の実家はまさに家族農業を行っていたわけですが、私はその家族農業を継承しない決心で東京大学に進学しました。しかし、その後は農学部に進学、博士課程を経てカナダに留学、三重大学の農学部(後に生物資源学部)に赴任、専門は農業工学(具体的には農産物の収穫後の加工・保蔵などを研究する農産機械学)、農業情報工学、生物情報工学、対象は米、果実(柑橘とぶどう)、野菜といった具合に、実家の農業と関係の深い研究に引き寄せられていきました。現在は両親も亡くなり、実家の傾斜地の農地は近隣の農地と共に大規模な埋め立て工事中で、残りの農地は近くの観音山フルーツガーデン(農業生産法人 有限会社柑香園)に貸しています。

さて、私の行ってきた教育研究活動と現在行っている活動を紹介したいと思います。

三重大学では、農産物・食品の保蔵・冷凍・加工に関する研究、米・果実・野菜の成分・味覚の研究、光による農作物・農産物、食品の情報収集技術、光を用いた果樹樹体の健康診断技術、農業ICTの研究などを通じて教育・研究を行ってきました。1996年から2005年には農林水産省の農業ICTプロジェクトに参加し、プロジェクト終了後に主力メンバーで2007年に創設したのが一般社団法人ALFAEですので、今のスマート農業の基礎となる研究にずっと関わってきたことになります。しかし現在の(一社)ALFAEは家族農業に資する農業ICTを標榜しており、キーワードは、大型自動機械・ロボット・センサーを多用するスマート農業ではなく、身の丈に合った簡便な農業ICTツールを使って家族農業を強化する「スマートな農業」を実現することです。

信州大学でテーマとして取り組もうとしている研究は、「データとしての季節」です。栽培歴の原型となる農業暦は「季節」すなわち24節気72候の暦で、農業の営みには季節感は不可欠ですが現代農業では「季節・旬」という感覚が軽視されてきています。さらに、気候変動のためにその「季節」に変化が生じているため、気象庁が観測を大幅に縮小した「季節」観測を地域単位で地域住民がカバーし、新たに地域毎の72候を設計する必要が生じています。「季節」の存在は日本の財産です。後生に「季節」の記録を価値ある情報として残すために、地域毎に「季節」の観測の仕組みを創り上げ、運営し、地域毎の特色ある「季節」データを保存し、「季節」の変遷の指標として皆が使える場の提供を目指しています。

最後に私のライフワークは、儲かる家族農業を実現するための「持続可能な6次産業化プラットフォーム」の構築です。膨大なデータと人工知能(AI)が駆動するデジタル社会と対をなす私たち(アナログ)の持続可能なプラットフォーム構築は喫緊の課題です。食システムでは、食料主権、食品廃棄物(フードロス)の最小化、原料農産物の栄養素(品質)の3つが重要とされています。食料主権を実現するには、自然と協力しつつ食システムを地域化し、地域で制御しなければなりませんので、AIによるデータ駆動型制御でフードロスを最小にしながら、地域プラットフォームを母体とする6次産業化で「食・農・環境・健康システム」を実現する必要があります。6次産業化では、事業性評価、ガバナンス、デザイン、マーケティングといった必須の要素技術に農家の弱点が集約されますが、利益を生み出すには家族農業ベースのデジタルマーケティング戦術が入り口になります。COVID-19後に期待される持続可能な地域圏食システムでは、「人と人とのふれ合い」というアナログ技術や多様なアナログ要素(人、植物・動物、土壌、食)と調和するデータ駆動型で家族農業主体のプラットフォーム型6次産業化戦略(が必要になると思われます。

今後とも、よろしくお願いします。

亀岡孝治さん