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【報告】世界食料フォーラム参加体験記(杵塚歩さん)

· 会員だより

10月4~5日にオンラインで開催された第1回世界食料フォーラム(World Food Forum)に、FFPJが団体として招待を受け、会員の若手農林漁業者が参加しました。そのうち、今回は、杵塚歩さんの参加体験記をお届けします。杵塚さんは、静岡県で無農薬のお茶をはじめとする農産物や加工品を生産・販売しており、7月のFFPJオンライン・シンポジウムにも登壇しています(シンポジウム報告ページはこちら)。

世界食料フォーラム・青年会議に参加して(杵塚歩) 

青年会議が開催された10月4、5日は当地ではちょうど稲刈りの最盛期。一日の農作業の後に子どもたちを寝かしつけ、大急ぎでパソコンの前へ。20時から始まるオンライン会議への参加は、集中力を維持するのが大変でしたが、各地各国での青年の実践はとても興味深かったです。2日間の会議の中で、特に印象に残っているいくつかの点について報告します。 

半数以上が女性

世界食料フォーラムは国連機関であるFAOの青年委員会によって発案されました。 国連内の青年組織だけでなく、民間の組織やNGOなどとも連携をとり、青年のリーダーシップのもとでWWFが開催されました。参加者は様々な地域や組織からの青年たちで、その多くが各組織の中核を担うような若者たちです。自分たちがいかに個人としてではなく組織として、現状を変えていくのかを発表している姿はとても刺激的でした。そして参加者の半数以上が女性で、活発な発言が行われていたことも新鮮でした。普段から組織内で女性も対等に活動・参加できる環境があればこそ、国際的な場でも活発な議論に参加できると思います。政治や職場など様々な場でのクオータ制の導入が求められているように、運動を盛り上げていくベースとして自分たちの加わる組織や団体でもクオータ制もしくはそれに等しい取り組みを求めて行動していく必要があると感じました。 

協同組合通じてコミュニティ視野に活動

パレスチナの参加者からは、イスラエルによる土地や水など自然資源の収奪というとても苦しい状況とそれに追い打ちをかけるコロナウィルスの蔓延についての報告がありました。農業が衰退し日々の暮らしが逼迫する状況に対し、青年たちが農業協同組合を立ち上げ、アグロエコロジーの推進や在来種子を守る取り組みを通して人々に食料を提供しています。自然資源へのアクセスや資材の高騰など依然として多くの問題を抱えていますが、青年たちは協同組合を通して、個人の利益ではなくコミュニティ全体を視野に入れた取り組みを展開していること、そして土地の保護や小規模農民の権利を求めて政府に交渉しています。分断された個人では無力に感じることも、仲間と力を合わせることで大きな運動へと発展していく原動力を感じさせる発表でした。 

オープンレターコンテスト

とてもクリエイティブな取り組みもありました。アジア太平洋農民プログラムという団体による青年農民オープンレターコンテストという取り組みです。このコンテストでは農業青年たちがそれぞれの暮らしや現状、困難など個人的な話と、そのような状況改善のために行政に求めることを語り、ビデオレター形式にまとめ政府に青年たちの声を届けています。例えば、インドネシアの青年はコロナウィルスの影響で市場へのアクセスが制限される中、収穫前後の農作物管理の知識と技術の改善を政府に求めていました。取りこぼされがちな個人の声を丁寧に拾い上げ、それを行政に届ける橋渡しに加え、それらの語りを他地域にいる青年たちが共有することで自分の置かれている現状を客観的に考察し、それに言葉を与えるエンパワメントでもあると感じました。

青年のクリエイティブな運動の先に食料システムの転換

現代を生きる私たちは気候変動、環境破壊、紛争、疫病、病害虫による作物への被害、経済格差、貧困、そしてコロナウィルスの世界的蔓延など様々な危機に直面しています。新自由主義のもと、これらの問題は個人の資質や責任と捉えられる傾向がありますが、「そうではない」ということをWWFとそこに参加する青年は世界に向けて発信しています。これらの問題を解決するために、青年が連帯し、青年のリーダーシップによるクリエイティブな運動を展開していくこと、その先に今の食料システムの転換があることを、WWFに参加して再確認できました。

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