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【報告】FFPJ連続講座第3回 「みどりの食料システム戦略」と有機農業

· レポート,ニュース

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)の第3回オンライン連続講座が、「みどりの食料システム戦略」と有機農業をテーマに5月30日に開かれました。講師はFFPJの久保田裕子常務理事が務めました。以下は、講座での久保田さんの発言の要旨になります。

講座の資料はこちらからご覧ください。

皆さん、こんにちは。久保田です。今日は「『みどりの食料システム戦略』と有機農業」ということで、有機農業の観点からこの戦略の問題点について見ていきたいと思います。

「みどりの食料システム戦略」とは

これは2020年10月の菅義偉内閣総理大臣の所信表明演説から始まったと思います。気候変動対策で「2050年カーボンニュートラル宣言」をしたわけですね。その中身は「デジタル社会」、「グリーン社会」などで経済成長を図るというものです。それで農水省が10月から検討を始めたということです。ヒアリングを様々な人から行なって、今年3月には中間報告がまとまり、パブリックコメント(意見募集)をしました。それが3月30日から4月12日です。私たち家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンも意見(パブコメ)を出しています。

この「みどり戦略」は、2050年に向けて、生産力向上と持続可能性をイノベーションで両立させる、そういう触れ込みの戦略です。その中で持続可能性、環境対応ということで、化学農薬の使用を50%削減、化学肥料の使用を30%削減。それから出てきたのが有機農業25%、100万ヘクタール。環境対応で一番の大義名分といいますか、持続可能性の筆頭に挙げられるのが有機農業ということだと思います。

現在、有機農業が全農地面積に占める割合というのは1%まで満たないというのは皆さんご存じだと思います。それを2050年には25%までにしようという、そういう意欲的なチャレンジだと策定した農水省の方が言っていますけれども、そういう戦略になっています。

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンが出したパブコメは、かなり包括的に問題点を捉えていたと思います。まず家族農林漁業の役割と支援をきちんと位置づけよと。それから当事者の政策決定、プロセスへの参加を保証せよと。この方式はバックキャスティングと言うもので、2050年にこういう絵を描くためには、今どういうことをすればいいのかをみる。これを進めるにあたっては、現場の声、関係者の声もきちんと聞いてくださいということを訴えました。。 

それからイノベーションの方向性がバイオテクノロジー重視、化学農薬は削減するけれどもRNA農薬、遺伝子操作を使ったような農薬に変えていくとか、大型機械、AI、ロボット、そういうデジタルで自動化を進めるような方向性に対して、パブコメでは苦言を呈しています。

畜産関係では、工業的畜産からアニマルウェルフェアを重視する有畜複合への転換を促せというような意見。それから輸出戦略ということで、食料・農業・農村基本計画の中で、農産物輸出を5兆円規模に持っていこうということが出されていましたが、それに対しても批判的な意見を出しています。

それから有機農業を25%にすると言っても、目標年が2050年ですから、30年もかかるわけです。一方、EUが出している農薬の50%削減というのはあと10年後、2030年です。そこにあまりにも大きな開きがあるのではないのか。さらに25%を有機にしたとしても、それでは75%の農業というのはどうなるのですかと。そこのところが遺伝子組換えとかゲノム編集のようなハイテク、バイテクみたいなもので埋められていくとすると、有機農業というのも影の薄いものになってしまうということで、その75%をどうやっていくのか、そこのところを問うています。ほかにも政策の実現可能性を高めるためというようなことで、いくつか挙げています。特に教育研修、普及研究の体制ですね、そういうものを、環境に良い方向に持っていく、そういうようなものにしてもらいたいということで、8項目にわたる意見をプラットフォーム・ジャパンが出しています。

みどり戦略のベースにあるもの

背景としては様々なことが出てきていますが、9月に予定されている国連「食料システム・サミット」ですね、これに何か携えていきたいというのが、おそらく菅内閣総理大臣の思惑だと思います。その開催について海外の様子を見ますと、今までの流れ、アグロエコロジーとか小農民の活動とか、家族農業とか、食料主権とか、そういう基本的な世界的な潮流に対して巨大アグリビジネスからの巻き返しというような、そういうものになっているのではないかという指摘と批判が起きています。例えば、特別代表に選ばれた元ルワンダ農業大臣ですけれども、ビル・ゲイツがアフリカに工業型農業を押しつけるために作ったアフリカ緑の革命同盟(AGRA:Alliance for a Green Revolution in Africa)の議長ということで、そのようなことが指摘されているので、そういう海外の状況も見ながら考えていきたいと思っています。

昨年3月には「食料・農業・農村基本計画」、そのひと月後の4月に「有機農業推進基本方針」が出て、具体的な政策というのが策定されたわけですけれども、基本的にそういうものを踏襲した上で、その10年後、20年後、特にイノベーションや先端技術をどうしていくかがメインの内容になっていると思います。そのような中身はこの基本計画の中でも出ているし、基本計画が出たあとに農林水産技術会議事務局が2020年5月に「農林水産研究イノベーション戦略2020」というものをまとめています。それが今回のベースになっているように思います。そういうことでこの辺の直近にあった政策も含めて「みどり戦略」を見ていく必要があるかなと思っています。

食料・農業・農村基本計画では、「産業政策」と「地域政策」は車の両輪で行くという基本姿勢は相変わらずですけれども、これまで大規模化、規模拡大一辺倒だったのに対し、この間の家族農業の10年の動きとか、実際の農村における衰退の現状から、「経営規模の大小とか中山間地域などの条件にかかわらず」農業支援を行い、「農業経営の底上げ」、それから「生産基盤の強化」を図っていく。その中に家族農業関係では、「中小規模の家族経営や兼業農家、半農半Xなどへの支援」が明記された、それが一つ、今度の基本計画で特徴的なことだろうと思います。

それからSDGsに関しても同計画には書き込まれました。そして有機農業関係、生物多様性の保全も強調されています。これは次に見る有機農業推進基本方針の総論部分がそっくりそのまま記載されて連動しているということになります。もともと有機農業推進法というのは、食料・農業・農村基本法の中の自然循環の増進とか、環境負荷の低減とか、そういうところを具体的な政策とするにはどうするかということでできた、そういう基本法的な法律です。

「地域政策」では基本方針の中にCSA(Community Supported Agriculture)があります。CSAは日本有機農業研究会が50年前くらいから「産消提携」の方法として、「提携十か条」というのを取りまとめ、生産者と消費者が協力して有機農業を進めてきたものと理念や方法を同じくするもので、地域支援型農業と翻訳されています。「産消提携」を英語で言うとCSAというような、そういうことで共通のものになっています。基本方針では「産消提携」という用語が使われています。ここではCSAとなっています。

有機農業推進基本方針でどういうことが出されていたかを少し見ておきます。まず目的の中にSDGsに貢献するということが加わったということです。次に有機農業と輸出というのはあまりいい組み合わせではないと思いますが、輸出ということも入っています。それから国際標準で取り組むということが書かれています。国際機関としては1972年にできた国際有機農業運動連盟(IFOAM―Organics International)、当初は、International Federation of Organic Agriculture Movementsという名称だったので、日本ではそのままIFOAMと略すことが多いです。もともと有機農業の運動体としてできて、今は国連の諮問機関にもなっていて、国際的な有機農業運動の場となっています。そこがFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)に働きかけて国際標準となる有機生産等のガイドラインをつくった。日本でいえば有機JAS規格になりますけれども、有機農業推進もそのレベルでやっていくということが書いてあります。

日本有機農業研究会の意見

みどり戦略には有機農業関係団体が様々な意見を出しています。基本的にゲノム編集とかRNA農薬とか、有機農業の理念・原則と相容れないものに対しては、反対だというのを正面切って言っているところもあるし、それは置いておくとしても、有機農業をどうやって進めるべきかを提言しているところとか、いくつか出ています。

次に、有機農業研究会として、どのような意見を出したかというのを中心に見ていこうと思います。まず、先ほども全体をざっと、プラットフォーム・ジャパンのパブコメで見ましたように、革新的技術・生産体系・イノベーションなど、先端技術偏重が顕著です。新しいことをやっていこうとしたら、何かイノベーションがあって、そういうものを成長戦略に組み込んでいくという使命を菅内閣総理大臣も話していますので、その先端技術偏重が農業や農村、それから有機農業にどのような影響を及ぼすか、そこの懸念が強いということです。

遺伝子組換え反対をずっとされている天笠啓祐さんは、大企業によるハイテクとバイテクで農業を大きく変えようという、そういう戦略に見えるということを言っています。

それから、日本農業新聞(2021.4.27)に土地改良事業の関係で書いてあったコラム(荒川隆氏)があったので、ちょっと読んでみます。「スマート農業のお題目で自動運転や遠隔制御が進められ、圃場には無人トラクターが稼働し、上空には巨大ドローン(小型無人飛行機)が飛び交う、全ての水路は自動開閉水管理システムが整備される。その結果、生産現場にも集落にも人の姿がみられなくなってしまう。そんな近未来絵図は御免被りたい」。その次がいいことを書いています。「多様な担い手に支えられた生産現場と多くの人が行き交うぬくもりのある集落が維持できるように、狭義の土地改事業だけではなく農村の生活環境整備も含めた地域政策の要としての農業農村整備事業の展開を期待したい」。土地改良の長期計画に当たってのコメントですけれども、そういう巨大ドローン、人は少ないというような、そういうことではなく、地域に賑わいを取り戻す。それからこの方が言っているようにぬくもりですね、そういうものが本当に欲しいところだなと思います。

それから、「私企業の儲けに資する研究開発であってはならない」。これは今まさに進んでいるわけですが、例えば大学の研究でゲノム編集をしたトマト。健康食品としてゲノム編集技術応用の「高GABAトマト」というのが開発されて、それを大学発のベンチャー企業と組んで、実際に企業の活動としてそれを普及させていく、そういうことがなされているわけですが、そういうことが大事で、それがイノベーションの中に含まれているということです。

それから、「次世代有機農業に関する技術というところが意味不明」です。日本の有機農業技術は、1960年代、70年代くらいから伝統的なものを踏まえた上で、日本有機農業研究会でも研究会を各地に作って検討する、そういう一種のネットワーク的な活動をしてきたわけです。そういう試行錯誤も含め、地域の気候風土に合わせた地域の食文化、それから農業の技術・技能、そういうことも含めて様々な形で積み上げてきた。それを有機農業推進関連の農水の担当のところでも「横展開する」と言っていますので、それをみんなと共有して広げていくことでやってもらいたいと思います。誰でもできる、マニュアルさえ見ればできるというようなものとは、ちょっと違うかなという、いずれにしても意味不明です。

それから、先ほども言いましたように、25%を有機農業、それはいいですね。では75%はどうなるんですかという、そこです。現在、慣行農業という呼び名があります。コンベンショナルという言い方で、慣行というのは普通、当たり前。だから農薬は農業資材として不可欠なものだというところから解説が始まったりしているわけです。農業に農薬・化学肥料を使うのが当たり前で、しかも何十回も使い、それがないと農業ができないという考えですね。それが慣行農業という呼び名にもつながっていると思いますが、やはりそこを改めるところから始めるのがいいのかなと思います。

プラットフォーム・ジャパンの村上真平代表は農業の歴史1万年と言っていましたけれども、何百年、何千年という農薬と化学肥料のない時代の農業があったわけですね。確かに生産性というか、面積当たりの生産量というのは低いかもしれない。だけど1つだけでなく、様々な意義があるわけですね。収量はもちろん重要ですけれども、収量さえ上げればいいという、そういう特化した考え方ではないということです。地域で、地元で作ったものを食べて、食文化と農の文化と様々な作物文化、そういうことで暮らしてきました。そこのところを踏まえて、農薬を使うのが慣行で普通だという考えをまずは改めるところからということを意見として書きました。

伝統に学び、科学の光を当て、現代に活かす

ですから、有機農業は自然の摂理と伝統に学び、それを現代に活かす。そのときに、様々な本来の科学、生物学であったり植物の生理を見るものであったり、そういう科学の光を当ててそれを活かしていく。遺伝子操作やゲノム編集とか、RNA農薬のような不自然なものを使わず、自然と共生して、自然の摂理の範囲を超えない、そういうのが有機農業だと思います。

それから、農薬削減では、リスク換算でみていくことが強調されていますが、これについては木村-黒田純子先生(脳神経科学者)が、リスク換算の手法はまだまだ不十分で、きちんとリスクが換算されるようになっていないという指摘をされています。

有機農業への切り替えについては、圃場単位ごとに切り換えるのがいいと言われています。そういう切り替え方に関しても、もちろん経験的にも積み上がっていますけれども、こういうことの研究を農研機構とか都道府県の農業試験場とかそういうところで力を入れてやっていただきたい。どうやったら転換してきちんとした有機農業にできるのか、そういう研究にも力を入れてもらいたいと思います。

それから、化学肥料に代わるほかの資材というか肥料、そういうのも開発するということですが、これも伝統的な農法に転換することによって、里山の落ち葉であるとか、海の海藻くずであるとか、そういう地域の生態系を活かす形のものにしていってもらいたいと思っています。農場内部でも、緑肥とかリビングマルチとか、そういう様々な方法があります。

それからアニマル・ウェルフェア(動物福祉)はずいぶん遅れているというのが実態でしょう。というようなことで、そういう伝統知を現代に活かした有機農業、そういうことを広げていってもらいたいということです。

IFOAMが有機農業の定義というのを2008年に作っていて、私たちの考えと合うような内容になっていますので、ちょっと読んでみます。

「有機農業は、土壌・自然生態系・人々の健康を持続させる農業生産システムである。それは地域の自然生態系の営み、生物多様性と循環に根差すものであり、これに悪影響を及ぼす投入物の使用を避けて行われる。有機農業は伝統と革新と科学を結び付け、自然環境と共生してその恵みを分かち合い、そして、関係するすべての生物と人間の間に公正な関係を築くと共に、生命(いのち)・生活(くらし)の質を高める」。

この伝統と革新と科学を結びつけるという、そういうところがひじょうに有機農業運動らしい表現かなと思います。それから4つの有機農業の原理(健康の原理・生態的原理・公正の原理・配慮の原理)を挙げています。

もう1つ、日本でよく言われるのが、日本は温帯モンスーン地帯で湿潤で湿気が強くて虫がたくさん、草がたくさん。だから有機農業に向かない。たしかに草を刈ってもぼんぼん生えてくるので、難しい面はあるかなとは思います。とは言えですね、だからこそ豊かなんだと有機農業の人は言います。民間稲作研究所の今度、理事長になった舘野廣幸さんも、「雑草を味方にする」ということを書いていましたけれども、雑草、それから虫、様々な生物ですね、それから鳥とか、そういうものを農業の味方にしていく。温帯モンスーンの温暖で雨があって、それで水が豊富で太陽エネルギーを十分に享受できる。ひじょうに恵まれているという捉え方ができるということで、そこを活かしていく農業。欧米と違って冷涼ではないから難しいと言わずに、そこのところを味方にしていくような、そういう農法というか有機農業ですね、そういう技術、技能の蓄積もあるということです。

農学者の飯沼二郎さんには膨大で克明な研究がありますが、『農業革命の研究-近代農学の成立と破綻』という本があります。近代農学は破綻したと書いておられるのです。農文協の『農書』の全集にも関わった方ですけれども、『近世農書に学ぶ』(共著)も出されていて、江戸時代の農業を踏まえて、現代とかなり状況が違う可能性もありますけれども、そういうところを現代に活かしていくべきだとおっしゃっていました。そして晩年といいますか、1978年には『産直―ムラと町の連帯』というタイトルで、当時まだお若かった神戸大学の保田茂先生、「食品公害を追放し、安全な食べ物を求める会」の世話人をしていた保田先生(現名誉教授)が実践していた有機農業運動の提携運動にひじょうに共感して、これからは有機農業だというような活動をされていました。そのところでも強調されたのが、やはり伝統に学び、それに科学の光を当てて、現代に活かすという、欧米と日本の気候風土の違い、そういうスタンスだったと思います。

気候変動に関しても、有機農業は冷害に強かったとか、そういういくつかのデータもあります。経験的にもそういうことが言われていますので、そういうことを積み上げていくというのが大事かなと思います。それから種こそは作物栽培の原点といいますか、ひじょうに重要なものですね。

有機農業への第一歩は

それで有機農業を25%にすることを目指すとすると、今すぐにできることとか、どういうことをやっていったらいいのかとか、そのへんを今回のパブリックコメントなど、有機農業の団体の提言などから拾ってみます。

まず直ちにすべきことは、もう予防原則の考え方でネオニコチノイド農薬とか、グリホサート(除草剤)とか、そういうものは直ちに禁止するということで、グリーン社会に一歩を踏み出せるんじゃないかと、そういうことですね。すぐに禁止ということは難しいと思うとすれば、経過措置期間を置くけれども、禁止するという基本方針はすぐに決められるはずだということですね。

防除暦というか、慣行栽培のときに使われている農薬の回数を見てみると、驚かざるを得ない実態です。例えば千葉県の特別栽培農産物で、慣行レベルから5割以下にするというときに、では慣行レベルというのはどれくらいかというと、ネギ(春どり)は32回、キャベツは18回、水稲(移植)は14回。これは全部使うわけではないとはいえ、ずいぶんたくさん使っているというのが現状です。戦略に関するヒアリングでも今の農薬の使用回数を半減させるのは可能とか、3分の1にしているとか、有機農家でなくてもそういうことを言っていますので、それはできると思います。

有機農業の達成目標の設定も面積だけではなく、やりやすい稲作だったら2030年に30%、2050年に80%とか具体的に決める。それから果樹はちょっと難しそうですけれども、大豆、それから茶とか小麦、そういう主要な作物もやりやすい。先ほども言った民間稲作研究所、稲葉光國さんが理事長をされていたところですけれども、稲、麦、大豆の3つの作物を2年間くらいで輪作していくと養分収支、マメ科は窒素固定菌がありますから、そういうことで収量も上るし、それから肥料の経費も少なくなるというような、そういう実践もされているということなので、特に稲、麦、大豆などの主要作物は有機でやっていくという方針を打ち出してもらいたいと思います。

それから、学校給食に公共調達で取り入れていくべきと思います。

それから、よく有機農産物は高付加価値商品とか、差別化商品、プレミアム価格でコストを吸収するということが言われています。有機JAS制度に関してもそういう考えでできています。だから認証の負担は農家、そういう位置付け、解釈になっています。一方、日本有機農業研究会では、有機農業の本質を損なわないためにということで、有機農産物は地域の中で食べる安全で安心な食べ物として扱うものであり、儲けのための商品としては取り扱わないということを提唱しています。産消提携では生産者と消費者がお互いに顔の見える関係で、人と人の友好的な関係の中で手渡していくものが食べ物だという規定をして取扱いを展開してきているわけですが、差別化商品という位置づけではないやり方、考え方にしていくべきと考えています。

「TEIKEI」が農と生命を重視する社会を築く

それからCSA、地域支援型農業ということで、日本でいえば産消提携というのがこれからの地域振興の中で考えられるということが例に「農村政策」では挙がっています。このへんは話すと長くなりますが、1970年代にできた日本の提携(TEIKEI)というのは、海外でCSAの会議に出ると本当に身に余る幸せというか、よく知られていて、人と人のつながりが大事で、ひじょうにいいですねとか、そういうふうに言われることが多いです。

これはアメリカにかぎらず、フランスでも2000年代から広がりました。それからドイツでもイタリアでも、ポルトガルでも東欧でも。それからブラジルはおそらくアグロエコロジー運動の辺りからきていると思いますが、ブラジルでも生協みたいなものがあります。本当に世界各国で地域に根差す生産者と消費者が直に手を取り合う、収穫もリスクも分かち合う農業、そういう農業であるCSAや提携と同じようなタイプのものが広がっていて、それぞれの言葉で呼んでいるということですね。

そこで、「みどり戦略」にはぜひとも小規模家族農業というものをきちんと位置付けてもらうということを日本有機農業研究会の意見でも出しています。有機農業はそれぞれ小規模複合の農家が地域で自立して、かつ連携を組みながら着実に広がってきました。それに、新規就農で有機農業をやろうという人はまず、生産者と消費者の提携的なスタイルで知り合いの人に分けるとか、そういう形で始める。そういう提携という営農モデルを一過性のものではなく、そのままずっと地域で続けている人もいますので、それをきちんと位置付けるということが、有機農業の推進のためには必要だと考えています。

食料・農業・農村基本計画の中にある図ですが、前の基本計画では地域を支える農業経営体としては、効率的かつ安定的な経営体を指す「担い手」しかなかったのですが、昨年の新たな基本計画では「その他の多様な経営体」というのが加わりました。ただ、まだ「その他の」となっていますので嫌ですよね。こちらも主体的な主役として位置付けられて、この担い手と協力・連携して、対等な感じでやっていくというような、そういうことが望まれるということです。

「みどり戦略」には生産性、効率の良さ、それが頻繁に出てきますが、随分前になりますが、宇根豊さんが示したように(レジュメ図)、収量だけで生産性や効率を見るのではなく、それ以外の様々な多面的機能ともちょっと違う「多面的意義」ということですかね、地力(土)の問題、それから生物、風景、これからは風景が重要になると思います。それからエネルギー収支、地域社会、生きがい、農業をやっていて楽しいとか、草と話をする人の話とか、虫とかカエルとか、それから安全性の問題。そういう様々なものがあって、それで農業というのが成り立つはずだということですね。生産性、効率だけを求めると自然の摂理にも抵触するような技術を使うということになっていってしまうのかなと思います。

それで、有機農業運動の図(レジュメ)ですが、農薬を使わないなどの生産の仕方を変えることに加え、運び方や食べ方を変えていくことが重要。例えば畑に合わせて旬のものを食べるとか、献立を作ってから買いに行くのではなく、いま畑にある野菜を食べていく、そういう相互にダイナミックな変革が有機農業運動であることを示しています。そのように、生産者と消費者が提携していくことで、生命重視社会、農的な社会につながっていくんだと思います。

「提携フードシステム」と、私としては言いたいですが、生産者と消費者が身近なところで提携するようなフードシステムというものを基本に据えて、地域に広げたり国レベルに広げたりしていく。それから農家と消費者のみならず、いろいろな関係者が交流し合う、そういう地域における食料システムを打ち出していくのが本来の、私たちのみどりの食料システムの方向性なのではないかと思います。

ということで、まとめのところがなくなりましたが、以上でお話は終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

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