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【報告】日本有機農業学会「社会科学系テーマ研究会」で基調講演を行いました

10月18日に日本有機農業学会の2020年度社会科学系テーマ研究会がオンラインで開催され、常務理事の池上甲一が「小農および家族農業をめぐる国際的動向と日本の現状」と題する基調講演を行いました。

午前中に、事前に録画(池上ともう1人の基調講演者(徳野貞雄・徳野スクール)した2本のビデオの視聴、午後にコメンテーター3人からのコメントと基調講演者からの応答、聴視者からの質問と回答という長丁場のイベントでした。会員が対象なので、聴視者は60名程度でした。この講演をもとに、学会誌「有機農業研究」に寄稿する予定です。詳細は2021年6月刊行(予定)の「有機農業研究」までお待ちください。ただ字数制限があるので、今回の講演内容をすべて盛り込むことはできない見込みです。

この研究会のテーマは「有機農業と現代の小農との関係、有機農業と家族農業の関係を問う―グローバルとローカルの両方からのアプローチ―」で、おもに「グローバル」な局面を池上が担当し、ローカルな面を徳野氏が請け負うという形で企画されました。

池上の講演のおおよその内容は以下の通りです。

この講演のねらいは、2010年代に入ってから急速に再評価が進んでいる小農及び家族農業をめぐる国際動向とその背景、研究状況を整理し、日本の状況を対比的に考察することです。世界で進んだ小農・家族農業の再評価は単独で起こったわけではなく、食料主権運動やアグロエコロジーの広がり、環境問題、とりわけ地球温暖化・気候変動と生物多様性の減少に対する危機感の共有などと連動して進んだことを指摘しました。つまり、小農・家族農業、食料主権、アグロエコロジーが三位一体的に研究・議論されているのです。またオランダのファンデルプルフ(van der Ploeg)さんが唱えている再小農化、新しい小農という考え方とほかの研究者によるその実例を紹介しました。

一方、日本では、国際的な動向と比べると、小農・家族農業の再評価に抗うかのような政策がすすめられ、また農業経済学の分野でも小農・家族農業を軽視する傾向が一般的であることを指摘しました。しかし実際には、新しい小農が多様な価値でたくさん生まれていることを紹介しました。農村にはたくさんの小農とその協同形態、農業法人など少しの企業的農業(農家起源)、ごく少数の資本主義的農業(会社)が混在して存在していますが、地域社会との関係では前2者が重要です。

なお、学会員が対象の研究会ですが、希望者には当日の講演に使ったスライドの資料を提供します。FFPJの事務局に申し出てください。

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滋賀県高島市の農家による生き物農業

開催概要

日本有機農業学会「基調講演」

主催:日本有機農業学会

日時:2020年10月18日10時~15時30分

対象:会員(オンライン)

https://www.yuki-gakkai.com/info/2020年度社会科学系テーマ研究会2020-10-18のお知らせ(第1/